大切なご家族が亡くなられた後の遺品整理は、精神的にも肉体的にも大きな負担が伴います。何から手をつければ良いのか、途方に暮れてしまう方も少なくありません。業者に依頼する方法もありますが、故人との思い出と向き合いながら自分のペースで進めたいという思いから、ご自身で遺品整理を行う方が増えています。
しかし、どのような道具を準備すれば良いか分からず、作業が思うように進まないことも多いです。この記事では、業者に頼らず自分で遺品整理を行うために必要な道具を、チェックリスト形式で詳しく解説します。準備の手順から揃えるべき道具まで、この記事を読めばすべて分かります。後悔のない遺品整理を進めるための第一歩として、ぜひお役立てください。
遺品整理を自分で行う手順|まず全体の流れを知ろう
遺品整理を自分で行うと決めても「一体何から始めればいいの?」と迷うのは当然です。無計画に手をつけると、時間ばかりがかかり精神的な負担も増してしまいます。まずは遺品整理全体の流れを把握することが、円滑な作業への近道です。大まかな手順は4つの段階に分けられます。この手順に沿って計画を立てれば、効率的に整理を進められるでしょう。一つひとつの段階を丁寧に行うことが、故人の大切な遺品と気持ちを整理することに繋がります。
手順1:遺言書の確認と親族間の合意形成
遺品整理を始める前に、最初に行うべき最も重要なことは遺言書の有無の確認です。遺言書には遺品の分配や処分に関する故人の意思が記されている場合があり、その内容が最優先されます。勝手に遺品を処分すると、後で相続問題に発展する可能性があるため、必ず探してください。
遺言書がない場合でも、親族間で遺品整理の進め方について事前にしっかり話し合うことが不可欠です。「誰が、いつ、どのように進めるのか」や「形見分けはどうするのか」といった点を全員で合意形成しておくことで、後の問題を未然に防ぎ、協力体制を築けます。
手順2:作業計画の立案と役割分担
遺品整理は想像以上に時間と労力がかかる作業です。特に、賃貸物件の場合は退去期限があるため、計画的な進行が求められます。まずは「いつまでに終わらせるか」という最終的な目標日を定めましょう。そこから逆算して、無理のない具体的な作業計画を立てることが大切です。
もし兄弟姉妹など協力してくれる親族がいる場合は、役割分担を決めると効率が格段に上がります。「貴重品を探す人」「衣類を仕分ける人」「ゴミをまとめる人」など、各自の得意なことを活かして分担すると、作業が円滑に進むでしょう。
手順3:作業に必要な道具の事前準備
作業計画が決まったら、いよいよ道具の準備に入ります。遺品整理の効率は、事前にどれだけしっかりと道具を準備できたかで大きく変わります。作業を始めてから「あれがない」と中断していては、時間も気力も削がれてしまいます。片付けを円滑に進め、身体的な負担を減らすためにも、この後で紹介する道具をあらかじめ揃えておきましょう。
特にマスクや軍手などの保護具は、安全に作業を行う上で欠かせません。ホコリや思わぬ怪我から身を守るためにも必ず用意してください。事前に万全の準備を整えることが、遺品整理を成功させる鍵となります。この記事のチェックリストを参考に、必要なものを揃えましょう。
手順4:遺品の仕分け・処分・清掃の実施
道具が揃ったら、実際の作業に入ります。主な作業は「仕分け」「処分」「清掃」の3つです。まずは全ての遺品を「必要なもの」「売却するもの」「処分するもの」に丁寧に仕分けます。この仕分け作業が遺品整理の中心であり、最も時間がかかるところです。
仕分けが終わったら、それぞれの方法で適切に処分を進めます。最後に部屋全体をきれいに清掃して完了となります。思い出の品を前にして、つらい気持ちになることもありますが、焦らず自分のペースで進めることが大切です。無理せず、休憩を挟みながら取り組みましょう。
【チェックリスト】遺品整理に必須の道具一覧
