はじめに：親は「大丈夫」と言うけれど…本当に困っていることは？
離れて暮らす親に電話をすると、決まって返ってくる「大丈夫だよ」の一言。しかし、その言葉の裏には、言えない悩みや遠慮が隠れているかもしれません。高齢の親を持つ多くの家族が、親の本当の気持ちが分からず、どのような手伝いをすれば喜ばれるのか悩んでいます。
この記事では、様々な調査結果をもとに、高齢者が日常生活や自身の将来について「本当に困っていること」をランキング形式で解説します。さらに、その困りごとの裏にある「実はしてほしいこと」という本音に迫り、私たち家族ができる具体的なサポート方法までご紹介します。この記事を読めば、親の心に寄り添うヒントが見つかるはずです。
高齢者が本当に困っていることランキングTOP5
内閣府などの調査データを参考にすると、多くの高齢者が共通の悩みを抱えていることがわかります。ここでは、特に声の大きい5つの困りごとをランキング形式で見ていきましょう。一見すると個人の問題に思えるかもしれませんが、実は多くの高齢者に共通する社会的な課題でもあります。まずは全体像を理解し、ご自身の家族の状況と照らし合わせてみてください。
1位：自身の健康や病気への不安
高齢者が抱える困りごとの第1位は、やはり「健康や病気に対する不安」です。年齢とともに体力が低下し、若い頃のように無理がきかなくなるのは自然な変化です。持病を抱えていたり、いつ大きな病気になるかという不安は、日々の生活に大きな影響を与えます。
特に、医療機関への通院が負担になったり、日々の健康管理に悩んだりするケースは少なくありません。身体機能の衰えは、精神的なストレスにも繋がりやすく、生活全体の質を左右する深刻な問題なのです。
2位：将来の介護に対する心配
健康問題と密接に関係するのが、「将来の介護に対する心配」です。自分が要介護状態になったらどうしよう、という不安は非常に大きいものです。特に、「家族に迷惑や負担をかけたくない」という気持ちが強く、これが支援を求めることをためらわせる一因にもなっています。
介護保険制度などの公的な支援はありますが、手続きが複雑であったり、どのようなサービスが利用できるのか十分に理解できていなかったりするケースも多く見られます。いざという時に備え、早めに情報を集め、家族で話し合っておくことが安心に繋がります。
3位：収入の減少や老後資金の問題
仕事からの引退後、多くの高齢者は年金が主な収入源となります。現役時代と比べて収入が減ることで、経済的な不安を抱える方は少なくありません。日々の生活費はもちろん、予想以上にかかる医療費や将来の介護費用など、お金に関する悩みは尽きません。
贅沢をしたいわけではなくても、生活を維持するためのお金に不安を感じると、気持ちも沈みがちになります。節約を心がけるあまり、必要なものまで我慢してしまう状況は避けたいものです。老後の生活設計における資金問題は、非常に切実な困りごとです。
4位：日常生活での身体的な負担（買い物・掃除など）
病気というほどではなくても、日常生活の些細な動作が身体的な負担になることも、高齢者が困っていることの一つです。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 米や飲料など重い商品の買い物
- 高い場所にある電球の交換や掃除
- 布団の上げ下ろしやゴミ出し
- お風呂の掃除
これらの家事は、一つひとつは小さなことかもしれませんが、積み重なると大きな負担となります。体力の低下により、これまで当たり前にできていたことが困難になることで、自宅での生活に不便を感じるようになります。
5位：人との交流減少による孤独感
定年退職や友人との別れ、体力の低下による外出機会の減少など、高齢期は社会的な接点が少なくなりがちです。その結果、人とのコミュニケーションが減り、孤独感を抱える高齢者が増えています。
特に一人暮らしの高齢者にとって、誰とも話さない日が続くことは珍しくありません。孤独は精神的な健康に悪影響を及ぼすだけでなく、認知症のリスクを高める可能性も指摘されています。家族や地域との繋がりは、高齢者の心身の健康を維持するうえで非常に重要です。
ランキングの裏側にある「実はしてほしいこと」
ここまで高齢者が「困っていること」のランキングを見てきました。しかし、これらの悩みの裏には、直接口に出せない「実はしてほしいこと」という本音が隠されています。表面的な手伝いだけでなく、その奥にある気持ちを理解することが、本当の意味でのサポートに繋がります。
「大丈夫」は本音？プライドを尊重したサポートの重要性
