はじめに：高齢の親のインターホン、「聞こえない」は放置すると危険も
離れて暮らす高齢の親の家を訪ねたとき、インターホンを鳴らしてもなかなか出てこなくて不安になった経験はありませんか？あるいは、同居している親が宅配便や回覧板の来客に気づかないことが増えてきた、と感じている方もいるかもしれません。
加齢とともに耳が遠くなるのは自然なことですが、インターホンの音が聞こえない問題を「年のせいだから仕方ない」と放置するのは危険です。大切な来客を逃すだけでなく、緊急時の安否確認が遅れたり、不審者に対応できなかったりと、防犯面でのリスクにもつながりかねません。
この記事では、高齢の親がインターホンの音に気づきにくくなる原因から、具体的な解決策、さらには住まいの状況に合わせた注意点まで詳しく解説します。ご家族みんなが安心して暮らせる環境づくりのために、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ？高齢になるとインターホンの音が聞こえにくくなる3つの原因
まず、なぜ高齢になるとインターホンの音が聞こえにくくなるのでしょうか。原因は一つだけでなく、複数の要因が考えられます。主な3つの原因を知ることで、ご家庭に合った対策が見つけやすくなります。
原因1：加齢による聴力の低下
最も大きな原因は、加齢による聴力の低下です。単に音が小さく聞こえるだけでなく、インターホンの「キンコーン」というような甲高い音が特に聞き取りにくくなる傾向があります。また、特定の音が急に大きく不快に響く「リクルートメント現象」という症状も、高齢者に見られる特徴です。
このため、本人は「音量を上げるとうるさく感じる」のに、肝心の呼び出し音は聞こえない、というジレンマに陥ることがあります。まずは、ご本人の聞こえ方の特性を理解することが大切です。
原因2：家の構造やライフスタイルの変化
若い頃とは生活の中心となる部屋が変わることも原因の一つです。日中、玄関から離れたリビングや寝室で過ごす時間が増えたり、テレビの音に集中していたりすると、インターホンの呼び出し音が耳に届きにくくなります。
特に、家が広い場合や2階建ての住宅では、「2階の部屋にいると全く聞こえない」というケースも少なくありません。ご本人の生活動線を考え、どこにいても来客に気づけるような工夫が必要になります。
原因3：インターホン自体の経年劣化や故障
意外と見落としがちなのが、インターホン本体の問題です。インターホンの寿命は、一般的に設置から約10年～15年と言われています。長く使用していると、内蔵スピーカーの劣化や配線の接触不良などで、音が小さくなったり、鳴ったり鳴らなかったりすることがあります。
新しい対策を考える前に、まずはインターホン自体が正常に作動しているか、故障の可能性はないかを確認してみることも重要です。場合によっては、修理や本体の交換が必要になることもあります。
【悩み解決】高齢者のインターホンが聞こえないときの対策5選
それでは、具体的にどのような対策があるのでしょうか。ここでは、ご家庭の状況や悩みに合わせて選べる5つの効果的な解決策をご紹介します。工事不要で手軽に導入できる方法もありますので、ぜひ参考にしてください。
対策1：【光で知らせる】フラッシュやランプ付きインターホン
音に頼らず、来客を「光」で知らせる方法です。インターホンが鳴ると同時に、カメラ付き親機のランプや、増設したフラッシュライトがピカピカと強く点滅します。聴力に不安がある方や、補聴器を外している時間が多い方に最もおすすめの対策です。
パナソニックの「光るチャイム」のように、後付けで設置できるランプもあります。テレビの近くなど、普段よく過ごす場所に設置すれば、音を聞き逃しても光で確実に気づくことができます。
対策2：【音で知らせる】増設スピーカーや高音量子機
「とにかく呼び出し音を大きくしたい」「別の部屋でも聞こえるようにしたい」という場合には、スピーカー（増設子機）を増設する方法が有効です。リビングや寝室など、親機から離れた場所にも呼び出し音を鳴らすことができます。
製品によっては、単純に音量を上げるだけでなく、高齢者でも聞き取りやすい音質に調整できる機能を備えたインターホンもあります。親機の交換が必要な場合もありますが、音の聞こえ方が大きく改善される可能性があります。
対策3：【手元で気づく】ワイヤレス子機や振動式チャイム