ここからは、自分で遺品整理を行う際に「これだけは絶対に必要」と言える必須の道具を、用途別にチェックリスト形式でご紹介します。作業を始めてから買いに走ることがないよう、事前にリストを確認し万全の状態で臨みましょう。これらの道具は、ホームセンターや100円ショップなどで手軽に揃えることができます。安全かつ効率的に作業を進めるための基本装備なので、しっかりと準備してください。
遺品を分ける・まとめるための道具
遺品を「残すもの」「売るもの」「捨てるもの」などに分ける作業では、ゴミ袋や段ボールが大量に必要になります。特にゴミ袋は、自治体によって分別の規則や指定袋が異なるため、事前に実家の市区町村のルールを確認しておくことが重要です。また、段ボールに何を入れたか分かるように、マジックペンは必ず用意しましょう。
サイズ違いの段ボールを複数用意しておくと、衣類や食器など品物に合わせて使い分けられ便利です。段ボールの中身をマジックで書いておけば、後から探す手間が省けます。新聞や雑誌などをまとめるための紐もあると、処分がスムーズに進みます。これらの道具は、仕分け作業の効率を大きく左右する基本的なものです。
- ゴミ袋:可燃、不燃、資源ゴミなど、自治体の分別に合わせて複数種類を用意。大きめのサイズが便利です。
- 段ボール:残すものや売るものを保管・運搬するために使用。大小さまざまなサイズがあると重宝します。
- ガムテープ(布テープ):段ボールの梱包に使います。手で切れるタイプが作業しやすくおすすめです。
- 油性マジックペン:段ボールの中身を記載するために必須です。「衣類」「食器」など、分かりやすく書いておきましょう。
- ひも・ロープ:雑誌や新聞紙を束ねたり、段ボールをまとめたりする際に使います。
安全な作業のための服装・保護具
遺品整理では、ホコリやカビ、ガラスの破片などで怪我をする危険性も潜んでいます。自分の体を守るため、以下の保護具は必ず用意してください。特に長年空き家だった部屋は、想像以上にハウスダストが舞うため、マスクとゴーグルは必須と考えましょう。健康を損なっては元も子もありません。
服装は、肌の露出が少ない長袖・長ズボンが基本です。また、足元もガラス片などを踏む危険があるため、底が厚めの室内履きを用意すると安心です。軍手は滑り止め付きのものを選ぶと、家具の移動など重いものを運ぶ際に力が入りやすく、作業がはかどります。安全対策を万全にすることが、円滑な作業に繋がります。
- マスク:ホコリやカビの吸い込みを防ぎます。使い捨ての不織布マスクを複数枚用意しておくと安心です。
- 軍手・ゴム手袋:手の汚れや怪我を防ぎます。力仕事には滑り止め付きの軍手、水回りにはゴム手袋と使い分けましょう。
- 汚れてもよい服装:長袖・長ズボンが基本です。肌の露出を減らし、汚れや怪我から身を守ります。
- スリッパ・室内履き:床に落ちている画鋲などで足を怪我しないように、底が厚めのものを用意しましょう。
- ゴーグル(保護メガネ):ホコリやゴミが目に入るのを防ぎます。普段メガネをかけない方は特に用意すると安心です。
部屋をきれいにするための清掃道具
遺品の整理が終わった後の清掃は、部屋を新たな状態にするための大切な仕上げです。長年の汚れが溜まっていることも多いため、基本的な清掃道具は一式揃えておきましょう。場所に合わせて複数の洗剤を用意すると、効率的に汚れを落とせます。雑巾も多めに準備しておくと、汚れの度合いに応じて使い分けができて便利です。
故人が大切に住んでいた家に感謝の気持ちを込めて、隅々まできれいにすると、ご自身の気持ちの整理にも繋がります。掃除機をかける前に、ほうきとちりとりで大まかなゴミを取り除いておくと、掃除機が詰まるのを防げます。最後の清掃を丁寧に行うことで、気持ちよく遺品整理を締めくくることができます。
- 雑巾・タオル:拭き掃除用に複数枚あると便利です。使い古したタオルなどでも構いません。
- バケツ:雑巾をすすいだり、洗剤を薄めたりするのに使います。
- 各種洗剤:部屋用の万能洗剤、水回りのカビ取り剤など、場所に合わせて用意すると効率的です。
- ほうき・ちりとり:掃除機をかける前の大まかなゴミを集めるのに役立ちます。
- 掃除機:部屋全体のホコリやゴミを吸い取る最終仕上げに必要です。
