親の介護が必要になり、介護保険の利用を考え始めたものの、申請手続きが複雑で何から手をつければ良いか分からない、とお困りではありませんか。仕事や家事で忙しく、役所へ行く時間を作るのも一苦労ですよね。
この記事では、介護保険の申請代行を誰に頼めるのか、無料の相談先から手続きの具体的な流れまで分かりやすく解説します。専門家に依頼することで、あなたの時間的・精神的な負担を大きく減らし、スムーズに介護サービスを開始できるでしょう。
介護保険の申請代行は誰に頼める?無料相談先も解説

介護保険の申請は、ご本人やご家族が行うのが基本ですが、手続きが複雑で難しい場合も少なくありません。そんな時は、介護の専門家であるケアマネジャーや地域包括支援センターの職員などに、無料で申請を代行してもらうことが可能です。
また、行政書士といった専門家に有料で依頼する選択肢もあります。ご自身の状況に合わせて最適な依頼先を選ぶことが大切ですので、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
本人以外に家族や専門家も申請を代行できます
介護保険の申請は、本人や同居の家族でなくても、親族や介護の専門家が代わりに行うことができます。具体的には、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャー、介護保険施設のソーシャルワーカーなどが主な代行者となります。
2024年度の地方分権改革により、今後は認知症グループホームなども申請代行が可能になる見込みで、利用者にとっての利便性はさらに向上するでしょう。
代理申請と代行申請の具体的な違いとは
「代理申請」と「代行申請」は似ていますが、法的な根拠が異なります。「代理申請」は、本人の代理人として家族や親族が申請を行うことです。一方、「代行申請」は、介護保険法に基づき、指定された事業者が本人の依頼を受けて申請を行うことを指します。
ケアマネジャーなどが行うのは後者の「代行申請」にあたります。代行申請は事業者の義務として定められており、正当な理由なく拒否することはできません。
| 種類 | 申請する人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 代理申請 | 家族、親族、成年後見人など | 民法上の代理権 |
| 代行申請 | ケアマネジャー、施設職員など | 介護保険法 |
なぜ介護保険の申請代行が必要とされるのか
介護保険の申請手続きには、多くの書類準備や役所とのやり取りが必要で、専門的な知識も求められます。仕事や家事で忙しいご家族にとって、これらの手続きは大きな負担となりがちで、申請ミスによってサービス開始が遅れる不安もあります。
申請代行サービスを利用すれば、こうした複雑な手続きを専門家が正確かつ迅速に進めてくれます。身体的・精神的な負担を軽減し、本来の介護に専念できることが、代行が必要とされる大きな理由です。
【無料】介護保険の申請代行を依頼できる専門家

介護保険の申請代行を考えたとき、多くの方が気になるのが費用面ではないでしょうか。実は、費用をかけずに申請をサポートしてくれる専門家や窓口はいくつも存在します。これらを活用すれば、経済的な負担なく手続きを進めることが可能です。
ここでは、無料で介護保険の申請代行を依頼できる主な専門家や機関を4つご紹介します。まずは身近な相談先から連絡してみましょう。
地域包括支援センターの職員
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域で支えるための総合相談窓口です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職員が在籍しており、介護に関するあらゆる相談に対応しています。
介護保険の申請方法が分からない場合、相談から申請書の提出代行まで一貫して無料で行ってくれるので、最初に相談する場所として最適です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャー
居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)も、無料で申請代行を行ってくれます。ケアマネジャーは介護プラン作成の専門家であり、申請代行はその業務の一環と位置づけられています。
申請後のサービス利用開始やケアプラン作成までスムーズに連携できるため、在宅介護を希望する方にとって心強い存在です。
介護保険施設のソーシャルワーカー
特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった介護保険施設に入所している(または入所を検討している)場合、施設のソーシャルワーカーに申請代行を依頼できます。彼らは施設利用者の生活相談全般を担う専門職です。
入院中の病院から施設への入所を考えている際など、医療機関と連携しながら手続きを進めてもらえる点が大きなメリットです。
民生委員や病院の医療相談員
お住まいの地域の民生委員も、高齢者の身近な相談相手として申請手続きの支援を行ってくれることがあります。誰に相談して良いか分からない場合の、最初の窓口として頼りになる存在です。
また、入院中であれば病院にいる医療ソーシャルワーカー(医療相談員)に相談することも可能です。退院後の生活を見据えた上で、申請のサポートをしてくれます。
【有料】介護保険の申請代行を依頼できる専門家

