最近、新聞の文字が読みづらくなったり、夜中にトイレへ行くときに足元が不安になったりしていませんか。加齢とともに視力は変化し、若い頃と同じ照明では薄暗く感じてしまうことがあります。これは、暮らしの中に思わぬ危険を招く原因にもなりかねません。
この記事では、高齢者の方が安全で快適に過ごせる照明の選び方を詳しく解説します。転倒防止や目の負担を減らすためのポイントを知って、安心して暮らせる住まいの環境を整えましょう。
高齢者の暮らしに潜む危険と照明の重要な役割

加齢による目の変化は、生活空間での見え方に大きく影響します。若い頃よりも多くの光量が必要になるため、これまでと同じ照明環境では照度不足となり、つまずきや転倒といった思わぬ事故につながる危険性が高まるのです。
加齢による目の変化と本当に必要な明るさについて
年齢を重ねると、目の中の水晶体が濁ったり黄色く変化したりして、光を取り込む量が減少します。そのため、高齢者の方は若い世代の2倍から3倍の明るさが必要だと言われています。部屋全体が暗いと感じる場合は、照明器具の見直しが必要です。
単に明るいだけでなく、文字がはっきりと見えるか、物の輪郭がしっかり認識できるかといった「見やすさ」を基準に、快適な明るさを確保することが大切です。生活の質を保つためにも、視力の変化に合わせた照明計画を考えましょう。
照明環境が原因で起こるつまずきや転倒を防ぐには
住み慣れた家の中でも、照明環境が原因で転倒事故は起こります。特に、部屋と部屋の間のわずかな段差や、家具によってできた影が危険な落とし穴になりがちです。廊下や階段、足元が暗い場所は特に注意が必要です。
対策として、部屋ごとの明るさのムラをなくし、足元をしっかりと照らすことが重要になります。間接照明や足元灯(フットライト)を効果的に使うことで、家の中の危険な箇所を減らし、安全な生活動線を確保できます。
高齢者におすすめの照明を選ぶための5つのポイント

高齢者の方が安全・快適に暮らすための照明選びでは、いくつかの重要なポイントがあります。明るさや光の色はもちろん、操作のしやすさや経済性まで考慮することで、生活の質を大きく向上させることができます。ここでは、押さえておきたい5つの基本をご紹介します。
- 部屋の広さと目的に合った明るさ
- 活動と休息で使い分ける光の色
- 眩しさを抑える工夫
- 誰でも簡単な操作性
- 長寿命で経済的なLED
これらのポイントに加え、高齢者の一人暮らしに便利なグッズを取り入れることで、さらに安心な住環境を整えることができます。
部屋の広さと目的に合った明るさの基準を知ろう
照明器具を選ぶ際は、まず設置する部屋の広さ(畳数)に合った明るさ(ルーメン)の製品を選ぶのが基本です。製品カタログやパッケージに記載されている適用畳数を目安にしましょう。リビングなどの広い空間では、部屋全体を照らす照明が欠かせません。
また、読書や裁縫といった手元での細かい作業を行う場合は、全体照明だけでは不十分なことがあります。シーリングライトに加えて、手元をピンポイントで照らすスタンドライトなどを併用することで、目の疲れを軽減し、快適に作業できます。
目に優しい光の色は活動と休息で使い分けるのがコツ
照明の光の色(色温度)は、生活リズムに大きな影響を与えます。日中のように活動的に過ごすリビングでは、文字がはっきりと見える「昼白色」がおすすめです。一方で、夜にリラックスして過ごす寝室では、暖かみのある「電球色」が適しています。
最近のLEDシーリングライトには、一つの器具で明るさと光の色を調整できる「調光・調色機能」付きの製品が多くあります。時間帯やシーンに合わせて光を使い分けることで、メリハリのある快適な生活を送ることができます。
眩しさを抑えて快適な視界を確保するための工夫
加齢により、強い光を眩しく感じる「グレア」に敏感になることがあります。光源が直接目に入ると、不快感や目のくらみを引き起こし、転倒の原因にもなりかねません。照明器具を選ぶ際は、この眩しさ対策が非常に重要です。
対策としては、光源が直接見えないよう乳白色のカバーが付いた器具や、光を壁や天井に反射させる間接照明を選ぶのが効果的です。目に優しい柔らかな光が空間全体に広がり、リラックスできる快適な環境を作り出します。
リモコンやセンサー付きで誰でも操作が簡単な器具
ベッドから出て壁のスイッチを操作したり、暗闇の中でスイッチを探したりするのは、高齢者の方にとって負担であり危険も伴います。手元で簡単に点灯・消灯や明るさ調整ができるリモコン付きの照明器具は、非常に便利で安全です。
また、廊下やトイレ、玄関には、人の動きを感知して自動で点灯・消灯する人感センサー付き照明がおすすめです。スイッチ操作が不要で、消し忘れの心配もないため、省エネにも繋がります。操作が簡単な高齢者向けのリモコンも合わせて検討すると良いでしょう。
交換の手間と電気代を削減する長寿命なLED照明
照明器具の電球交換は、特に天井などの高所にある場合、脚立を使う必要があり転倒のリスクが伴います。その点、LED照明は約40,000時間という長寿命が魅力で、一度設置すれば約10年間は交換の手間がほとんどありません。
さらに、LED照明は従来の蛍光灯や白熱電球に比べて消費電力が少なく、電気代を大幅に削減できるというメリットもあります。安全性の向上と経済的な負担の軽減を両立できるため、高齢者の住まいには最適な選択肢と言えるでしょう。
【場所別】高齢者が安全に暮らす照明の選び方とコツ

