年金で暮らす方や一人暮らしの高齢者にとって、毎月のNHK受信料は決して小さな負担ではありません。「テレビはあまり見ないのに、払い続けるのはもったいない」「年金収入だけでは正直厳しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ご自身の状況によっては、NHK受信料が全額または半額免除になる可能性があります。ただ、制度や手続きが複雑そうで、どこに相談すれば良いか分からず、そのままにしてしまっているケースも少なくありません。
この記事では、高齢者の一人暮らしとNHK受信料の情報を網羅し、免除・割引制度の対象条件から具体的な手続き方法まで、分かりやすく解説します。この記事を読めば、ご自身の受信料負担を軽減できるかどうかが分かり、手続きへの不安も解消されるはずです。
NHK受信料の基本|高齢者の一人暮らしでも支払い義務はある?

NHK受信料の免除制度を理解するためには、まず基本的な仕組みを知ることが重要です。放送法に基づく支払い義務と、契約種別ごとの料金体系を正しく把握しましょう。
この章では、受信料の具体的な金額や、なぜ高齢者の一人暮らしでも支払いが必要なのかを解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら確認することで、後の免除手続きへの理解が深まります。
NHK受信料はいくら?(地上契約・衛星契約)
NHKの受信料は、受信できる放送の種類(地上放送のみか衛星放送も含むか)と支払い方法で金額が変わります。最も割安なのは、口座振替やクレジットカードで12か月分をまとめて前払いする方法です。
以下は2023年10月以降の受信料額です。ご自身の契約内容と照らし合わせてみてください。
| 契約種別 | 支払方法 | 支払区分 | 料金(消費税込み) |
|---|---|---|---|
| 衛星契約 (地上契約含む) | 口座・クレジット | 12か月前払 | 21,765円 |
| 継続振込など | 2か月払 | 3,900円 | |
| 地上契約 | 口座・クレジット | 12か月前払 | 12,276円 |
| 継続振込など | 2か月払 | 2,200円 |
※沖縄県は料金が異なります。
支払い義務の根拠は「放送法」
「一人暮らしでテレビもほとんど見ないのに、なぜ払う必要があるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。NHK受信料の支払いは、放送法によって「NHKの放送を受信できるテレビ等を設置した世帯」に義務付けられています。
この法律では、年齢や視聴時間に関わらず、受信機を設置していること自体が契約と支払いの根拠となります。そのため、高齢者の一人暮らしでもテレビがある限り、原則として支払い義務が発生するのです。
NHK受信料が免除・割引になる高齢者向け制度【対象条件】

