ご親族の突然の不幸や、管理物件がゴミ屋敷になってしまった時、特殊清掃という言葉を初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。普段馴染みのないサービスだからこそ、「一体いくらかかるのだろう?」という費用の不安は計り知れません。
この記事では、特殊清掃の料金相場を間取りや事例別にご紹介し、費用の内訳や変動要因を詳しく解説します。さらに、信頼できる業者を適正価格で選ぶためのポイントもお伝えしますので、料金に関する疑問や不安を解消し、安心して依頼するための第一歩となるはずです。
そもそも特殊清掃とは?一般的な清掃との違い

特殊清掃とは、事件や事故、孤独死などでお部屋が汚損された場合に、原状回復を目指す専門的な清掃作業のことです。一般的なハウスクリーニングでは対応できないレベルの汚染や臭いを除去するのが大きな特徴であり、専門知識と技術が求められます。
血液や体液の除去、強力な腐敗臭の消臭、害虫駆除など、その作業内容は多岐にわたります。この記事では、「特殊清掃とは」何か、その具体的な作業内容と、一般的な清掃との根本的な違いについて分かりやすく解説していきます。
孤独死やゴミ屋敷で必要になる専門作業
孤独死の現場では、ご遺体の腐敗による体液の除去や、強烈な死臭の消臭作業が不可欠です。また、ゴミ屋敷の清掃では、大量の不用品処分に加え、害虫駆除や長年蓄積された汚れの除去など、こちらも専門的な対応が求められます。
これらの現場は、見た目の問題だけでなく、感染症のリスクも伴います。専門の薬剤や機材を使い、安全を確保しながら原状回復を行うのが特殊清掃の重要な役割であり、衛生的な環境を取り戻すために欠かせない作業なのです。
普通のハウスクリーニングでは対応できない
一般的なハウスクリーニングは、日常的な汚れを落とし、快適な空間を維持することが目的です。一方、特殊清掃は、血液や体液といった生物汚染や、深刻な腐敗臭など、精神的にも技術的にも困難な状況に対応します。
使用する薬剤や機材も全く異なり、オゾン脱臭機のような専門設備が必須となります。感染症予防のための知識と防護服などの装備も不可欠で、普通の清掃業者では安全な作業を遂行することが困難なのです。
遺品整理や原状回復も含まれることがある
特殊清掃業者の多くは、清掃作業だけでなく、故人の遺品を整理するサービスも提供しています。ご遺族が精神的な負担からご自身で片付けを進めるのが難しい場合に、専門家が丁寧に仕分けや供養、処分を代行します。
さらに、汚染が床下や壁紙の奥深くまで及んでいる場合は、リフォームなどの原状回復工事まで一貫して請け負うこともあります。どこまでの作業を依頼できるかは業者によって異なるため、事前にサービスの範囲を確認することが大切です。
【間取り別】特殊清掃の料金相場一覧

特殊清掃の料金は、部屋の広さや汚染の状況によって大きく変動します。間取り別の料金相場を知っておくことで、見積もりを依頼する際の大まかな目安となり、冷静に判断する助けになります。汚染度合いによって費用は上下します。
ここでは、ワンルームから広い間取り、そしてゴミ屋敷まで、それぞれの料金相場を一覧でご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせ、おおよその費用感を把握するための参考にしてください。
| 間取り | 料金目安 | 作業時間 |
|---|---|---|
| ワンルーム・1K | 60,000円~300,000円 | 1~6時間 |
| 1DK~2DK | 130,000円~500,000円 | 2~12時間 |
| 2LDK以上 | 240,000円~700,000円 | 要見積もり |
| ゴミ屋敷 | 状態により大きく変動 | 要見積もり |
ワンルーム・1Kの特殊清掃料金の目安
一人暮らしに多いワンルームや1Kの場合、特殊清掃の料金相場は約6万円から30万円程度です。孤独死などで発見が早く、汚染範囲が限定的な場合は、比較的費用を抑えられる傾向にあります。
しかし、発見が遅れて体液の浸透が進んでいたり、消臭作業に時間がかかったりすると、料金は高くなります。コンパクトな間取りであっても、状況次第で費用は大きく変動することを覚えておきましょう。
1DKから2DKまでの特殊清掃料金の目安
1DKから2DKの間取りになると、特殊清掃の料金相場は約13万円から50万円ほどが目安となります。部屋数が増えることで清掃範囲が広がるため、ワンルームに比べて費用は高くなるのが一般的です。
また、家財道具の量も増えるため、遺品整理や不用品処分を同時に依頼する場合は、その分の追加費用も考慮する必要があります。どこまで汚染が広がっているかが、料金を左右する大きなポイントになります。
2LDK以上の広い間取りの料金目安
ご家族で住まわれるような2LDK以上の広い間取りでは、料金相場は約24万円から70万円以上となることも珍しくありません。汚染が複数の部屋に及んでいる場合や、家全体の消臭作業が必要になると、費用は高額になります。
家財の量も多くなるため、遺品整理と合わせた総額は100万円を超えるケースもあります。建物の構造や汚染の深刻度によって大きく変動するため、必ず現地で詳細な見積もりを取ることが不可欠です。
ゴミ屋敷清掃の料金は状態により変動
ゴミ屋敷の清掃費用は、間取りだけで料金を決めることができません。ゴミの量や種類、害虫の発生状況、水回りの汚損度合いなど、現場の状態によって費用が大きく変動するのが特徴です。
ゴミの搬出経路が確保できるか、リサイクル品の有無なども料金に影響します。そのため、特殊清掃が必要なゴミ屋敷の場合は、複数の業者に現地調査を依頼し、正確な見積もりを比較検討することが非常に重要です。
特殊清掃の料金内訳と費用が変動する要因

