
はじめに:入院中の「退屈」は心身の大敵?暇つぶしの重要性
入院中の高齢の家族が、一日中テレビを眺めているだけだったり、ぼーっと天井を見つめていたりする姿は、見ている側も心配になりますよね。実は、この入院中の「退屈な時間」は、単に暇なだけでなく、心身の健康にとって大きな影響を与えることがあります。
活動量が減り、人との交流も少なくなる入院生活は、気力の低下を招きやすい環境です。特に高齢者の場合、脳への刺激が減ることで認知機能が衰え、いわゆる「入院でボケる」状態につながることも。この記事では、そんな退屈な時間を有意義に変え、高齢者の心と体の活性化を促す「暇つぶし」のアイデアを具体的にお伝えします。本人に合った方法で、入院生活に彩りを加えましょう。
高齢者向けの暇つぶしを選ぶ3つの大切なポイント
「何かしてほしい」という気持ちから、やみくもに暇つぶしグッズを渡しても、かえって本人の負担になってしまうことがあります。心から楽しんでもらうためには、贈る側がいくつかのポイントを理解しておくことが重要です。ここでは、高齢者向けの暇つぶしを選ぶ際に絶対に押さえておきたい3つの大切なポイントを解説します。これを踏まえるだけで、プレゼント選びの失敗がぐっと減ります。
ポイント1:身体の状態に合わせる(寝たきり・座位など)
最も大切なのは、現在の本人の身体の状態に最適なものを選ぶことです。例えば、寝たきりの状態の方に細かい作業が必要な手芸セットを渡しても、使うことができません。反対に、まだ手先が器用な方に、ただ聴くだけのラジオでは物足りないかもしれません。
- 寝たきりの状態か、ベッドで体を起こせる(座位がとれる)か
- 手や指はどのくらい自由に動かせるか
- 視力や聴力はどの程度か
これらの点をしっかり観察したり、看護師に確認したりして、無理なく安全に楽しめるものを選びましょう。特に寝たきりの方向けには、目を使わない暇つぶしも有効な選択肢となります。
ポイント2:本人の興味・関心事を尊重する
暇つぶしは、本人が「楽しい」「面白い」と感じなければ長続きしません。本人がもともと持っている趣味や、興味のあるジャンルを尊重することが何よりも重要です。若い頃に好きだったことや、仕事で関わっていたことなどをヒントにしてみましょう。
例えば、もともと読書家だった方には大活字本や電子書籍、音楽が好きだった方には懐かしい昭和の歌謡曲が入った音楽プレイヤーなどが喜ばれます。事前の会話の中で「最近、何か面白いテレビ番組ある?」「昔はどんなことが好きだった?」などと、さりげなく本人の関心事を探ってみるのがオススメです。
ポイント3:安全性や病室のルールを確認する
意外と見落としがちなのが、安全性と病院のルールの確認です。病室は共同生活の場であり、持ち込めるものには制限がある場合がほとんどです。
- ハサミやカッター、針など刃物の持ち込みは可能か
- イヤホンなしで音が出るものは使用できるか
- インクや接着剤など、匂いの強いものは問題ないか
- コンセントの使用は許可されているか
これらの点は、事前に必ず病院スタッフや看護師に確認しましょう。また、ビーズや細かいパズルのピースなどは、誤飲のリスクがないかも十分に考慮する必要があります。同室の方への配慮も忘れずに、みんなが快適に過ごせるアイテムを選びましょう。
【状況別】高齢者の入院中におすすめの暇つぶし15選
ここからは、いよいよ具体的な暇つぶしのアイデアを、高齢者の身体の状況に合わせて「合計15選」ご紹介します。寝たきりの方から、手先を動かせる方まで、きっとぴったりのアイテムが見つかるはずです。お見舞いのプレゼントとしてグッズを選ぶ際の参考にしてみてください。
【寝たきりでもOK】目や耳で楽しむ暇つぶし5選
身体をほとんど動かせない安静状態の方でも、楽しめることはたくさんあります。視覚や聴覚を刺激することで、気分転換になり、孤独感を和らげる効果も期待できます。目を使わない暇つぶしもこのカテゴリに含まれます。
1. ラジオ・音楽鑑賞
ラジオは、パーソナリティの声や音楽が耳から入ることで、孤独感を和らげ、社会とのつながりを感じさせてくれます。特に、昔から聴き慣れた番組や、AMラジオの落ち着いた雰囲気は高齢者に人気です。また、好きな音楽を聴く時間は、最高のリラックスタイムとなり、ストレス解消にもつながります。コンパクトなラジオや、事前に好きな曲を入れた音楽プレイヤーを用意してあげましょう。
2. オーディオブック・落語
視力が低下して読書が難しくなった方には、耳で物語を楽しめる「オーディオブック」がおすすめです。プロのナレーターが読み上げてくれるので、本の世界に没頭できます。また、笑いは免疫力を高める効果も期待できるため、落語や漫談の音声コンテンツも大変人気があります。面白い話で笑うことで、気分も晴れやかになるでしょう。
