突然の訃報に際し、「どんな服装で参列すればいいのだろう？」と不安に感じていませんか。故人やご遺族に失礼のないよう、マナーを守りたいというお気持ちはとても大切です。服装は、故人を悼む気持ちを表すための重要な要素の一つです。
この記事では、男女・子ども別に葬儀の服装マナーを徹底解説します。準喪服の基本から、小物選び、季節ごとの注意点まで網羅しているため、この記事を読めば、自信を持って葬儀に参列できるようになります。マナーを守り、心穏やかに故人をお見送りしましょう。
葬儀の服装における基本的なマナー
葬儀の服装で最も大切なのは、故人への弔意とご遺族への配慮を示すことです。そのためには、喪服の種類や立場による格式の違いを理解しておく必要があります。一般的な参列者の場合、男女ともに「準喪服」を着用するのが基本マナーです。
喪服の種類と格式の違いについて
喪服には「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3つの格式があります。最も格式が高い正喪服は喪主や親族が着用し、一般の参列者は準喪服を着用するのが一般的です。略喪服は、急な弔問やお通夜の際に着用が許される服装を指します。
それぞれの格式に合わせた服装を選ぶことが、故人への敬意の表れとなります。立場に応じた服装を理解し、失礼のないようにしましょう。
- 正喪服：喪主や三親等までの遺族が着用。最も格式が高い。（例：モーニングコート、黒紋付）
- 準喪服：一般の参列者が着用。最も一般的な喪服。（例：ブラックスーツ、ブラックフォーマル）
- 略喪服：三回忌以降の法事や急な弔問で着用。（例：ダークスーツ、地味なワンピース）
立場によって服装マナーは異なる
葬儀における服装は、故人との関係性によって変わります。喪主やご遺族、近しい親族は、参列者を迎える立場として最も格式の高い「正喪服」を着用します。一方、友人や知人、会社関係者として参列する場合は「準喪服」が基本です。
故人との関係性を考慮して適切な服装を選ぶことが、礼儀正しい振る舞いにつながります。自分の立場をわきまえ、場にふさわしい服装で参列することが大切です。
お通夜と告別式で服装は違う？
以前は「急いで駆けつけた」という意味合いから、お通夜は平服でも良いとされていました。しかし、現在ではお通夜と告別式の両方で準喪服を着用するのが一般的になっています。特に、お通夜しか参列できない場合は、準喪服で弔意を示すのが望ましいでしょう。
仕事帰りなどでどうしても準備ができない場合は、黒や紺などのダークスーツでも失礼にはあたりません。その際は、ネクタイを黒無地のものに替えるなどの配慮を忘れないようにしましょう。
【男性】葬儀の服装と身だしなみ
男性の葬儀の服装は、光沢のないブラックスーツを基本に、小物や髪型といった身だしなみにも細やかな配慮が求められます。故人への敬意を示すため、細部まで気を配り、清潔感のある装いを心がけましょう。
基本は準喪服のブラックスーツ
男性の準喪服は、光沢のない生地で仕立てられたブラックスーツが基本です。ビジネスで着用する黒のスーツは、光沢があったり色が薄かったりするため、喪服としてはふさわしくありません。ジャケットはシングルでもダブルでも問題ありません。
パンツの裾は、折り返しのないシングルが正式なマナーです。一着用意しておくと、いざという時に慌てずに済みます。葬儀に参列する際は、礼服としてのブラックスーツを選びましょう。
ワイシャツやネクタイの選び方
スーツの下に着用するワイシャツは、白無地のレギュラーカラーが基本です。色柄物やボタンダウンのシャツはカジュアルな印象を与えるため避けましょう。ネクタイは光沢のない黒無地を選び、結び目にくぼみを作る「ディンプル」は作らないのがマナーです。
ネクタイピンは光り物にあたるため、着用しません。清潔感が大切なので、シワのないきれいなワイシャツを用意し、きちんとアイロンをかけておきましょう。
靴や靴下など小物のマナー