特殊清掃の見積書を見ると、様々な項目が並んでいて複雑に感じるかもしれません。しかし、料金の内訳と費用が変動する要因を理解することで、提示された金額が適正かどうかを判断しやすくなります。安心して依頼するための知識を身につけましょう。
基本料金に何が含まれているのか、そしてどのような状況で追加費用が発生するのかを解説します。ご自身のケースではどの項目が重要になるかを考えながら読み進めてみてください。
基本料金に含まれる主な作業内容
多くの特殊清掃業者では、基本料金の中に初期対応として必要な作業が含まれています。具体的には、汚染箇所とその周辺の清掃、初期的な消毒・消臭作業、作業員の人件費などが一般的です。
ただし、この「基本料金」に含まれる内容は業者によって大きく異なります。どこまでが基本料金で、どこからが追加料金になるのかを、契約前に見積書でしっかりと確認することが、後のトラブルを避けるために重要です。
遺体の腐敗状況による料金の変動
孤独死の発見までにかかった時間は、特殊清掃の費用に最も大きな影響を与えます。発見が遅れるほどご遺体の腐敗が進み、体液が床や壁の内部まで浸透し、汚染範囲が拡大してしまうからです。
汚染が深刻な場合、床材の解体やリフォームといった原状回復工事が必要になることもあります。腐敗状況が深刻であるほど、作業は複雑かつ長時間に及ぶため、料金は高額になる傾向があります。
遺品整理や不用品処分は追加費用
特殊清掃と同時に故人の遺品を整理する場合、その作業費は別途追加されるのが一般的です。遺品の量や仕分けにかかる時間、貴重品の捜索の有無などによって、費用は変動します。
また、体液で汚染されてしまった家具や家電、寝具などは、通常のゴミとして処分できません。感染性廃棄物として専門の処理が必要になるため、その処分費用も別途見積もりに計上されます。
消臭・除菌作業の重要性と費用
特殊清掃において、最も専門性が高く重要なのが消臭・除菌作業です。市販の消臭剤では全く効果がない強烈な腐敗臭を消すためには、オゾン脱臭機などの専門機材が不可欠となります。
このオゾン脱臭は、効果を発揮するまで数日間、機械を稼働させ続ける必要があります。そのため、作業日数や使用する機材に応じて費用が加算されます。匂いを完全に消すための費用は決して安くありませんが、最も重要な工程です。
【事例別】特殊清掃の具体的な費用を紹介