無料の相談先に加え、より専門的なサポートを求める場合には、有料で申請代行を依頼する方法もあります。特に、他の法的手続きも同時に進めたい場合や、とにかく手間を省きたい方にとっては有効な選択肢となるでしょう。
ここでは、有料で介護保険の申請代行を依頼できる専門家と、そのメリットや料金相場について解説します。
行政書士や社会保険労務士(社労士)
行政書士は「書類作成のプロ」であり、官公署に提出する書類の作成や申請代理を専門としています。介護保険の申請もその業務範囲に含まれており、複雑な書類も正確に作成してくれます。
また、社会保険労務士(社労士)も、社会保険全般の専門家として申請代行に対応している場合があります。成年後見制度の利用など、他の法的手続きと合わせて依頼したい場合に特に頼りになります。
有料サービスを選ぶメリットと料金相場
有料サービスを利用する最大のメリットは、専門家による迅速かつ確実な手続きが期待できる点です。また、役所とのやり取りや書類収集といった手間をすべて任せられるため、時間的な制約がある方には大きな魅力でしょう。
料金相場は依頼先や内容によって異なりますが、一般的には2万円~5万円程度が目安となります。無料の代行サービスとの違いを理解し、ご自身の状況に合わせて検討することが重要です。
- 専門家による迅速で正確な書類作成
- 役所への訪問など、手続きの手間を完全に代行
- 他の法的手続き(成年後見など)も併せて相談可能
- 平日日中に時間が取れない方でも依頼しやすい
申請代行を依頼した後の手続きの流れを5ステップで解説

専門家に申請代行を依頼すると、その後の手続きはどのように進むのでしょうか。全体の流れを把握しておくことで、先の見通しが立ち、安心して任せることができます。申請から認定結果が出るまでには、いくつかの段階があります。
ここでは、申請書を提出してから介護サービスが開始されるまでの流れを、大きく5つのステップに分けて具体的に解説していきます。
ステップ1:市区町村の窓口で申請書を提出
まず、代行者が本人に代わって「要介護・要支援認定申請書」などの必要書類を、市区町村の介護保険担当窓口に提出します。この時点で、介護保険被保険者証は一度市区町村に預けることになります。
ご本人やご家族が役所に出向く必要はなく、すべて代行者が手続きを進めてくれるため、最初の関門をスムーズにクリアできます。
ステップ2:認定調査員による訪問調査の実施
申請が受理されると、後日、市区町村の認定調査員が自宅や入院先の病院などを訪問し、本人から心身の状態について聞き取り調査を行います。調査は全国共通の項目に沿って行われ、時間は30分~1時間程度です。
調査日には、家族や依頼したケアマネジャーなどに立ち会ってもらうことも可能で、本人の状況をより正確に伝える手助けになります。
ステップ3:かかりつけ医による主治医意見書の作成
訪問調査と並行して、市区町村から本人の主治医に対して「主治医意見書」の作成が依頼されます。これは、医学的な観点から介護の必要性を判断するための重要な資料となります。
最近では制度が変わり、申請者側で事前に主治医意見書を入手して提出することも可能になり、手続きの迅速化が期待されています。
ステップ4:一次判定と二次判定(介護認定審査会)
認定調査の結果と主治医意見書の内容をもとに、まずコンピュータによる一次判定が行われます。その後、その結果と特記事項などを参考に、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が要介護度を最終的に判定(二次判定)します。
この二段階の審査により、客観的かつ総合的な視点で、申請者の介護の必要度が判断される仕組みになっています。
ステップ5:認定結果の通知と介護サービスの開始
申請から原則30日以内に、市区町村から認定結果が記載された「結果通知書」と、新しい「介護保険被保険者証」が郵送で届きます。結果は「自立(非該当)」「要支援1~2」「要介護1~5」のいずれかです。
要支援・要介護の認定が下りたら、ケアマネジャーに連絡し、本人や家族の希望に沿ったケアプランを作成してもらい、サービスの利用を開始します。
介護保険の申請代行で必要になる書類や持ち物一覧

介護保険の申請代行をスムーズに進めるためには、事前に必要書類を把握し、準備しておくことが大切です。書類に不備があると、手続きが遅れてしまう可能性もあります。代行者に依頼する際に、何を用意すれば良いか確認しておきましょう。
ここでは、介護保険の申請で一般的に必要となる書類や持ち物を一覧でご紹介します。自治体によって若干異なる場合があるため、詳細は依頼先にご確認ください。
要介護・要支援認定申請書
これが介護保険の申請におけるメインの書類です。市区町村の介護保険担当窓口や、自治体のウェブサイトからダウンロードして入手できます。通常は、申請代行を依頼する専門家が用意してくれます。
記入方法が分からない部分があっても、代行者が本人や家族から聞き取りながら作成をサポートしてくれるので心配いりません。
介護保険被保険者証と医療保険被保険者証
65歳以上の方(第1号被保険者)は、市区町村から交付されているオレンジ色の「介護保険被保険者証」が必要です。申請時に一度預け、認定結果と共に新しいものが返却されます。
40歳から64歳までの方(第2号被保険者)が特定疾病により申請する場合は、加入している健康保険の「医療保険被保険者証」の写しが必要になります。
本人確認書類とマイナンバー確認書類
申請には、申請対象となる本人のマイナンバー(個人番号)がわかる書類と、申請手続きを行う人(代行者)の本人確認書類が必要です。マイナンバーカードがあれば、1枚で両方の確認ができます。
マイナンバーカードがない場合は、マイナンバー通知カードや住民票の写しと、運転免許証などの身元確認書類を組み合わせることで対応可能です。
委任状が必要になるケースとは
家族やケアマネジャーなどが代行申請を行う場合、通常は委任状は不要とされることが多いです。これは、介護保険法で事業者の代行申請が認められているためです。
ただし、行政書士などの専門家に有料で依頼する場合や、自治体の方針によっては委任状の提出を求められることがあります。「介護保険 代行申請 委任状」の要否は、依頼する専門家や市区町村の窓口に事前に確認しておくと安心です。
申請代行を依頼する前に知っておきたい注意点