3. ポータブルDVDプレイヤーでの映画鑑賞
コンセントの許可が下りるなら、ポータブルDVDプレイヤーも強力な暇つぶしグッズです。若い頃に流行した映画や、好きな俳優が出演しているドラマなどを用意すれば、何時間でも楽しめます。画面サイズがコンパクトなものを選べば、ベッドサイドにも置きやすく、邪魔になりません。昔を懐かしむ時間は、脳の活性化にもつながります。
4. 昔の写真やアルバムを眺める
家族の写真や、若い頃の思い出のアルバムは、最高の暇つぶしであり、心を癒やす最高のプレゼントにもなります。楽しかった記憶を思い出す「回想法」は、認知症予防の一環としても取り入れられています。デジタルフォトフレームにたくさんの写真を入れて持っていくのも良いでしょう。写真を見ながら、家族で思い出話に花を咲かせる時間も、かけがえのないものになります。
5. 天井や壁に投影する家庭用プラネタリウム
寝たきりの状態だと、視界が天井ばかりになりがちです。そんな単調な景色を、満点の星空に変えてくれるのが家庭用プラネタリウムです。静かに流れる星々を眺める時間は、心を落ち着かせ、穏やかな眠りを誘います。非日常的な空間を病室に作り出すことで、気分転換に大きく役立つユニークなアイテムです。
【座ってできる】頭を使う脳トレ系の暇つぶし5選
ベッドの上で体を起こせる方には、少し頭を使う脳トレ系の暇つぶしがおすすめです。問題を解く達成感が日々の張り合いになり、認知機能の維持(ボケ防止)にも効果が期待できます。本人のレベルに合った、少し頑張れば解けるくらいの難易度のものを選びましょう。
6. 大判のクロスワードパズル・数独
新聞や雑誌でおなじみのクロスワードや数独(ナンプレ)は、昔から人気の高い脳トレの代表格です。マス目が大きいものや、文字が太くて見やすい高齢者向けにデザインされた問題集がたくさん出版されています。自分のペースで進められるので、長時間集中するのが難しい方にもおすすめです。
7. 脳トレドリル・間違い探し
「脳トレ」や「脳活」といったキーワードで探すと、計算問題や漢字パズル、間違い探しなど、様々なジャンルのドリルが見つかります。これらは、脳の様々な部分を活性化させるように作られています。カラフルで見ていて楽しいデザインのものも多く、ゲーム感覚で取り組めるのが魅力です。
8. 読書(大活字本・電子書籍)
読書は、知識を深め、想像力を豊かにする素晴らしい趣味です。視力が気になる方には、通常よりも文字サイズが大きい「大活字本」がおすすめです。また、タブレットが使えるなら、文字の大きさを自由に変えられる電子書籍も非常に便利。昔好きだった作家の作品や、興味のある分野の本を差し入れてみてはいかがでしょうか。
9. タブレットでの簡単なゲーム
Wi-Fi環境があれば、タブレットは無限の暇つぶしツールになります。将棋や囲碁、麻雀、ソリティアといった定番ゲームのアプリは、操作が簡単で高齢者にも人気です。対戦相手を見つけたり、自分の記録に挑戦したりと、一人で長時間楽しむことができます。ただし、熱中しすぎないよう、時間を決めて使うなどの配慮も必要です。
10. 写経・写仏セット
心を落ち着かせ、集中力を高めたい方には、写経や写仏がおすすめです。お手本をなぞるだけなので、絵や字に自信がない方でも気軽に始められます。一文字、一線に集中する時間は、雑念を払い、穏やかな気持ちにさせてくれるでしょう。筆ペンタイプのものなら、墨や硯の準備も不要で手軽です。
【手先を動かす】リハビリにもなる創作系の暇つぶし5選
手や指を動かすことは、脳に良い刺激を与えるだけでなく、身体機能の維持、つまりリハビリの一環としても非常に有効です。何かを自分の手で作り上げる「創作活動」は、大きな達成感と満足感をもたらし、入院生活の質を高めてくれます。
11. 大人の塗り絵
近年、高齢者の間で大人気なのが「大人の塗り絵」です。繊細で美しいデザインのものが多く、無心で色を塗るうちにストレスが解消されます。完成した作品を飾る楽しみもあります。様々な画材がありますが、手軽で汚れない色鉛筆から始めるのがおすすめです。細かい作業が難しい方向けに、図柄が大きくてシンプルなデザインのものもあります。
12. 編み物・あやとり
編み物は、昔取った杵柄で楽しめる女性も多いのではないでしょうか。マフラーやコースターなど、簡単なものから挑戦できます。指先を繰り返し動かすことで、脳が活性化されます。また、毛糸一本で様々な形を作る「あやとり」も、懐かしく楽しい遊びです。家族や看護師とのコミュニケーションのきっかけにもなります。