特殊清掃の料金相場や内訳を理解しても、実際の現場でどれくらいの費用がかかるのか、イメージが湧きにくいかもしれません。そこで、具体的な事例をもとにした費用をご紹介します。ご自身の状況と近いケースを参考にしてみてください。
孤独死現場のアパート清掃から、ゴミ屋敷と化した一軒家の片付けまで、様々な状況での費用感を掴むことができます。どのような作業にいくらかかったのか、内訳にも注目してみましょう。
孤独死から数日後のアパート清掃事例
都内のワンルームアパートで、ご逝去から3日後に発見された孤独死現場の事例です。発見が比較的早かったため、汚染はベッド周りに限定されていました。作業内容は、体液の除去、汚染された寝具の撤去、基本的な消臭・除菌作業でした。
作業員2名で約4時間の作業となり、費用は合計で約18万円でした。早期対応だったため、床材の解体などは不要で、比較的費用を抑えることができたケースです。
ゴミ屋敷と化した一軒家の片付け事例
長年空き家だった3LDKの一軒家がゴミ屋敷状態になっていた事例です。家全体にゴミが散乱し、害虫も大量に発生していました。作業は、ゴミの分別と搬出、家全体の清掃、害虫駆除、そして複数回にわたるオゾン脱臭を行いました。
作業員4名で5日間を要し、トラックも複数台手配しました。遺品整理も同時に行い、総額は約120万円と高額になりましたが、無事に売却できる状態まで回復させることができました。
体液が染み込んだ床の原状回復事例
賃貸マンションで孤独死が発生し、発見までに1ヶ月以上が経過した事例です。体液がフローリングを通り越し、下のコンクリート部分まで浸透している深刻な状態でした。特殊清掃に加え、床の解体と張り替え工事が必要となりました。
特殊清掃費用が約40万円、床の原状回復工事費用が約35万円で、合計約75万円かかりました。汚染が建物の構造部分にまで及ぶと、大掛かりな工事が必要になり、費用も高額になります。
特殊清掃の費用は誰が支払う義務があるか

特殊清掃が必要になった時、費用の問題は避けて通れません。特に賃貸物件の場合、「孤独死の特殊清掃費用は誰が払うのか?」という疑問は切実です。支払い義務は誰にあるのかを正しく理解しておくことで、無用なトラブルを防ぐことができます。
ここでは、原則的な支払い義務者である相続人から、連帯保証人の責任、そして相続放棄した場合の扱いまで、法的な観点から費用負担について解説します。いざという時に慌てないための知識です。
原則として相続人が支払い義務を負う
故人が残した預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。特殊清掃費用は、このマイナスの財産(債務)として扱われるため、原則として法定相続人が支払い義務を負います。
故人の遺産から支払うのが基本ですが、遺産で賄いきれない場合は相続人が自己負担で支払うことになります。複数の相続人がいる場合は、法定相続分に応じて負担するのが一般的です。
賃貸物件での連帯保証人の責任範囲
賃貸物件で孤独死が発生し、相続人がいない、あるいは全員が相続放棄をした場合、賃貸借契約の連帯保証人に支払い義務が及ぶことがあります。連帯保証人は、賃借人と同等の責任を負うと定められているためです。
どこまでの原状回復費用を負担するかは、契約内容や状況によって異なります。過去の判例では、連帯保証人の責任範囲を限定するケースもありますが、基本的には支払い義務が生じる可能性が高いと認識しておくべきでしょう。
相続放棄した場合の費用負担について
故人に多額の借金がある場合など、相続人は家庭裁判所に申し立てることで相続を放棄することができます。相続放棄が認められると、財産を一切相続しない代わりに、債務の支払い義務も免れます。
したがって、相続人全員が相続放棄をした場合、特殊清掃費用の支払い義務もなくなります。この場合、最終的には賃貸物件のオーナーや管理会社が費用を負担するケースが多くなります。
料金を抑えて信頼できる業者を選ぶ方法