高齢の親は、子に心配をかけたくない、迷惑をかけたくないという思いから、つい「大丈夫」と言ってしまいがちです。また、「自分のことは自分でできる」というプライド（自尊心）も、助けを素直に求めることを難しくさせている要因の一つです。
そのため、一方的に「手伝ってあげる」という姿勢ではなく、相手の気持ちを尊重することが大切です。「何かできることはない？」と尋ねるだけでなく、「〇〇を一緒にやらない？」のように、相手が無理なく頼れるような提案を心がけましょう。本人の意思を尊重する姿勢が、信頼関係を築く第一歩です。
身体の介助より「気にかけてもらう」ことの喜び
物理的なサポートはもちろん重要ですが、それ以上に高齢者が望んでいるのは、「気にかけてもらっている」という実感です。たとえ遠くに住んでいても、定期的に電話で声を聞かせたり、季節の変わり目に体調を気遣う連絡をしたりするだけでも、大きな心の支えになります。
「自分は忘れられていない」「大切に思われている」と感じることは、孤独感を和らげ、日々の生活に安心感をもたらします。物質的な支援だけでなく、こうした精神的な繋がりこそが、高齢者にとって何より嬉しいことなのです。
話し相手になるだけでも立派な支援
高齢になると、日々の生活に大きな変化が少なくなり、会話の機会が減りがちです。他愛のない世間話や、昔の思い出話、テレビ番組の感想など、ただ話を聞いてあげるだけでも、それは非常に価値のある支援になります。
会話は、脳の活性化を促し、認知症予防の効果も期待できます。何より、自分の話に興味を持って耳を傾けてくれる存在がいることは、生きがいや楽しみにも繋がります。特別なことでなくても、こまめなコミュニケーションの時間を大切にしましょう。
日常生活で「ちょっと手伝ってほしい」と感じる具体的な場面
では、具体的にどのような場面で手助けをすると喜ばれるのでしょうか。ここでは、高齢者が日常生活の中で「ちょっと手伝ってほしい」と感じやすい具体的な場面をご紹介します。これらの行動は、親子のコミュニケーションのきっかけにもなります。
買い物：重いものやかさばるものの購入
高齢者にとって、買い物は体力的に大きな負担となる作業です。特に、お米や飲み物のケース、トイレットペーパーといった重くてかさばる品物の購入は大変です。車を運転できない場合はさらに困難になります。
帰省した際にまとめ買いを手伝ったり、ネットスーパーの利用方法を一緒に試してみたりするのも良いでしょう。買い物の負担が減るだけで、日々の生活がぐっと楽になります。
家事：ゴミ出し、掃除、電球の交換など
日々の家事の中にも、高齢者には難しい作業が潜んでいます。例えば、指定された曜日の朝に出す必要があるゴミ出しや、かがんだり立ち上がったりする動作が多いお風呂掃除は大変です。
また、椅子に乗って行う電球の交換や、高い場所のホコリ取りなどは、転倒のリスクもあり危険です。こうした「ちょっとした家事」を気にかけて手伝うことで、安全で快適な住環境を維持できます。
外出：病院への付き添いや手続きのサポート
病院への通院は、高齢者にとって一人では不安なものです。医師からの説明を正確に理解したり、複数の診療科を回ったりするのは大きな負担です。家族が付き添ってくれるだけで、心強く、安心して診察を受けられます。
また、役所での手続きや、携帯電話の契約変更など、複雑な説明を理解しなくてはならない場面も同様です。内容を一緒に確認し、サポートすることで、不安やトラブルを未然に防ぐことができます。
デジタル機器：スマホやパソコンの操作
現代社会において、スマートフォンやパソコンは重要なコミュニケーション手段です。しかし、多くの高齢者にとっては操作が難しく、活用しきれていないのが現状です。「家族や孫とSNSで繋がりたい」「インターネットで趣味の情報を調べたい」という気持ちはあっても、使い方でつまずいてしまいます。
操作方法を根気よく教えたり、文字サイズを大きくするなどの初期設定を手伝ったりするだけで、世界が大きく広がる可能性があります。デジタルデバイド（情報格差）の解消を手伝うことは、社会との繋がりを保つための大切な支援です。
私たちにできること｜困りごとを解消する具体的な解決策
高齢者の困りごとに対して、私たち家族や周りの人は具体的にどのような対策を取れるのでしょうか。ここでは、すぐにでも始められる解決策を4つの視点からご紹介します。無理のない範囲で、できることから検討してみてください。
定期的なコミュニケーションで変化に気づく
最も基本的で重要なのは、定期的にコミュニケーションを取ることです。直接会うのが難しくても、電話やビデオ通話などを活用しましょう。何気ない会話の中から、声の調子や話す内容で体調や気分の変化に気づけることがあります。
