はじめに:高齢の家族のお酒、心配していませんか?
最近、親の飲む量が目に見えて増えました。お酒のことで口論が続き、家の空気が重くなっていませんか。
高齢の親や配偶者の飲酒で、一人で悩みを抱え込みがちです。大切だからこそ強く言い過ぎてしまい、結果として事態を悪化させることがあります。
この記事では、避けたい対応と言葉、心に寄り添う伝え方、頼れる相談先を具体的に示します。正しい知識が解決への最短の道です。
なぜ高齢者の飲酒は危険なのか?放置する3つのリスク
高齢の飲酒は「昔からの酒好き」で済みません。年齢とともにアルコールの影響が強く出ます。放置すると、健康・心・認知の3方面で生活を揺るがします。
リスク1:病気や体調不良を招く身体的な危険性
高齢になると肝臓の分解力が下がり、同じ量でも負担が急増します。その結果、肝機能障害や高血圧、糖尿病などの危険が高まります。
また、酔いで足元が乱れ、転倒や骨折の恐れが大きくなります。特に大腿骨骨折は寝たきりの引き金になり、生活を一変させます。
リスク2:うつや孤立を深める精神的な危険性
退職や死別、交流の減少は孤独感を強め、寂しさの埋め合わせに飲酒へ向かいがちです。その積み重ねが依存に近づけます。
アルコールは一時は気分を上げますが、切れると落ち込みが強まります。不快感から飲む量が増え、負の連鎖に陥りやすくなります。
リスク3:アルコール性認知症につながる認知機能の危険性
物忘れが増えた場合、加齢だけでなく長年の大量飲酒も疑います。脳の萎縮が進み、認知機能が大きく下がる恐れがあります。
作話や暴言、感情の抑制低下が見られるときは要注意です。飲み続ければ症状は悪化します。家族は関係性を理解し、早めに動くことが重要です。
これだけは避けたい!家族がやりがちなNG対応と言葉
「やめさせたい」という思いが強いと、逆効果の言動に走りがちです。善意でも、信頼を壊し問題を深める場合があります。注意点を整理します。
- 感情的に責める:反発と隠れ飲みを招きます。
- 勝手に隠す・捨てる:不信が高まり行動が巧妙化します。
- 買い与える:問題を支え、回復を遅らせます。
感情的に責める・人格を否定する
「また飲んでるの?」と詰めたり、「意志が弱い」と決めつけたりする言葉は禁物です。逃れようと嘘や隠れ飲みが増えます。
こうした言い方は解決を遠ざけ、家族関係を深く傷つけます。行動の裏にある辛さに目を向け、責めずに聴く姿勢を大切にします。
本人のお酒を勝手に隠す・捨てる
目先のお酒を消しても、原因を解かなければ再発します。黙って隠したり捨てたりすると、信頼を大きく損ねます。
「家族は敵だ」と感じると、より巧妙に隠し、外で買う行動が増えます。背景にある寂しさや不安に向き合い、話し合いの場を整えます。
【要注意】アルコール依存症の人に言ってはいけない言葉
依存症は「性格の弱さ」ではなく、専門治療が必要な病気です。「家族のために頑張れ」と迫る言葉は追い込みます。
精神論や根性論は逆効果です。正しい理解に基づき、「病気だからこそ専門家につなぐ」と伝え、安心できる道を示します。
高齢者の飲酒をやめさせるための正しい対応と4つの段階
避けるべき対応を知ったら、次は正しい進め方を押さえます。ここでは4段階で示します。焦らず一歩ずつ積み上げましょう。
段階1:まずは家族がアルコール問題を正しく理解する
出発点は、依存症を病気として理解することです。意思だけで制御できず、回復には専門的な支えが欠かせません。
保健所や精神保健福祉センターでは、家族向けの相談や学習の機会があります。正しい知識を得て、冷静に状況を見立てましょう。
段階2:本人が冷静な時に「心配している」気持ちを伝える
話すのは、素面で落ち着いている時間帯に限ります。「やめなさい」ではなく、私は心配だと自分の気持ちで伝えます。
非難ではなく思いやりだと伝われば、対話の扉が開きます。「困りごとは何?」「私にできることは?」と、寄り添いを示します。
段階3:飲酒以外の楽しみや役割を見つける手助けをする
孤独や手持ちぶさたが背景にあることが多く、代わりの楽しみが欠かせません。断酒の継続には生活の再設計が要ります。
過去に好きだったことを一緒に探し、地域のサークルや短時間の手伝いを勧めます。「役に立てた」という実感が、回復を後押しします。
段階4:一人で抱え込まず専門家を頼る
家族の努力にも限界があります。改善が見えないなら早めに外部へつなぎます。それは見捨てることではなく、最大の支えです。
かかりつけ医、精神保健福祉センター、専門外来への相談が突破口になります。限界を感じる前に、助けを求めましょう。