作業を楽にする工具・運搬具
必須ではありませんが、作業の負担を大幅に軽減してくれるのが工具や運搬具です。特に、大型の家具や家電を処分する場合は、これらの道具があるかないかで作業効率が大きく変わります。タンスやベッドを解体して運び出す際には、ドライバーセットが欠かせません。カッターやハサミも、梱包を解いたり紐を切ったりと頻繁に使う場面があります。
また、押し入れの天袋など高所の荷物を下ろす際には、脚立があると安全です。最も役立つのが台車で、重い遺品をまとめて運ぶ際の体への負担を劇的に減らしてくれます。解体や運び出しが必要になりそうであれば、事前に準備しておくことを強くおすすめします。
- ドライバーセット:棚やベッドなどの家具を解体する際に必要です。プラスとマイナスがセットになったものが便利です。
- カッターナイフ・ハサミ:段ボールを開封したり、紐を切ったりと、さまざまな場面で役立ちます。
- 脚立・踏み台:押し入れの天袋など、高所の荷物を下ろす際に安全に作業できます。
- 台車:重い家具や家電、大量のゴミ袋などを運ぶ際に非常に便利です。部屋からゴミ捨て場まで距離がある場合に重宝します。
【効率UP】遺品整理の負担を軽くする便利な道具
必須ではありませんが、準備しておくと遺品整理の作業効率が格段に上がり、心身の負担を軽くしてくれる便利な道具もあります。特に遺品の量が多い場合や、故人との思い出の品と丁寧に向き合いたい場合には、これらの道具が大きな助けとなるでしょう。「もっと楽にできたのに」と後悔しないために、ご自身の状況に合わせて必要なものを準備することをおすすめします。ここでは、特に役立つ便利な道具を目的別にご紹介します。
貴重品・重要書類の管理に役立つ道具
遺品整理では、相続手続きに必要な重要書類や、うっかり捨ててはいけない貴重品を確実に見つけ出し、保管することが非常に大切です。作業の混乱の中で紛失したり、誤って処分したりする問題を防ぐために、専用の保管道具が役立ちます。書類はクリアファイル、小物類はジッパー付きの袋などに入れると管理しやすくなります。
見つけたらすぐに専用のファイルやケースに入れる、というルールを決めておくと安心です。付箋やラベルシールで中身をメモしておくと、後から確認する際に一目で分かります。これらの道具を使い、大切なものを他の遺品と混ざらないように、厳重に管理しましょう。
- クリアファイル・ファイルボックス:年金手帳や保険証券、契約書などの書類を整理・保管するのに便利です。
- ジッパー付きポリ袋:通帳や印鑑、現金、貴金属などをまとめて保管するのに役立ちます。中身が見えるので管理しやすくなります。
- 付箋・ラベルシール:書類やファイルに内容をメモして貼っておくと、後から確認する際に一目で分かり非常に便利です。
思い出の品の整理に役立つ道具
故人が大切にしていた写真や手紙などは、金銭的な価値はなくても、家族にとってはかけがえのない宝物です。なかなか捨てられない、でも全てを保管するのは難しい、といった場合に役立つのが以下の道具です。思い出の品は、無理に処分を決めずに「思い出ボックス」のような箱に一時保管し、気持ちが落ち着いてから整理するのも一つの方法です。
特に写真はかさばるため、スマートフォンやスキャナーでデータ化して保存すれば、場所を取らずに思い出を残せます。データ化することで、親族間で共有しやすくなるという利点もあります。思い出と向き合うつらい作業を、少しでも前向きに進めるための工夫として取り入れてみてください。
- スマートフォン・スキャナー:写真や手紙などをデータ化して保存すれば、場所を取らずに思い出を残せます。
- アルバム・収納ボックス:厳選した写真や特に大切な思い出の品を、きれいに保管するためのものです。
- 緩衝材(プチプチ):壊れやすい置物や食器などを、大切に保管・梱包するために使います。
大型の遺品や不用品の運搬に役立つ道具
タンスや冷蔵庫といった大型家具・家電の運搬は、遺品整理の中でも特に体力を消耗する作業です。無理に運ぼうとすると、ご自身の怪我だけでなく、家の壁や床を傷つけてしまう危険もあります。賃貸物件の場合は、修繕費用を請求される可能性もあるため、特に注意が必要です。