足元にもマナーがあります。靴は、金具などの飾りがない黒い革靴を選びましょう。デザインは、内羽根式のストレートチップが最もフォーマルとされています。エナメルなどの光沢のある素材は避け、事前に汚れを落として磨いておきましょう。
靴下も黒の無地が基本です。柄物やワンポイントの入ったものは避け、座った時に素肌が見えないよう、長めの丈のものを選ぶと安心です。ベルトも靴に合わせて、光沢のない黒でシンプルなデザインのものを選びます。
髪型やひげなど身だしなみの注意点
葬儀の場では、清潔感が何よりも大切です。髪はきれいに整え、ワックスなどで過度にセットするのは避けましょう。寝ぐせなどは直して、お辞儀をした際に髪が顔にかからないように、すっきりとまとめておくのが望ましいです。
ひげはきれいに剃るのが基本のマナーとされています。普段からひげを生やしている場合でも、無精ひげはだらしない印象を与えてしまうため、きちんと整えておきましょう。故人への敬意を忘れず、身だしなみを整えることが重要です。
【女性】葬儀の服装と身だしなみ
女性の葬儀の服装は、肌の露出を抑えたブラックフォーマルが基本です。アクセサリーやメイクも控えめにし、故人を偲ぶ気持ちを服装で表現します。全体のバランスを考え、上品で落ち着いた装いを心がけましょう。
基本はブラックフォーマルを選ぶ
女性の準喪服は、光沢のない黒無地の生地で作られたブラックフォーマルです。ワンピースやアンサンブル、スーツなどが一般的で、季節を問わず肌の露出を控えることが重要です。夏場でも長袖か五分袖、七分袖を選びましょう。
スカート丈は、正座をしても膝が隠れる膝下からふくらはぎ丈が適切です。体のラインが出過ぎるデザインや、短すぎるスカート丈はマナー違反となるため注意が必要です。
ストッキングやバッグの選び方
葬儀に参列する際は、30デニール以下の薄手の黒いストッキングを着用するのがマナーです。厚手のタイツはカジュアルな印象になるため避けましょう。素足はもちろん、肌色のストッキングも基本的にはNGとされています。
バッグは、光沢のない黒い布製のハンドバッグが最適です。殺生を連想させる革製品や、光る金具がついたものは避けます。荷物が多い場合は、黒無地のシンプルなサブバッグを用意すると良いでしょう。
靴やアクセサリーの注意点
靴は、光沢のない黒のシンプルなパンプスを選びます。ヒールの高さは3〜5cm程度が歩きやすく、疲れにくいでしょう。オープントゥやサンダル、ピンヒールは避け、派手な飾りのないデザインがふさわしいです。
アクセサリーは基本的に結婚指輪以外は外しますが、つける場合は涙の象徴とされる一連の真珠のネックレスが一般的です。不幸が重なることを連想させる二連以上のネックレスや、揺れるタイプのイヤリングは避けましょう。
髪型やメイクの基本マナー
髪型は清潔感を第一に、お辞儀の際に邪魔にならないようシンプルにまとめます。髪が長い場合は、耳より下の位置で一つに束ねるのが基本です。その際、光る髪飾りは避け、黒のヘアゴムやシュシュを使用しましょう。
メイクは、派手な色を使わない「片化粧」を心がけます。ノーメイクはかえって失礼にあたる場合もあるため、薄化粧が基本です。ラメ入りのアイシャドウやチーク、色の濃い口紅は避け、ナチュラルで落ち着いた印象に仕上げましょう。
【子ども】年齢別に解説する服装マナー
子どもの服装は、大人のように厳格な決まりはありませんが、故人を悼む場にふさわしい清潔感のある装いが求められます。学生の場合は制服が正装となります。制服がない場合も、地味な色合いの服装を選びましょう。
学生は学校の制服が基本です
幼稚園から高校生までの学生は、学校指定の制服が正式な礼服とみなされます。制服がある場合は、無理に喪服を用意する必要はありません。校則に従ってきちんと着こなし、清潔感を心がけることが大切です。
制服にリボンやネクタイがある場合は着用しますが、派手な色の場合は外しても構いません。靴や靴下も、普段学校に履いていくもので問題ありませんが、汚れがないか事前に確認しておきましょう。