どこに相談すればいい?専門の相談窓口と医療機関
迷ったら、身近な窓口へ一本の電話から始めます。役割の異なる機関が連携し、本人と家族を継続的に支えます。
地域の相談窓口:保健所・精神保健福祉センター
各地の保健所や精神保健福祉センターには、専門の相談員が常駐します。費用はかからず、秘密も厳守されます。
家族だけの相談も歓迎です。対応の助言や医療機関・自助グループの紹介を受け、具体的な一歩を踏み出せます。
専門の医療機関:精神科・アルコール外来
依存症は精神疾患の一つで、医学的な治療が必要です。受診は特別なことではなく、回復への最短経路です。
医療機関では、面接の支援や飲酒欲求を抑える薬など、根拠に基づく治療を行います。拒むときは、家族だけで相談できます。
家族を支える自助グループ:アラノンなど
飲酒問題は家族も巻き込みます。アラノンのような家族の集まりで体験を語り合い、心の負担を軽くしましょう。
「自分だけではない」と気づくことが、大きな支えになります。家族が安定を取り戻すことは、本人の回復にも効きます。
入院や施設という選択肢も
外来での対応が難しい場合や、心身の悪化が強い場合は入院や施設を検討します。安全を確保し、断酒の土台を整えます。
判断は医師や支援機関と進め、費用や期間、支援制度を確認します。無理のない計画で、退院後の生活まで見据えます。
アルコール依存症の治療・回復施設
専門病院や回復施設では、お酒から完全に隔離された環境で、集中的な治療の計画(解毒治療、面接の支援、作業療法など)を受けられます。お酒のない生活習慣を作り直し、退院後の断酒継続を目指します。費用や期間は様々ですが、高額療養費制度などの支援が使える場合があります。まずは医療機関に相談してみましょう。
飲酒問題に対応可能な老人ホーム
高齢で介護が必要な場合は、飲酒問題に対応する施設の活用も選択肢です。ただし基準は施設ごとに異なり、入居条件や管理方法を綿密に確認します。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターと相談し、受け入れ可能な施設を粘り強く探しましょう。
まとめ:一人で悩まず、まずは相談から始めましょう
最初の一歩は小さくてかまいません。あなた一人で抱え込まず、身近な窓口へ相談することが解決への近道です。

高齢の家族の飲酒問題は、愛情や気合だけでは解けない複雑な課題です。間違った対応は状況を悪化させ、あなたの心も傷つけます。
周りには、話を聴き力になる専門家や仲間が必ずいます。まずは勇気を出して地域の窓口へ電話を入れ、穏やかな日常を取り戻す一歩を踏み出しましょう。
高齢者の飲酒に関するよくある質問
疑問を放置せず、早めに情報を確かめることが肝心です。ここでは実際に寄せられる質問に、要点を絞って答えます。
Q. 高齢者のアルコール依存症にはどんな症状がありますか?
A. 少量でも記憶が途切れる「ブラックアウト」が起きやすくなります。隠れて飲む、午前中から飲む、感情の起伏が激しくなるなどが続くと要注意です。
さらに、転倒の増加や食事の乱れなど生活の変化も重要な信号です。複数の兆しが重なったら、早めに相談へ進みましょう。
Q. お酒をやめさせたいのですが、どうしたらよいですか?
A. まずは素面の時間に、「あなたの健康が本当に心配だ」と自分の気持ちを伝えます。命令形ではなく、Iメッセージで話します。
同時に、家族だけで抱え込まず第三者へ相談します。保健所や精神保健福祉センター、専門外来を提案し、一緒に足を運びます。
Q. アルコール依存症の家族がしてはいけないことは何ですか?
A. ①責める・人格否定、②隠す・捨てる、③買い与えるの3つは厳禁です。反発や不信を生み、解決を遠ざけます。
③は「依存を支える行為」で、問題を長引かせます。距離を保ちつつ、専門家につなぐ行動へ切り替えましょう。
Q. アルコール依存症になったら、まず何をすればいいですか?
A. 最初の連絡先は保健所か精神保健福祉センターです。家族の相談も無料で受け付け、状況を整理する手助けをしてくれます。
専門家の助言を受け、適切な医療機関や自助グループへ進みます。安全で確実な流れを作り、無理なく支援を受けましょう。
Q. 施設や病院に入院させることはできますか?
A. 原則は本人の同意が必要です。暴力の恐れや重い合併症などの条件を満たす場合、家族の同意で医療保護入院が可能なことがあります。
判断に迷ったら、かかりつけ医や専門機関へ速やかに相談します。状況に合わせ、安全を最優先に道筋を決めましょう。