安全かつ円滑に運び出すために、養生テープやシートで家の中を保護しましょう。また、家具の下に毛布などを敷いて滑らせると、床を傷つけずに楽に移動させることができます。これらの道具を活用し、安全を最優先で作業を進めてください。
- 養生テープ・養生シート:家具を運び出す際に、壁や床などを傷つけないように保護します。賃貸物件では特に重要です。
- 結束バンド・ロープ:解体した家具の部品をまとめたり、複数の荷物を固定したりするのに役立ちます。
- 滑り止めシート・毛布:家具の下に敷いて滑らせることで、床を傷つけずに楽に移動させることができます。
【購入場所別】遺品整理の道具はどこで揃える?費用も解説
遺品整理に必要な道具を揃えるにあたり「どこで買うのが一番良いの?」と迷う方もいるでしょう。購入場所によって、品揃えや価格、利便性が異なります。ここでは代表的な購入場所として「ホームセンター」「100円ショップ」「ネット通販」の3つを挙げ、それぞれの長所と短所を解説します。全ての道具を一つの場所で揃えるのではなく、それぞれの特徴を活かして賢く使い分けるのが、費用を抑えつつ効率的に準備を進めるコツです。
品揃えが豊富で一度に揃う「ホームセンター」
遺品整理に必要な道具を一度の買い物でほとんど揃えたいなら、ホームセンターが最もおすすめです。段ボールやゴミ袋といった基本的なものから、工具、台車、業務用の洗剤まで、専門的な道具も含めて品揃えが非常に豊富です。現物を見て、サイズや強度を確かめながら選べるのも大きな利点でしょう。
ただし、100円ショップなどに比べると価格は高めになる傾向があります。全ての道具を揃えると、5,000円から15,000円程度が目安となります。多少費用はかかっても、一度で確実に必要なものを揃えたい方に向いています。
費用を抑えたい場合に最適な「100円ショップ」
とにかく費用を抑えたい場合に大活躍するのが100円ショップです。ゴミ袋、雑巾、ガムテープ、マジックペンといった消耗品は、品質的にも十分で、非常に安価に手に入ります。分別に使うカゴやケースなども豊富なので、仕分け作業にも便利に活用できます。
一方で、工具や軍手などは耐久性が低い場合があるため、本格的な作業には不向きなこともあります。また、段ボールや台車といった大型のものは扱っていないことが多いです。消耗品は100円ショップ、専門的な道具はホームセンターと組み合わせて利用するのが賢い使い方です。
かさばる物を自宅に届けてくれる「ネット通販」
段ボールや大量のゴミ袋、重い洗剤など、かさばる物や重い物を購入する際に非常に便利なのがネット通販です。店舗へ買いに行く手間や時間を節約でき、注文した商品を自宅まで届けてくれるのが最大の利点です。様々な商品を比較して、最も安いものを選べるのも魅力です。
ただし、実際に商品を手に取って確認できない点や、注文から到着までに数日かかるという短所もあります。遺品整理の作業日程が決まったら、早めに計画的に注文しておくと良いでしょう。買い物の負担を減らしたい方におすすめです。
後悔しない遺品整理の手順①|捨ててはいけないものを確認する
道具を揃え、いざ片付けを始めようという気持ちになるかもしれませんが、その前に必ずすべきことがあります。それは、絶対に捨ててはいけないものを探し出し、確保することです。遺品の中には、故人や遺族の権利、財産に関わる非常に重要なものが含まれています。これらを誤って処分すると、後の相続手続きに支障をきたしたり、親族間の大きな問題に発展したりする可能性があります。まずは部屋全体を見渡し、「捨てる」のではなく「探す」ことから始めましょう。
相続手続きに不可欠な重要書類
遺品の中でも最優先で確保すべきなのが、相続手続きや各種名義変更に必要となる重要書類です。これらは再発行が難しいものも多く、紛失すると手続きが大幅に遅れてしまいます。銀行の貸金庫や、タンスの引き出し、仏壇の周りなど、故人が大切に保管しそうな場所を重点的に探してください。