経済的な事情などを考慮し、特定の条件を満たす世帯を対象としたNHK受信料の免除・割引制度が存在します。全額免除と半額免除があり、ご自身の状況が該当するかを確認することが重要です。
ここでは、どのような条件で免除が適用されるのかを具体的に解説します。ご自身が対象かどうかを一つずつ丁寧に確認していきましょう。家計の負担を軽減できる可能性があります。
【全額免除】公的扶助(生活保護など)を受けている世帯
生活保護などの公的扶助を受けている世帯は、受信料が全額免除されます。お住まいの地域の福祉事務所などで生活保護を受けている場合は、NHKに申請することで免除の適用が受けられます。
この制度は、経済的に困難な状況にある世帯の負担を軽減するための措置です。ご自身が該当する場合は、速やかに申請手続きを行いましょう。
【全額免除】住民税非課税で障害のある方がいる世帯
世帯全員が住民税非課税で、かつその世帯に身体障害者、知的障害者、または精神障害者の方がいる場合は、受信料が全額免除になります。障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳など)をお持ちの方が対象です。
ここで重要なのは「住民税非課税」と「障害者手帳の所持」という2つの条件を同時に満たす必要がある点です。単に「年金暮らしで住民税が非課税」というだけでは対象外となるため注意しましょう。
【全額免除】社会福祉施設などに入所している場合
特別養護老人ホームや養護老人ホーム、障がい者支援施設といった社会福祉施設に入所している場合も、受信料は全額免除の対象となります。この場合、個人で契約するのではなく、施設が一括で手続きを行うのが一般的です。
もし、一人暮らしの自宅から施設へ入所する際は、元の家の受信契約を解約する手続きが別途必要になります。手続きを忘れると、誰も住んでいない家の受信料が請求され続けるため、必ず解約しましょう。
【半額免除】障害者が世帯主の場合
世帯主が視覚障害または聴覚障害により、身体障害者手帳をお持ちの場合は、受信料が半額免除になります。このケースでは、世帯の住民税課税状況は問われません。
また、世帯主が重度の身体障害者(1級・2級)、重度の知的障害者、または重度の精神障害者(1級)である場合も、同様に半額免除の対象です。ご自身が該当するか、お持ちの障害者手帳の等級を確認してみてください。
【割引制度】家族割引で受信料が半額になるケース
免除制度とは別に、受信料の割引制度もあります。その一つが「家族割引」です。これは、同一生計で離れて暮らす家族の受信料が半額になる制度で、例えば親元と学生の住まいなどが対象です。
高齢者の一人暮らしでは、例えば親と子が別々の住まいでそれぞれ受信契約を結んでいる場合に適用できる可能性があります。適用には条件があるため、詳しくはNHKの公式サイトを確認するか、電話で問い合わせましょう。
【簡単3ステップ】NHK受信料の免除申請手続きと流れ

ご自身が免除の対象だと分かったら、次は申請手続きです。手順に沿って進めれば、決して難しいものではありません。まずは全体の流れを把握することが大切です。
ここでは、手続きの基本的な流れを3つのステップに分けて分かりやすく解説します。これを読めば、申請への不安なくスムーズに手続きを進めることができるでしょう。
ステップ1:免除の対象か再確認する
まず、前の章で解説した免除・割引の条件に、ご自身の世帯が確実に該当するかを再確認しましょう。特に「住民税非課税」や「障害の等級」といった条件は、証明する公的な書類が必要になります。
どの免除事由に該当するのかを明確にしておくと、この後の手続きがスムーズに進みます。不明な点があれば、市区町村の役所やNHKのふれあいセンターに問い合わせておくと安心です。
ステップ2:申請書を入手する
次に、免除申請に必要な「放送受信料免除申請書」を入手します。入手方法はいくつかあり、ご自身に合った方法を選べます。
- NHKの窓口:お近くのNHK放送局で直接受け取れます。
- 電話で取り寄せる:NHKふれあいセンターに電話すると、申請書を郵送してもらえます。
- インターネットでダウンロード:NHKの公式サイトから申請書をダウンロードして印刷も可能です。
パソコン操作が苦手な方は、電話で取り寄せるのが最も簡単でおすすめです。
ステップ3:必要事項を記入し、証明書類とあわせて提出する
申請書が手元に届いたら、必要事項を記入します。氏名、住所、お客様番号(請求書などに記載)などを正確に書き込みましょう。そして、最も重要なのが「免除事由を証明する書類」の添付です。
例えば、住民税非課税の障害者として申請する場合、市区町村が発行する「非課税証明書」や「障害者手帳のコピー」などが必要です。必要な書類は免除理由で異なるため、案内をよく読んで準備し、申請書と一緒にNHKへ郵送してください。
高齢者の一人暮らしでよくある状況別の手続き方法