特殊清掃は専門性が高く、料金も安くはありません。だからこそ、後悔しないためには信頼できる業者を慎重に選ぶ必要があります。料金の安さだけで選んでしまうと、質の低い作業や後からの高額請求といったトラブルに巻き込まれる危険性があります。
ここでは、悪徳業者の手口を避け、適正価格で質の高いサービスを提供してくれる優良業者を見抜くための具体的な方法を解説します。複数の業者を比較検討する際のチェックポイントとしてご活用ください。
悪徳業者に注意!高額請求の手口とは
「業界最安値」など、極端に安い料金を広告で謳う業者には注意が必要です。最初の見積もりを安く見せて契約させ、作業後に「追加作業が必要だった」などと理由をつけて高額な請求をするのが悪徳業者の典型的な手口です。
また、必要な作業を省略して料金を安く見せかけるケースもあります。特に消臭作業が不十分だと、後から臭いが再発するトラブルにつながります。見積もりの安さだけでなく、作業内容の質を見極めることが重要です。
相見積もりで料金とサービスを比較検討
信頼できる業者を選ぶ最も効果的な方法は、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」です。最低でも2~3社から見積もりを取り、料金とサービス内容を比較検討しましょう。
料金だけでなく、電話や現地調査の際の担当者の対応、説明の分かりやすさ、質問への誠実な回答なども重要な判断材料になります。複数の業者と接することで、その業界の適正価格やサービス水準が見えてきます。
見積書で確認すべき5つの重要項目
業者から見積書を受け取ったら、必ず以下の5つの項目を詳細に確認してください。不明瞭な点があれば、契約前に必ず質問し、納得できる回答を得ることがトラブル防止につながります。
- 作業内容の詳細:どのような作業がどこまで含まれているか。
- 各項目の単価と数量:料金の根拠が明確に記載されているか。
- 追加料金の有無:どのような場合に追加費用が発生する可能性があるか。
- 作業期間の目安:いつからいつまで作業を行う予定か。
- 支払い条件:支払い方法やタイミングはいつか。
優良な特殊清掃業者の見分け方
優良な業者は、いくつかの共通した特徴を持っています。まず、見積書の内訳が明確で、追加料金に関する説明がしっかりしています。また、豊富な実績をウェブサイトなどで公開しており、作業事例を確認できます。
さらに、「特殊清掃士」といった専門資格を持つスタッフが在籍していることも信頼の証です。何よりも、依頼者の不安な気持ちに寄り添い、親身になって相談に乗ってくれるかどうかが、安心して任せられる業者を見極める最大のポイントと言えるでしょう。
まとめ:特殊清掃の料金相場と後悔しない業者の選び方

特殊清掃の料金は、間取りや汚染状況によって大きく変動しますが、おおよその相場を知ることで、提示された見積もりが適正かどうかを判断する基準になります。この記事で解説した料金の内訳や事例を参考に、冷静に状況を把握してください。
そして、最も重要なのは、信頼できる専門業者に依頼することです。必ず複数の業者から見積もりを取り、料金だけでなく、サービス内容や担当者の対応を比較検討しましょう。焦らず慎重に業者を選ぶことが、精神的にも費用的にも負担を軽減し、後悔しない結果につながります。
特殊清掃の料金に関するよくある質問

孤独死の特殊清掃費用は平均いくら?
一概には言えませんが、孤独死の特殊清掃費用相場は、ワンルームで比較的軽度な場合で10万円前後から、汚染が深刻な場合や間取りが広い場合は50万円以上かかることもあります。平均的には20万円~40万円程度が一つの目安と言えます。
ご遺体の発見までの期間、汚染の範囲、遺品整理の有無など、様々な要因で費用は大きく変動します。正確な金額を知るためには、必ず専門業者による現地見積もりが必要です。
特殊清掃の費用は誰が支払うのですか?
特殊清掃の費用は、原則として故人の法定相続人が支払う義務を負います。故人の遺産から支払われるのが基本です。相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合は、状況が異なります。
賃貸物件の場合は、連帯保証人、あるいは物件のオーナーや管理会社が費用を負担することになります。「孤独死の特殊清掃費用負担」は誰になるか、契約内容や法的な関係性によって決まります。
見積もりより高くなることはありますか?
はい、可能性があります。見積もりはあくまで現地調査時点での状況に基づいています。作業を開始してから、床下や壁の内部など、見えなかった部分にまで汚染が広がっていることが判明するケースがあります。
優良な業者は、追加料金が発生する可能性とその条件について事前に説明してくれます。契約前に「追加料金の有無」についてしっかり確認しておくことが、後のトラブルを防ぐために重要です。
特殊清掃の作業期間はどのくらいですか?
作業期間は、部屋の広さや汚染の度合いによって大きく異なります。簡単な汚染除去と初期消臭であれば1日で完了することもありますが、これは稀なケースです。
深刻な汚染や、強烈な臭いを完全に除去するためのオゾン脱臭作業には、数日から1週間以上かかることも珍しくありません。特に「匂い消し」には時間がかかると認識しておきましょう。
特殊清掃を自分で行うことは可能ですか?
結論から言うと、おすすめできません。血液や体液には様々な病原菌が含まれている可能性があり、専門的な知識や防護服などの装備なしで作業を行うのは非常に危険です。感染症のリスクが伴います。
また、市販の洗浄剤や消臭剤では特殊な汚染や臭いに対応できず、中途半端な作業で状況を悪化させる可能性もあります。安全面と確実性の両方から、専門業者に任せるのが最善の選択です。