特に遺言書や不動産の権利証、実印などは極めて重要です。見つけ次第、一つのファイルボックスなどにまとめて厳重に保管しましょう。借金の契約書などマイナスの財産に関する書類も、相続を判断する上で大切な情報なので、必ず確保してください。
- 遺言書、エンディングノート
- 不動産の権利証(登記識別情報通知)
- 預金通帳、キャッシュカード、印鑑(特に実印)
- 有価証券(株券など)、保険証券
- 年金手帳、健康保険証、パスポート
- 公共料金や税金の領収書・請求書
- 借金の契約書や督促状
現金・有価証券・貴金属などの財産
へそくりとしてタンスの奥にしまわれた現金や、本の間にはさまれた株券など、故人が大切にしていた貴重品が見つかることも少なくありません。これらはすべて相続財産の一部です。勝手に自分のものにしたり、一部の相続人だけで分配したりすると、後で深刻な問題になりかねません。
見つけた場合は、誰が何を発見したかを明確に記録し、必ず相続人全員で情報を共有するようにしましょう。透明性を保つことが、親族間の信頼関係を維持し、円満な相続を進めるために非常に重要です。
故人や家族の思い出の品(写真・手紙)
法的・金銭的な価値はありませんが、ご遺族にとって何物にも代えがたいのが、故人との思い出が詰まった品々です。写真、アルバム、手紙、日記などは、一度捨ててしまうと二度と取り戻すことができません。片付けの勢いで安易に処分すると、後で「どうして捨ててしまったんだろう」と深く後悔する可能性があります。
すぐに判断できないものは、無理に捨てようとせず「思い出ボックス」のような箱を用意して一時的に保管しましょう。そして、気持ちが落ち着いてから、親族と相談しながらゆっくりと整理することをおすすめします。時間をかけることが大切です。
デジタル遺品(パソコン・スマホのデータ)
現代において見過ごせないのが、パソコンやスマートフォンの中に残された「デジタル遺品」です。本体そのものだけでなく、内部のデータも重要な遺品となります。中には、ネット銀行やネット証券の口座情報、契約中の定額サービスなど、財産に関わる重要な情報が含まれていることもあります。
パスワードが不明だとデータにアクセスできなくなるため、むやみに初期化したり電源を入れたりしないように注意が必要です。故人がパスワードを記したメモなどを残していないか探しましょう。対処が難しい場合は、デジタル遺品の調査を専門に行う業者に相談することも検討してください。
後悔しない遺品整理の手順②|「残す・売る・捨てる」の仕分け方
捨ててはいけないものの確保が終わったら、いよいよ本格的な仕分け作業に入ります。全ての遺品を、「①形見として残すもの」「②売却・リサイクルするもの」「③寄付するもの」「④処分するもの」の4つに分類していくのが基本です。この仕分け作業が、遺品整理の中で最も時間と精神力を使う段階です。感情に流されて作業が止まらないよう、事前にルールを決めて効率的に進めましょう。
遺品整理の仕分けを円滑に進めるコツ
膨大な量の遺品を前にすると、どこから手をつけていいか分からなくなりがちです。作業を円滑に進めるには、いくつかのコツがあります。まず「この部屋を今日中に終わらせる」など、作業する場所や時間を区切ることです。小さな目標を達成していくことが、最後までやり遂げる力になります。
そして、判断に迷ったものは無理に決めず、「保留ボックス」に入れて後で考えるようにしましょう。焦りは禁物です。一人で抱え込まず、親族と相談しながら進めることが、精神的な負担を軽くする鍵となります。
【種類別】衣類や家具など迷いやすい遺品の整理法
仕分け作業の中でも、特に衣類や家具、写真などは判断に迷いやすいものです。これらは故人の生活に密着していた分、思い出も多く、処分に踏み切れないことが多いでしょう。しかし、全てを保管し続けるのは現実的ではありません。どこかで区切りをつけるための考え方が必要になります。
ここでは、品目ごとの一般的な整理方法の考え方をご紹介します。あくまで一例なので、ご自身の家庭の状況や気持ちに合わせて、柔軟に取り入れてみてください。大切なのは、ご遺族が納得できる形で整理を進めることです。