家の中での安全性と快適性を高めるためには、リビングや寝室、廊下といった場所ごとの特性に合わせた照明計画が重要です。それぞれの空間での過ごし方や移動の頻度を考慮し、最適な照明器具を選ぶことで、より安心して暮らせる住環境が実現します。
リビングは全体照明と手元灯の組み合わせがおすすめ
家族団らんや食事、読書など、様々な活動が行われるリビングでは、空間全体を均一に明るく照らすシーリングライトが基本です。さらに、新聞を読んだり手芸をしたりする際には、手元をしっかりと照らすフロアスタンドやテーブルランプを併用しましょう。
「全体照明」と「手元照明」を組み合わせる多灯照明によって、必要な場所に必要な明るさを確保できます。これにより、目の疲れを防ぎ、快適な時間を過ごすことができるようになります。
寝室は夜中に起きても安心な足元灯と調光機能が必須
夜中にトイレなどで目覚めた際、真っ暗な中を歩くのは非常に危険です。転倒を防ぐために、寝室には常夜灯や、ベッドサイドから廊下までの動線を照らす足元灯(フットライト)を設置しましょう。自動で点灯するタイプが便利です。
また、主照明は就寝前に眩しく感じないよう、明るさを調節できる調光機能付きが最適です。眠りを妨げない暖色系の柔らかな光に設定することで、心身ともにリラックスした状態で休息に入ることができます。
廊下や階段は人感センサー付き照明で転倒を防止する
家の中でも特に転倒事故が起こりやすいのが、夜間の廊下や階段です。暗闇の中でスイッチを探す手間なく、通るだけで自動的に点灯する人感センサー付きの照明を設置することで、安全性が格段に向上します。
足元がはっきりと見えることで、つまずきや踏み外しのリスクを大幅に減らせます。照明と合わせて玄関周りのリフォームで手すりを設置するなど、複合的な対策を行うとさらに安心です。
トイレや洗面所は夜間でも眩しくない照明を選ぼう
深夜にトイレへ起きた際、急に強い光を浴びると目が眩んでしまい、かえって危険な場合があります。そのため、トイレや洗面所の照明は、まぶしさを抑えた製品を選ぶことが大切です。人感センサーでほんのり点灯するタイプがおすすめです。
目に優しい電球色の光を選ぶと、眠気を妨げにくく、使用後もスムーズに再入眠しやすくなります。照明の工夫は、安全対策だけでなく、快適な睡眠を守るためにも重要です。必要であれば高齢者向けの浴室リフォームと合わせて検討しましょう。
まとめ:安全で快適な暮らしを支える照明選びの要点