介護保険の申請代行は非常に便利な制度ですが、依頼する前にいくつか知っておくべき注意点があります。これらを事前に理解しておくことで、万が一の事態にも落ち着いて対応でき、より良い介護サービスの利用へと繋げることができます。
ここでは、認定結果に不服がある場合の対応方法と、信頼できるケアマネジャーの見極め方という、特に重要な2つのポイントについて解説します。
認定結果に不服がある場合の申し立て方法
想定していたよりも軽い要介護度で認定されるなど、通知された結果に納得がいかないケースも考えられます。その場合、諦める必要はありません。結果通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内であれば、不服申し立てを行うことができます。
申し立て先は、各都道府県に設置されている「介護保険審査会」です。審査の結果、主張が認められれば認定の見直しが行われますので、まずはケアマネジャーに相談してみましょう。
信頼できるケアマネジャーの見極め方
申請代行からその後のケアプラン作成まで、長く付き合うことになるケアマネジャー選びは非常に重要です。信頼できるパートナーを見つけることが、満足のいく介護サービス利用の鍵となります。
複数の事業所のケアマネジャーと面談し、相性や経験、説明の分かりやすさを比較検討することをお勧めします。こちらの話を親身に聞いてくれるかどうかも大切なポイントです。
- 話を丁寧に聞き、親身になってくれるか
- 専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれるか
- 連絡がスムーズで、対応が迅速か
- 豊富な知識と経験を持っているか
まとめ:介護保険の申請代行は専門家へ相談しよう

介護保険の申請は、ご家族だけで抱え込むには複雑で負担の大きい手続きです。しかし、地域包括支援センターやケアマネジャーといった専門家に依頼すれば、無料でスムーズに手続きを代行してもらえます。
ひとりで悩まず、まずは身近な専門家に相談することが、適切な介護サービスへの第一歩です。この記事を参考に、あなたとご家族にとって最適な方法を見つけてください。
介護保険の申請代行に関するよくある質問

本人や家族以外でも申請代行はできますか?
はい、可能です。介護保険法では、本人の心身の状況などにより申請が困難な場合、指定された事業者が代行申請を行うことが認められています。多くの場合、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーがその役割を担います。
また、民生委員や社会福祉士、行政書士なども代行できます。ご本人やご家族が役所に行けない場合でも、これらの専門家がサポートしてくれるので安心です。
申請代行を依頼すると費用はかかりますか?
依頼先によって異なります。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャー、介護保険施設のソーシャルワーカーなどへ依頼する場合は、基本的に無料です。これは、申請代行が彼らの公的な業務の一環とされているためです。
一方で、行政書士や社会保険労務士などの専門家に依頼する場合は、数万円程度の料金が発生します。サービス内容や料金体系を事前に確認しましょう。
申請してから認定結果がでるまでどのくらいかかりますか?
申請を受理してから認定結果が通知されるまでの期間は、法律で「原則30日以内」と定められています。ただし、認定調査の日程調整が難航した場合や、主治医意見書の作成が遅れた場合など、状況によっては30日を超えることもあります。
もし期間が延長される場合は、市区町村からその理由と見込み期間が記載された通知が届きますので、内容を確認してください。
申請代行を依頼することは法律で認められていますか?
はい、介護保険法第27条第1項で明確に認められています。指定居宅介護支援事業者(ケアマネジャーのいる事業所)や介護保険施設などは、被保険者から依頼があった場合、その申請を代行するよう努めなければならないと定められています。
これは「申請代行義務」とも呼ばれ、事業者は正当な理由なく依頼を拒否できません。安心して専門家に相談してください。
認定結果がでる前に介護サービスは利用できますか?
はい、利用できます。認定結果を待っている間でも、緊急性が高いなど必要と判断されれば、介護サービスを暫定的に利用することが可能です。この場合、「暫定ケアプラン」を作成してサービスの利用を開始します。
ただし、もし認定結果が「非該当(自立)」となった場合は、利用したサービス費用が全額自己負担になるリスクがあります。利用を開始する前に、ケアマネジャーとよく相談することが重要です。