乳幼児や制服がない場合の服装
まだ制服がない小さなお子さんや乳幼児の場合は、フォーマルな服装でなくても構いません。ただし、黒、紺、グレーといった地味な色合いの服を選びましょう。白いシャツやブラウスに、黒や紺のズボン、スカートを合わせるのが無難です。
キャラクターが描かれた服や、原色などの派手なデザインは避けるのがマナーです。靴も黒や紺などの落ち着いた色のスニーカーで問題ありません。何よりも清潔感を大切にし、場にふさわしい服装を心がけてください。
季節や状況に応じた服装マナー
葬儀の服装は季節や突然の訃報など、状況に応じて柔軟な対応が求められます。しかし、どのような状況であっても「肌の露出を避ける」「華美にならない」という基本原則は変わりません。TPOに合わせた服装を心がけましょう。
夏の葬儀における服装の注意点
暑い夏の葬儀でも、基本的なマナーは変わりません。ジャケットを着用するのが基本ですが、会場や状況によっては上着を脱いでも良い場合があります。その際は周囲の様子を見て判断しましょう。女性は半袖のブラックフォーマルでも問題ありません。
ただし、ノースリーブなど肩が出てしまうデザインは避けましょう。男女ともに、肌の露出を極力抑えることが大切です。会場までの移動中は日傘を使用しても構いませんが、華美なデザインは避け、黒や紺の無地のものを選びます。
冬のコートやマフラーの選び方
冬の葬儀ではコートやマフラーなどの防寒具が必要になります。コートは、黒や紺、グレーなどの地味な色でシンプルなデザインのものを選びましょう。ダウンジャケットやジャンパーなどのカジュアルな上着は避けるのが無難です。
注意したいのは、素材です。毛皮や革製品は殺生を連想させるため、葬儀の場ではタブーとされています。コートやマフラーは会場に入る前にクロークに預けるか、たたんで腕にかけておくのがマナーです。
急な訃報で喪服がない時の対処法
急な訃報で、お通夜までに喪服の準備が間に合わないこともあります。その場合は、無理に喪服を用意する必要はありません。手持ちのダークスーツや地味な色のワンピースで参列しても失礼にはあたりません。
これを「平服」と呼びますが、普段着とは意味が異なります。男性なら濃紺やチャコールグレーのスーツ、女性なら黒や紺のワンピースなどを選びます。時間に余裕があれば、即日対応可能な喪服のレンタルサービスを利用するのも一つの方法です。
平服を指定された場合の服装とは
「三回忌」や「お別れの会」などで、「平服でお越しください」と案内されることがあります。この場合の「平服」は、普段着という意味ではありません。略喪服にあたる服装を指しており、喪服でなくても構いませんが、節度ある装いが求められます。
男性はダークスーツに白シャツ、黒ネクタイを着用します。女性は黒や紺、グレーのワンピースやアンサンブル、スーツを選びましょう。故人を偲ぶ気持ちを忘れず、控えめで落ち着いた服装を心がけることが大切です。
これだけは避けたい服装のNG例
故人やご遺族に失礼のないよう、葬儀の服装には避けるべきNG例が存在します。知らずにマナー違反の服装で参列してしまうと、自分自身が恥ずかしい思いをするだけでなく、厳粛な場の雰囲気を壊しかねません。基本的なNG例をしっかり押さえておきましょう。
殺生を連想させる素材はNG
仏教の教えから、動物の革や毛皮（ファー）製品は殺生を連想させるため、葬儀の場では最も避けなければならない素材です。コートやマフラーはもちろん、バッグや靴、ベルトなども革製品は避けるのが望ましいとされています。
ヘビ革やワニ革、ヒョウ柄などのアニマル柄も同様にマナー違反です。持ち物を選ぶ際は、素材までしっかりと確認するようにしましょう。
光沢のある素材や派手な装飾
葬儀は故人を偲ぶ厳粛な場であり、華美な装いはふさわしくありません。サテンやエナメルといった光沢のある素材は避けましょう。また、大きなバックルや派手な金具がついたベルトやバッグもNGです。