衣類・布団
衣類や布団はかさばるため、保管場所も限られます。まだ新しく状態の良い服は、親族で形見分けをしたり、リサイクルショップに売却したりする方法があります。NPO団体へ寄付するのも良いでしょう。一方で、汚れや傷みが激しいもの、下着類などは、故人に感謝を伝えてから処分します。処分の際は、自治体の規則に従って分別してください。
写真・アルバム
故人の写真やアルバムは、最も処分に困る遺品の一つです。すべてを残すのが難しい場合は、家族や親族が写っている写真を中心に残し、アルバム1冊にまとめるのがおすすめです。また、スキャナーなどでデータ化すれば、場所を取らずに全ての思い出を保存できます。どうしても処分する場合は、白い紙に包み塩でお清めをすると、気持ちの整理がつきやすいと言われています。
家具・家電
大型の家具や家電は、処分の手間がかかります。まだ使える状態の良いものは、リサイクルショップや専門の買取業者に依頼しましょう。出張査定を利用すれば、運び出す手間も省けます。売却が難しいものは、自治体の粗大ゴミ収集サービスを利用して処分します。ただし、テレビや冷蔵庫などは家電リサイクル法の対象品目であり、指定の方法で処分する必要があるため注意してください。
家電リサイクル法とは
一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン、テレビ(ブラウン管、液晶式、有機EL式、プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/
仏壇・神棚
仏壇や神棚は、単なる「物」として処分することはできません。処分する前には必ず「魂抜き(閉眼供養・御霊抜き)」の儀式が必要です。菩提寺の住職や神社の神職に依頼し、供養を行ってもらいましょう。その後、仏壇・神棚の専門業者に引き取ってもらうか、お寺や神社でお焚き上げをしてもらうのが一般的な処分方法です。
後悔しない遺品整理の手順③|仕分けた遺品の処分方法
仕分け作業が終わると、大量の「売るもの」「寄付するもの」「処分するもの」が残ります。これらを適切に手放していくのが、遺品整理の最終段階です。単にゴミとして捨てるだけでなく、様々な処分方法があります。価値のあるものを現金化したり、誰かの役に立つ形にしたりすることで、故人もきっと喜んでくれるはずです。ここでは、代表的な4つの処分方法をご紹介します。
リサイクルショップやフリマアプリで売却する
まだ使える家具や家電、ブランド品、骨董品などは、リサイクルショップや買取専門店に売却できる可能性があります。複数の店舗に見積もりを依頼したり、出張買取サービスを利用したりすると良いでしょう。少しでも高く売るためには、手間を惜しまないことが大切です。
また、ご自身でフリマアプリやネットオークションに出品すると、より高値で売れることもあります。売却で得たお金は、他の遺品の処分費用や、親族での食事会の費用などに充てることもできます。故人の遺品を次の方へ繋ぐ、意味のある方法です。
NPO団体などに寄付する
「売るほどではないけれど、捨てるのは忍びない」という衣類や食器、文房具などは、寄付という選択肢があります。国内外の支援を必要としている人々を支えるNPO団体などが、物資の寄付を広く受け付けています。故人が大切にしていたものが、また誰かの役に立つというのは、遺族にとっても嬉しいことです。
ただし、団体によって受け入れている品目が異なるため、事前にホームページなどで確認してから送るようにしましょう。送料が自己負担になる場合も多いので、その点も合わせて確認が必要です。社会貢献にも繋がる、意義深い処分方法と言えます。
不用品回収業者に依頼する
「分別が面倒」「処分するものが多すぎる」といった場合は、不用品回収業者に依頼するのが便利です。電話一本で自宅まで来てもらい、分別から運び出しまで全て任せることができます。特に大型家具や家電の処分に困っている場合には、非常に頼りになる存在です。