高齢者の方が安全で快適な生活を送るためには、加齢による身体の変化に合わせた照明計画が不可欠です。この記事でご紹介したように、単に部屋を明るくするだけでなく、光の色や眩しさ、操作性など、多角的な視点で照明を見直すことが重要です。
適切な照明は転倒を予防し、目の負担を和らげ、日々の暮らしに安心感をもたらします。照明の見直しは、ご自身や大切な家族の安全を守るための第一歩です。一人暮らしの高齢者に役立つアイテムも参考にしながら、ぜひご自宅の照明環境をチェックしてみてください。
高齢者の照明に関するよくある質問

高齢者の部屋に必要な明るさの基準値はありますか?
JISの照明基準では、住宅の居間の推奨照度は150〜300ルクス(lx)とされています。しかし、視力が低下する高齢者の場合は、その1.5〜2倍程度の明るさが目安となります。細かい作業をする場所では、さらに高い照度が必要です。
ただし、最も重要なのは数値ではなく、ご本人が「見やすい」「快適だ」と感じる明るさであることです。調光機能付きの照明を選び、生活シーンに合わせて最適な明るさに調節することをおすすめします。
高齢者の目には電球色と昼光色どちらがおすすめ?
どちらか一方が良いというわけではなく、生活シーンに合わせて使い分けるのが最適です。例えば、リラックスしたい寝室や夜のリビングでは、暖かみがあり目に優しい「電球色」がおすすめです。眠りを妨げにくい効果も期待できます。
一方で、読書や料理、裁縫など、細かい作業を行う際には、文字や物の輪郭がはっきり見える「昼白色」や「昼光色」が適しています。調色機能付きの照明器具なら、時間帯や用途に応じて簡単に切り替えができて便利です。
シーリングライトとダウンライトはどちらが良いですか?
それぞれにメリットがあり、部屋の用途や目的によって選択が異なります。シーリングライトは、1台で部屋全体を均一に明るくすることができ、取り付けも比較的簡単なため、リビングや寝室の主照明として一般的に使われます。
ダウンライトは、天井に埋め込むため空間がすっきり見えるのが魅力です。複数設置することで部屋の隅々まで明るくしたり、特定の場所を照らしたりするのに適していますが、設置には電気工事が必要になる場合があります。
LED照明は目に悪いという話は本当ですか?
LED照明から発せられるブルーライトが目に与える影響について心配される声もありますが、一般的な家庭用照明として使用する範囲では、健康への悪影響を過度に心配する必要はない、というのが専門家の一般的な見解です。
むしろ、長寿命で交換の手間が少ない、省エネで電気代を節約できる、明るさや色を自由に調整できるなど、高齢者の方にとってLED照明はメリットが非常に大きい選択肢と言えます。眩しさを抑えた製品を選べば、より快適に使用できます。
照明選びでよくある失敗例はどんなものがありますか?
よくある失敗例としては、「おしゃれなデザインだけで選んだら、部屋の広さに対して明るさが足りなかった」「光源が直接目に入って眩しく、目が疲れてしまう」「リモコンのボタンが多くて操作が複雑だった」などが挙げられます。
こうした失敗を防ぐには、購入前にこの記事で紹介した「明るさ」「光の色」「眩しさ」「操作性」などのポイントをしっかり確認することが大切です。実際の生活をイメージしながら、ご自身にとって最適な照明を選びましょう。