「何か困っていない？」と直接聞くよりも、「最近どうしてる？」といった雑談の方が、相手も本音を話しやすいものです。この小さな積み重ねが、いざという時の早期対応に繋がります。
家事代行や宅配サービスを上手に活用する
全てのサポートを家族だけで抱え込む必要はありません。買い物に関してはネットスーパーや食材の宅配サービス、掃除や料理に関しては家事代行サービスなど、外部のサービスを上手に活用するのも一つの方法です。
これらのサービスを利用することで、高齢者本人の負担が減るだけでなく、サポートする家族の負担も軽減できます。費用はかかりますが、親の安全と安心、そして家族自身の時間を確保するための有効な選択肢です。
地域の支援制度や自治体サービスを調べる
お住まいの自治体や地域包括支援センターでは、高齢者向けの様々な支援を行っています。例えば、見守りを兼ねた配食サービス、緊急通報システムの設置、介護予防教室など、内容は多岐にわたります。
どのような制度やサービスが利用できるか、一度調べて情報提供してあげるのも立派な支援です。公的な支援を組み合わせることで、より安心して在宅での生活を続けることが可能になります。
生きがいや趣味を見つける手伝いをする
日々の生活に張り合いがなくなると、心身の機能は低下しやすくなります。地域のサークルやシルバー人材センター、公民館の講座など、本人が興味を持てそうな活動の情報を集めて提案してみるのも良いでしょう。
散歩や体操などの軽い運動を習慣にできるよう促したり、好きなこと（園芸、手芸、囲碁など）を続けられる環境を整えたりすることも、生きがい支援に繋がります。楽しみがある生活は、健康寿命を延ばす効果も期待できます。
まとめ：高齢者の「してほしいこと」を理解し、最適なサポートを
今回は、高齢者が本当に困っていることのランキングから、その裏にある「実はしてほしいこと」、そして私たちにできる具体的な解決策までを解説しました。
高齢者が抱える悩みは、「健康」「お金」「日常生活の負担」「孤独」など多岐にわたります。しかし、その根底にあるのは「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちと、「誰かに気にかけてほしい」という願いです。
この記事を参考に、まずは親とのコミュニケーションを増やすことから始めてみてください。相手のプライドを尊重しつつ、さりげない気遣いを続けることが、最高の親孝行に繋がるはずです。
高齢者の悩みに関するよくある質問
最後に、高齢者の困りごとや悩みに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問の解消にお役立てください。
高齢者が困っていること・してほしいことは何ですか？
多くの調査で、高齢者が最も困っていることは「健康や病気への不安」です。次いで「将来の介護」「収入やお金の問題」「日常生活の身体的負担」「孤独感」などが挙げられます。してほしいことは、こうした困りごとに対する直接的な手伝いだけでなく、定期的に連絡を取り、話し相手になるなど「気にかけてもらう」という精神的なサポートが非常に喜ばれます。
高齢者の楽しみや生きがいは何ですか？
高齢者の楽しみや生きがいは人それぞれですが、代表的なものには以下のようなものがあります。
- 趣味や娯楽：園芸、手芸、囲碁、旅行、カラオケなど
- 健康や運動：散歩、ゲートボール、体操教室など
- 人との交流：友人との会食、孫と過ごす時間、地域の集まりへの参加
誰かと繋がり、役割を感じられることが、生活の質を高める上で重要になります。
高齢者が抱える「三大不安」とは何ですか？
一般的に、高齢者が抱える「三大不安」は「健康」「お金（経済）」「孤独」と言われています。この記事のランキングでも上位に入った項目と一致します。これらの不安は互いに影響し合っており、例えば健康を損なうと医療費がかさみ（お金の不安）、外出できなくなって人との交流が減る（孤独の不安）という悪循環に陥る可能性があります。
高齢者の困りごとを解決するにはどうすれば良いですか？
解決方法は一つではありませんが、以下の3つのアプローチを組み合わせることが有効です。
- コミュニケーション：まずは本人の状況や気持ちをよく聞くことが第一歩です。
- 家族や周囲のサポート：買い物や通院の付き添いなど、具体的な手伝いを行います。
- 外部サービスの活用：家事代行や宅配サービス、自治体の支援制度などを上手に利用し、家族だけで抱え込まないようにすることが大切です。
本人の意思を尊重しながら、最適な方法を一緒に探していく姿勢が求められます。