高齢者の一人暮らしでは、ご本人の逝去や施設への入居など、生活状況に大きな変化が起こることがあります。そうした変化に伴い、NHKの受信契約についても適切な手続きが必要です。
ここでは、特に多く見られる3つの状況別に、具体的な手続き方法を解説します。手続きを怠ると不要な料金が発生し続けるため、必ず確認しておきましょう。
契約者本人が亡くなった場合(死亡後の解約手続き)
受信契約者が亡くなられた場合、ご遺族の方が解約の手続きを行う必要があります。手続きをしないと、故人宛てに受信料の請求が続いてしまうためです。手続きはNHKふれあいセンターへの電話で行います。
電話の際には、契約者氏名、住所、お客様番号などを伝えます。その後、NHKから解約届が送られてくるので、必要事項を記入して返送すれば手続きは完了です。一般的には相続人が手続きを行います。
老人ホームなどの施設に入居した場合の手続き
ご自宅での一人暮らしから、特別養護老人ホームなどの施設へ入居した場合、元のご自宅の受信契約は解約できます。施設全体でNHKと契約している場合が多く、個人での支払いが不要になるためです。
この場合も、ご自宅に誰も住まなくなる(受信機がなくなる)ことを理由に、NHKへ解約を届け出る必要があります。施設への入居が決まったら、忘れずに解約手続きを行いましょう。
テレビを処分・譲渡した場合の解約手続き
「もうテレビを見ないから処分した」「知人に譲った」など、ご自宅からテレビ(受信機)が一切なくなった場合も、受信契約の解約対象となります。NHKの受信契約は、あくまで受信機の設置に対して発生するためです。
この場合も、NHKふれあいセンターへ電話で連絡し、テレビを廃棄・譲渡した旨を伝えて解約手続きを進めます。リサイクル券の控えなどを準備しておくとスムーズです。
【ご家族向け】高齢の親の代理で手続きする際の注意点

高齢の親御さんに代わって、お子さんなどご家族が手続きを行うケースは少なくありません。代理で手続きをスムーズに進めるためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、代理で申請や解約を行う際の準備物や注意点を解説します。事前に把握しておくことで、余計な手間をかけずに手続きを完了させることができます。
代理申請で準備するものと手続きのポイント
ご家族が代理で免除申請や解約手続きを行う場合、原則として委任状は必要ありません。ただし、電話で問い合わせる際は、契約者本人との関係性を明確に説明する必要があります。
手続きをスムーズに進めるために、以下の情報を事前に準備しておきましょう。
- 契約者の氏名、住所
- お客様番号(請求書や契約書に記載)
- (免除申請の場合)免除事由とそれを証明する書類
- (解約の場合)解約理由(死亡、施設入所、テレビの廃棄など)
これらの情報を手元に揃えてから連絡することで、やり取りが円滑になります。
手続きでつまずきやすい点と対処法
高齢の親に代わって手続きをする際、「NHKの電話窓口がなかなかつながらない」「どの書類を準備すればいいか分かりにくい」といった壁にぶつかることがあります。
電話がつながりにくい場合は、時間帯を変えるか、公式サイトのチャットサービスを利用するのも一つの手です。また、必要書類で不明な点があれば、まずはお住まいの市区町村役場の担当窓口に相談するのが確実です。
もしNHK受信料を支払わないとどうなる?

受信料の支払いに納得できず、支払いを拒否し続けたらどうなるのでしょうか。法律で定められた義務であるため、未払いには相応のリスクが伴います。
万が一のケースについて、どのような事態が起こりうるのかを正しく知っておくことは重要です。最悪の事態を避けるためにも、適切な対応を心がけましょう。
督促状の送付や訪問員による集金
受信料の支払いが滞ると、まず書面による督促状が定期的に送られてきます。支払いが確認できない期間が続くと、NHKの委託を受けたスタッフが自宅を訪問し、直接支払いを求めることがあります。
この段階で支払いに応じれば、大きな問題に発展することはほとんどありません。しかし、支払いを拒否し続けると、次の段階に進む可能性があります。
最終的には法的措置に移行する可能性も
長期間にわたり支払いを拒否し続けると、NHKは「支払督促」や「民事訴訟」といった法的措置に踏み切る可能性があります。裁判所から支払い命令が下され、それでも応じない場合は財産が差し押さえられることもあり得ます。
こうした事態を避けるためにも、支払いが困難な場合は無視するのではなく、本記事で解説した免除・割引制度の利用を検討するなど、必ず何らかの対応を取ることが重要です。
まとめ:NHK受信料の不安を解消し、ご自身の状況にあった手続きを