アクセサリーも同様で、ゴールドなど光り輝くものは身につけません。結婚指輪以外は外し、もし身につけるなら一連の真珠のネックレス程度に留めておくのがマナーです。
肌の露出が多い服装は避けましょう
季節を問わず、過度な肌の露出はマナー違反とされています。女性の場合、ミニスカートや胸元が大きく開いたデザイン、ノースリーブなどは避けましょう。スカート丈は必ず膝が隠れる長さを選び、夏場でも肩を出さない配慮が必要です。
男性も、夏場に半袖のシャツ一枚で参列するのは好ましくありません。葬儀の場では、控えめで慎み深い服装を心がけることが、故人とご遺族への配慮につながります。
まとめ：葬儀の服装マナーで大切なこと
ここまで、葬儀における服装のマナーを男女・子ども別、様々な状況に合わせて解説してきました。細かな決まり事は多くありますが、最も大切なのは故人を悼み、ご遺族の悲しみに寄り添う気持ちです。
服装は、その弔意を形として表すためのものです。基本的なマナーを守り、清潔感のある控えめな装いを心がけることで、あなたの弔意はきっとご遺族に伝わるはずです。この記事が、心穏やかに故人をお見送りするための一助となれば幸いです。
葬儀の服装に関するよくある質問
最後に、葬儀の服装に関して多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。急な訃報にも慌てず対応できるよう、ぜひ参考にしてください。いざという時の不安を解消しておきましょう。
お葬式で絶対に着てはいけない服は？
お葬式では、殺生を連想させる毛皮や革製品、アニマル柄の服は絶対に避けるべきです。また、赤や黄色などの派手な色、光沢のある素材、肌の露出が多いデザインもマナー違反となります。
ジーンズやTシャツ、スウェットといったカジュアルすぎる服装も厳禁です。故人とご遺族に失礼のないよう、控えめで清潔感のある装いを心がけてください。
女性の喪服で特に注意すべき点は？
女性の服装で特に注意すべきは、肌の露出とアクセサリーです。スカート丈は必ず膝が隠れる長さにし、夏でもノースリーブは避けましょう。ストッキングは30デニール以下の黒を着用し、素足はNGです。
アクセサリーは結婚指輪と一連の真珠のネックレスのみとし、二連以上のものや揺れるデザインは避けます。メイクもラメや濃い色を避けた「片化粧」を心がけ、全体の印象を控えめにまとめましょう。
お通夜に私服で参列してもいいですか？
本来であれば準喪服を着用するのが望ましいですが、仕事帰りなどで準備が間に合わない場合、地味な色のスーツやワンピースといった私服（平服）で参列しても問題ありません。訃報は突然のことが多いため、やむを得ない事情は考慮されます。
その際は、できる範囲で葬儀にふさわしい装いに近づける配慮が大切です。例えば、男性ならネクタイを黒無地のものに替え、女性なら派手なアクセサリーを外すといった対応をしましょう。
葬儀で履いてはいけない靴はありますか？
はい、葬儀の場にふさわしくない靴はいくつかあります。光沢の強いエナメル素材の靴や、スニーカー、サンダル、ブーツはカジュアルな印象を与えるためNGです。女性の場合、つま先が見えるオープントゥや高すぎるピンヒールも避けましょう。
男性は、ローファーや金具の飾りがついた靴も避けるのが無難です。男女ともに、光沢のない黒のシンプルなデザインの革靴やパンプスが基本となります。
急な訃報で喪服がない時はどうすればいい？
急な訃報で喪服が手元にない場合、必ずしも購入する必要はありません。手持ちのダークスーツや地味な色のワンピースで代用することができます。男性なら濃紺やチャコールグレーの無地スーツ、女性なら黒や紺のワンピースなどが該当します。
また、最近では即日対応してくれる喪服のレンタルサービスも充実しています。時間に少し余裕がある場合は、そうしたサービスを利用するのも賢い選択肢の一つです。