持ち運びができるワイヤレス子機があれば、家の中のどこにいても手元で来客応対ができて非常に便利です。キッチンで家事をしているときや、2階の部屋で休んでいるときでも、わざわざ親機のある場所まで移動する必要がありません。
さらに、製品によっては音だけでなく振動で呼び出しを知らせる機能もあります。就寝時に枕元に置いておけば、補聴器を外していても来客や家族の呼びかけに気づくことができ、安心です。
対策4：【スマホで来客確認】スマホ連動型インターホン
最新の対策として注目されているのが、スマートフォンと連動するタイプのインターホンです。来客があると、お手持ちのスマホに通知が届き、映像を確認しながら応答できます。家にいる親御さんはもちろん、離れて暮らすご家族のスマホでも来客対応ができるのが最大のメリットです。
「親がちゃんと応答できるか心配」「日中の安否確認も兼ねたい」というご家族にとって、これ以上ない安心材料となるでしょう。導入にはWi-Fi環境などが必要になります。
対策5：【工事不要】ワイヤレスチャイムを今の玄関チャイムに追加
「インターホンの交換は大事で大変そう」「賃貸だから勝手に工事できない」という方におすすめなのが、工事不要で設置できるワイヤレスチャイムです。玄関の押しボタンの近くに送信機を、室内のよくいる場所に受信機を置くだけで利用できます。
受信機はコンセントに挿すタイプや電池式など様々で、複数台設置することも可能です。現在のインターホンはそのままに、聞こえやすさだけを補助できる手軽な解決策です。
【住まい別】マンション・賃貸でインターホン対策をするときの注意点
いざ対策をしようと思っても、お住まいが持ち家か、マンションか、賃貸かによって注意すべき点が異なります。後々のトラブルを避けるためにも、必ず事前に確認しておきましょう。
持ち家の場合：比較的自由に選べるが配線工事の確認を
持ち家（戸建て）の場合は、基本的にどのメーカーのどんなインターホンでも自由に選んで設置することができます。ただし、注意したいのが電源のタイプです。乾電池式やコンセントから電源を取る「電源コード式」はご自身で設置可能ですが、壁内の配線に直接つなぐ「電源直結式」の取り付けや交換には、電気工事士の資格が必要です。
DIYで交換しようと考えている方は、必ず現在のインターホンの電源タイプを確認してから製品を選びましょう。
マンション（集合住宅）の場合：管理組合への確認が必須
マンションのインターホンは、各住戸の玄関子機がエントランスのオートロックや火災報知器、ガス漏れ警報器などと連動している「集合住宅システム」の一部であることがほとんどです。そのため、個人の判断で勝手に交換することは絶対にできません。
故障した場合でも、まずは管理組合や管理会社に連絡し、指定の業者や交換可能な機種を確認する必要があります。光るチャイムの増設など、既存のシステムに影響を与えない範囲での対策を検討しましょう。
賃貸物件の場合：大家さん・管理会社への相談が第一歩
賃貸アパートやマンションの場合、インターホンは大家さんの所有物（設備）です。そのため、故障や交換、機能の追加など、何かしらの変更を加えたい場合は、必ず事前に大家さんや管理会社に相談し、許可を得る必要があります。
許可なく交換や改造を行うと、退去時に原状回復費用を請求される可能性があります。許可が得られない場合は、前述した「工事不要のワイヤレスチャイム」の追加など、壁に傷をつけない方法での対策を検討するのが賢明です。
高齢者向けインターホン選びで失敗しない3つのポイント
様々な対策がある中で、ご自身の親に最適なインターホンを選ぶにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、購入前にチェックすべき3つのポイントを解説します。
ポイント1：操作はシンプルか？画面の見やすさ・ボタンの分かりやすさ
多機能な製品も魅力的ですが、実際に使う高齢の親御さんにとって、操作が複雑では意味がありません。「通話」や「解錠」といった基本的なボタンが大きく、分かりやすく配置されているかを第一に確認しましょう。
また、カメラ付きのモニターを選ぶ際は、画面が大きく、相手の顔がはっきりと見えるかどうかも重要なポイントです。誰でも直感的に使えるシンプルな設計の製品が、結果的に最も長く安心して使えます。
ポイント2：通知方法は十分か？光・音量・スマホ通知などをチェック
「聞こえない」という悩みを解決するために、どのような通知方法が必要かを改めて整理しましょう。聴力がかなり低下しているなら光での通知は必須かもしれません。日中は補聴器をしているなら、聞き取りやすい大きな音量が出せるモデルが良いでしょう。