本記事では、一人暮らしの高齢者の方を対象に、NHK受信料の免除・割引制度と、それに伴う各種手続きについて詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。
- NHK受信料は、法律に基づきテレビ設置者に支払い義務がある。
- 「住民税非課税」や「障害の有無」などの条件を満たすことで、全額または半額が免除される制度がある。
- 年齢だけを理由にした免除制度は存在しない。
- 免除を受けるにはご自身での申請が必要で、自動的に免除されることはない。
- 契約者の死亡や施設入所、テレビの廃棄の際は、解約手続きを忘れずに行うことが重要。
まずはご自身の状況が免除の条件に当てはまるかを確認し、対象となる場合は、この記事を参考に手続きを進めてみてください。受信料に関する不安を解消し、安心して日々の生活を送るための一助となれば幸いです。
NHK受信料、高齢者の一人暮らしに関するよくある質問

ここでは、高齢者の一人暮らしとNHK受信料について、特に多く寄せられる質問にお答えします。
住民税非課税世帯は、NHK受信料が必ず無料になりますか?
A. いいえ、必ずしも無料(全額免除)にはなりません。全額免除の対象は、世帯全員が住民税非課税で、かつその世帯に障害のある方(障害者手帳をお持ちの方)がいる場合です。住民税非課税であるだけでは対象外のため、ご注意ください。
75歳以上になったら、NHK受信料は自動的に無料になりますか?
A. いいえ、年齢のみを理由とした免除制度はありません。そのため、75歳や80歳になったからといって、自動的に受信料が無料になることはありません。他の免除条件(住民税非課税や障害の有無など)に該当する場合に、申請をすることで免除が適用されます。
受信料が免除になる年収の具体的な金額はありますか?
A. 「年収〇〇万円以下」といった明確な基準はありません。基準となるのは、あくまで「住民税が非課税であるか」です。住民税が非課税になる所得額は、お住まいの市区町村や家族構成によって異なります。詳しくは、お住まいの市区町村の役所にお問い合わせください。
免除の申請はどこでできますか?市役所でも可能ですか?
A. 免除の申請手続きは、NHKに対して行います。市役所は、免除の条件を確認したり、証明書(非課税証明書など)を発行したりする場所であり、申請の窓口ではありません。申請書はNHKから入手し、必要書類を添えてNHKに提出してください。
免除はいつから適用されますか?
A. 免除の事由に該当し、NHKに申請書が受理された月から適用となります。さかのぼって過去の受信料が返金されることは基本的にありませんので、免除の条件に当てはまると分かったら、速やかに手続きをすることをおすすめします。
親が亡くなった場合、受信料の手続きはどうすればいいですか?
A. ご遺族の方が、NHKふれあいセンターへ電話で連絡し、契約者が亡くなったことを伝えて解約手続きを行ってください。世帯に誰もいなくなった、またはテレビがなくなった場合は解約となります。手続きをしないと請求が続いてしまうため、忘れずに行いましょう。
NHKの受信料を安く払う方法を教えてください。
A. 最も安くなる支払い方法は、「口座振替」または「クレジットカード継続払」で「12か月前払」を選択することです。2か月払いや振込用紙での支払いに比べて、年間で数千円割安になります。また、条件に合えば「家族割引」などの割引制度も利用できます。
受信契約を解約するにはどうすればいいですか?
A. テレビの廃棄・譲渡、契約者の死亡や施設入所などで、ご自宅にテレビがなくなった場合に解約できます。NHKふれあいセンターに電話で連絡し、解約したい旨とその理由を伝えてください。NHKから送付される解約届に記入・返送することで手続きが完了します。