ただし、便利な分だけ費用がかかります。また、中には法外な料金を請求する悪質な業者もいるため注意が必要です。必ず複数の業者から見積もりを取り、料金体系や許可の有無をしっかり確認してから依頼しましょう。
自治体の規則に従ってゴミとして処分する
売却も寄付も難しいものの最終的な処分方法は、自治体のゴミ収集に出すことです。可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ、粗大ゴミなど、お住まいの地域の分別規則を必ず確認し、厳守してください。規則を守らないと収集してもらえず、近隣に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
特に粗大ゴミは、事前の申し込みや手数料の支払いが必要な場合がほとんどです。自治体のホームページや窓口で手順を確認しましょう。面倒だからといって、不法投棄は絶対にしてはいけません。故人のためにも、最後まで責任を持って適切に処分しましょう。
注意|自分で遺品整理をするのが難しい場合とは?
ここまで自分で遺品整理を行う方法や道具について解説してきましたが、故人との別れで心身ともに疲弊している中、無理は禁物です。状況によっては、専門の遺品整理業者に依頼する方が、結果的にご遺族の負担を大きく軽減できる場合も少なくありません。無理に自分でやろうとして体調を崩したり、大切な思い出の品を雑に扱ったりしては本末転倒です。以下のような場合は、専門業者への依頼を検討しましょう。
遺品の量が多すぎる・時間が確保できない場合
長年暮らした家には、想像以上に多くの物が残されています。いわゆる「ゴミ屋敷」状態でなくても、一軒家まるごとの片付けとなると、その作業量は膨大です。仕事などで忙しく、週末しか時間が取れない場合、作業が何ヶ月もかかり心身ともに疲弊してしまうこともあります。
遺品の量や確保できる時間を見積もった上で、自分たちだけでは難しいと感じたら、早めにプロに相談するのが賢明な判断です。専門業者は短期間で効率的に作業を進めてくれます。
実家が遠方にあり、頻繁に通えない場合
遺品整理を行うべき実家が、現在お住まいの場所から遠く離れている場合も、自分たちだけで進めるのが困難な代表例です。片付けのために何度も往復すると、交通費や宿泊費がかさむだけでなく、移動だけで疲れてしまいます。
その結果、作業が思うように進まないことも多いです。特に賃貸物件で退去期限が迫っている場合などは、専門業者に依頼する方が、結果的に時間的・金銭的な負担を抑えられる可能性があります。
事件・事故などで特殊清掃が必要な場合
故人が孤独死などで亡くなられ、発見が遅れてしまったお部屋は、ご遺族だけで片付けることは非常に困難です。血液や体液による汚損、害虫の発生、強烈な臭いなどが残る現場は、精神的な衝撃が大きいだけでなく、感染症などの健康被害の危険性も伴います。
このような場合は、絶対に無理をせず、専門的な知識と技術を持つ「特殊清掃」の専門業者に必ず依頼してください。通常の清掃とは全く異なる、特別な処置が必要となります。ご自身の心と体の安全を第一に考えて行動しましょう。
まとめ:道具を揃えて、後悔のない遺品整理を始めよう

今回は、業者に頼らず自分で遺品整理を行うために必要な道具から、具体的な手順、注意点までを詳しく解説しました。遺品整理は、単なる「家の片付け」ではありません。故人が生きてきた証と向き合い、ご自身の気持ちにも区切りをつけるための大切な時間です。
この記事で紹介したチェックリストを参考に、まずは必要な道具を揃えることから始めてみてください。万全の準備を整えることが、円滑で後悔のない遺品整理への第一歩となります。大変な作業ではありますが、焦らず、ご自身のペースで、故人を偲びながら進めていきましょう。この記事が、あなたの新たな一歩を少しでも後押しできれば幸いです。
遺品整理を自分で行う際のよくある質問
最後に、遺品整理を自分で行う際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。作業中に疑問や不安が出てきた際の参考にしてください。