ご家族が安否確認もしたいなら、スマホ通知機能は譲れません。親御さんの状態やライフスタイル、ご家族の希望に合わせて、必要な機能を備えた製品を選ぶことが失敗しないコツです。
ポイント3：設置は簡単か？工事の有無と費用の目安
製品が決まったら、設置方法と費用の確認も忘れてはいけません。ワイヤレスチャイムのようにご自身で簡単に設置できるものから、電気工事士による専門的な工事が必要なものまで様々です。
業者に依頼する場合、本体価格に加えて数万円の工事費用がかかるのが一般的です。「思ったより費用が高くついた」と後悔しないためにも、購入前に複数の業者から見積もりを取るなど、全体の費用感を把握しておきましょう。
まとめ：親の「聞こえない」不安を解消し、家族みんなの安心へ繋げよう
今回は、高齢の親御さんの「インターホンが聞こえない」という問題について、原因から具体的な対策までを詳しく解説しました。
この問題の解決策は一つではありません。光や音、スマホ連動など、様々な機能を持つ製品が登場しています。大切なのは、ご本人の体の状態やライフスタイル、そしてお住まいの環境を総合的に考えて、最適な方法を選ぶことです。
インターホンの「聞こえない」不安が解消されれば、ご本人はもちろん、離れて暮らすご家族の安心にも繋がります。この記事が、ご家族で話し合い、より良い環境づくりのための第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
高齢者のインターホンに関するよくある質問
最後に、高齢者のインターホンに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
賃貸やマンションでインターホンが聞こえない原因は何ですか？
お部屋の親機で音量が最小・消音になっている、インターホン本体の経年劣化（寿命は約10～15年）などが考えられます。マンション共用部の問題の可能性もあるため、まずは管理会社や大家さんに連絡し、点検を依頼するのが最も確実です。ご自身の判断で業者を呼ぶ前に、必ず相談しましょう。
玄関チャイムが鳴らないのは故障？寿命はどれくらい？
突然鳴らなくなった場合は故障の可能性が高いです。インターホンの寿命は一般的に10年～15年のため、長年使用していれば経年劣化が考えられます。電池式の場合は電池切れも確認しましょう。それでも直らない場合は交換の検討が必要です。お住まいが持ち家か賃貸かなど、状況に合わせた手順で進めましょう。
誰もいないのにインターホンが鳴るのはなぜですか？
経年劣化による押しボタンや配線の不具合、風雨や虫などによる配線のショート、近隣の電波との混線（ワイヤレス式の場合）などが原因として考えられます。誤作動が頻繁に起こる場合は、漏電の危険性も否定できないため、専門業者に点検を依頼することをおすすめします。
インターホンの音を2階など別の部屋に届ける方法はありますか？
はい、可能です。お使いの機種に対応した「増設子機（スピーカー）」を2階に設置するのが一般的です。配線工事が不要なワイヤレスタイプが手軽でおすすめです。また、既存のチャイムとは別に、工事不要の「ワイヤレスチャイム」を追加で設置し、受信機を2階に置くのも簡単で効果的な方法です。
工事不要で使えるワイヤレスチャイムとはどんなものですか？
送信機（押しボタン）と受信機（スピーカー）がセットになった、配線工事が不要な呼び出し装置です。送信機を玄関に貼り付け、受信機を室内の好きな場所に置くだけで使えます。既存の設備に影響を与えないため、特に賃貸物件にお住まいの方におすすめです。光や様々なメロディで知らせる多機能な製品もあります。
インターホンの音量を大きくすることはできますか？
ほとんどのインターホンには、親機の側面や設定画面で音量を調整する機能があります。まずは取扱説明書をご確認ください。音量を最大にしても小さい場合は、経年劣化の可能性も考えられます。その際は、増設スピーカーの設置や、より大きな音が出せる新しい機種への交換を検討しましょう。
耳が聞こえにくい高齢者でも気づける機能はありますか？
はい、ございます。音に頼らず、視覚や振動で来客を知らせる機能が非常に有効です。呼び出しと連動して強い光を放つ「フラッシュライト」や、持ち運びできる子機の「振動機能」などです。これらは聴覚に頼らずに来客を認識できるため、補聴器を外している就寝時なども安心です。同様の機能は電話の着信に応用できる製品もあります。