13. 折り紙・ちぎり絵
折り紙は、少ないスペースで手軽に始められる創作活動です。鶴や花など、簡単な作品でも完成すると嬉しいものです。ハサミを使わずに手でちぎった色紙を台紙に貼って絵を作る「ちぎり絵」も、指先の訓練になり、独創的な作品が生まれる楽しさがあります。日本の伝統的な遊びは、高齢者の心にすっと馴染みます。
14. 日記や手紙を書く
その日の出来事や感じたことを文字にする「日記」は、思考の整理になり、日々の記録にもなります。また、家族や友人へ「手紙を書く」のも素敵な時間の使い方です。メールやLINEとは違う、手書きの文字の温かさは、受け取った側も嬉しいもの。返事を待つ楽しみも生まれ、生活に張り合いが出ます。
15. 簡単なジグソーパズル
ジグソーパズルは、記憶力や集中力を高めるのに役立ちます。ピース数が少ないものや、一つ一つのピースが大きい高齢者向けの商品を選びましょう。風景や動物、懐かしい昭和のポスターなど、本人が好きなジャンルの絵柄を選ぶと、より楽しく取り組めます。完成した時の達成感は格別です。
【プレゼントにも】100均(ダイソー・セリア)で揃う暇つぶしグッズ
「何かお見舞いに持っていきたいけど、高価なものは気を使わせてしまう…」そんな時に頼りになるのが、ダイソーやセリアといった100円ショップです。実は、これらの店舗には入院中の暇つぶしにぴったりの便利グッズが豊富に揃っています。
例えば、大判のクロスワード雑誌や数独ドリル、スケッチブックと色鉛筆のセット、大人向けの塗り絵、折り紙、編み物用の毛糸やかぎ針など、この記事で紹介したアイテムの多くが見つかります。まずは100均でいくつか試してみて、本人が特に気に入ったものを後から本格的に揃える、という方法も賢い選択です。手軽に様々なジャンルを試せるのが、100均の最大の魅力と言えるでしょう。
まとめ:高齢者の入院生活に寄り添う暇つぶしを見つけよう

今回は、入院中の高齢者におすすめの暇つぶしを、身体の状態に合わせて15個ご紹介しました。大切なのは、「何かやらせなければ」と強制するのではなく、本人が「これならやってみたい」と自然に思えるものを見つけることです。
入院生活における「暇つぶし」は、単なる時間潰しではありません。それは、脳を活性化させ、リハビリを助け、心を癒やし、そして「自分はまだできる」という自信を取り戻すための、非常に重要な活動です。この記事で紹介したアイデアや選び方のポイントを参考に、ぜひ本人の状態と心に寄り添ったプレゼントを選んであげてください。その小さな贈り物が、退屈な入院生活を、穏やかで充実した時間に変えるきっかけになるはずです。
高齢者の入院と暇つぶしに関するよくある質問
最後に、高齢者の入院生活や暇つぶしに関して、多くの方が抱く疑問とその回答をまとめました。ぜひ参考にしてください。
Q. 高齢者の入院中におすすめの暇つぶしは?
A. 本人の身体の状態や興味によって最適なものは異なります。寝たきりならラジオや音楽鑑賞、座れるなら大判のパズルや読書、手先が動かせるなら塗り絵や簡単な手芸などがおすすめです。大切なのは、本人が無理なく、楽しいと感じられることです。この記事で紹介した「選ぶポイント」や「状況別おすすめ15選」を参考に、本人に合ったものを探してみてください。
Q. スマホ以外や寝たきりでも楽しめるものはありますか?
A. はい、たくさんあります。スマホが苦手な方や、寝たきりで身体を動かせない方には、耳で楽しむ暇つぶしが特におすすめです。ラジオや音楽、オーディオブック、落語などは、目を閉じたままでも楽しめ、気分転換に最適です。また、ご家族が昔のアルバムを持っていき、思い出話を語り合うのも素晴らしい時間の過ごし方です。
Q. お見舞いで喜ばれる暇つぶしプレゼントは?
A. 消耗品であるパズル誌やドリル、大人の塗り絵と色鉛筆のセットなどは、相手に気を遣わせすぎないため喜ばれます。また、本人の好きなジャンルの本(大活字版)や音楽CDも定番のプレゼントです。迷った際は、100均で数種類のグッズを購入し、「どれがいい?」と本人に選んでもらうのも、コミュニケーションが生まれて良い方法です。
Q. 入院すると認知症が進むと聞きましたが、なぜですか?
A. 入院は、環境が大きく変わることで本人にとって多大なストレスとなります。また、行動が制限されて日中の活動量が減り、他者との会話も少なくなるため、脳への刺激が急激に減少することが一因と考えられています。これを「せん妄」と呼ぶこともあります。意識的に頭を使ったり、手先を動かしたりする「暇つぶし」は、こうした認知機能の低下を防ぐためにも非常に重要です。