Q. 遺品整理はいつから始めるべきですか?
A. 法律で定められた期限はありませんが、一般的には四十九日や一周忌といった法要のタイミングで始める方が多いです。また、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)も一つの目安になります。ただし、賃貸物件の場合は退去期限があるため、早めの対応が必要です。
何よりも大切なのはご遺族の気持ちの整理です。精神的に落ち着いて、心の準備ができてから始めるのが一番です。焦る必要はありませんので、ご自身のペースを大切にしてください。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
Q. 遺品整理で捨ててはいけないものは何ですか?
A. 最優先で確保すべきなのは、相続に関する重要書類(遺言書、権利証、通帳など)です。次に現金・貴金属などの貴重品、故人や家族の思い出の品(写真、手紙など)、そしてデジタル遺品(PC・スマホのデータ)が挙げられます。
これらを誤って処分すると、法的な問題や取り返しのつかない後悔に繋がる可能性があります。仕分け作業の最初に、まずこれらのものを探し出すことから始めてください。見つけたら、他のものと混ざらないように別の箱に保管しましょう。
Q. 故人の衣類はどのように整理・処分すれば良いですか?
A. まずは「形見として残すもの」「まだ着られるもの」「処分するもの」に分けましょう。まだ着られる服は、親族で形見分けをしたり、リサイクルショップに売ったり、NPO団体に寄付したりする方法があります。故人の愛用品を誰かがまた使ってくれるのは、良い供養にもなります。
傷みが激しいものや下着類は、故人に感謝を伝えてから、自治体の規則に従って処分します。無理にすぐ捨てる必要はありません。気持ちの整理がつくまで保管しておいても問題ありませんので、ご自身の気持ちを優先してください。
Q. 遺品整理で出た家具はどのように処分すれば良いですか?
A. 処分方法は主に3つあります。①買取業者やリサイクルショップに売却する、②自治体の粗大ゴミ収集を利用する、③不用品回収業者に依頼する、のいずれかです。まだ使えるものは売却を検討し、使えないものは自治体の規則で処分するのが基本です。
ただし、テレビや冷蔵庫、洗濯機などは家電リサイクル法に基づいた処分が必要です。自治体の粗大ゴミとしては出せないのでご注意ください。処分の方法が分からない場合は、自治体の窓口や家電量販店に問い合わせてみましょう。
Q. 遺品整理で特に困ることは何ですか?
A. 多くの方が困るのは、「遺品の量が多すぎて終わらない」「思い出の品を捨てる判断ができない」「大型家具の運び出しが大変」といった点です。また、作業に伴う精神的なつらさも大きな課題となります。故人を思い出し、作業が手につかなくなることも少なくありません。
一人で抱え込まず、親族と協力し、時には専門業者の力を借りることも重要です。無理をせず、周囲に助けを求める勇気も大切です。業者に依頼する場合は、料金トラブルなどを避けるため、慎重に選びましょう。