
はじめに:杖の購入、こんなお悩みありませんか?
「最近、親の歩き方がおぼつかなくて心配…」「自分の足腰に少し不安を感じるようになった」。そんなとき、安全な歩行をサポートしてくれるのが「杖」です。しかし、いざ杖を購入しようと思っても、「そもそも、どこで売っているの?」「種類が多すぎて、どれを選べばいいかわからない」といった新たな悩みに直面する方は少なくありません。
この記事では、そんなお悩みを解決するために、高齢者向けの杖を購入できる場所から、専門家のアドバイスに基づいた失敗しない選び方、価格相場や介護保険の利用まで、あらゆる情報を網羅的に解説します。あなたや、あなたの大切なご家族に最適な一本を見つけるための手助けとなれば幸いです。
高齢者向けの杖はどこで買う?購入場所4選とそれぞれの特徴
杖を購入できる場所は、実はたくさんあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況や杖に求める条件に合わせて最適な販売店を選ぶことが大切です。ここでは、主な購入場所を4つに分けて、その特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 【手軽さ重視なら】ホームセンター・デパート・スーパー
カインズやコーナンといったホームセンター、イオンなどの大型スーパー、百貨店の介護用品売り場などは、最も身近な購入場所の一つです。日用品の買い物のついでに、気軽に立ち寄って商品を見ることができます。
メリット:気軽に立ち寄れ、実物を見て触れる
最大のメリットは、その手軽さです。実際に杖を手に取って、重さやグリップの握り心地を確かめられるため、「通販で買ったらイメージと違った」という失敗を防げます。価格も比較的安価なものが多く、初めての一本を試してみたい方にもおすすめです。
デメリット:専門スタッフが不在な場合が多く、種類が少ない
一方で、杖専門のスタッフがいないことがほとんどのため、専門的なアドバイスは期待できません。また、店舗のスペース上、取り扱っている杖の種類やデザインが限られている場合が多いのがデメリットです。
2. 【専門的な相談をしたいなら】福祉用具専門店・介護ショップ
身体の状態に合った最適な一本をじっくり選びたいなら、福祉用具専門店や介護用品を専門に扱うショップが最もおすすめです。福祉用具に関する知識と経験が豊富な「福祉用具専門相談員」が常駐している店舗もあります。
メリット:専門知識を持つスタッフに相談でき、品揃えが豊富
身長や身体状況、利用シーンなどを詳しく伝えたうえで、プロの視点から最適な杖を提案してもらえます。購入後のアフターフォローや、介護保険を利用したレンタルの相談に対応してくれる点も大きな安心材料です。品揃えも充実しており、様々なタイプの杖を比較検討できます。
デメリット:店舗数が少なく、見つけるのに手間がかかる場合がある
ホームセンターなどに比べると店舗数が少ないため、お住まいの地域によってはアクセスしにくい場合があります。また、「専門店」という響きに少し敷居の高さを感じてしまう方もいるかもしれません。
3. 【豊富な品揃えから選びたいなら】杖専門のオンラインストア・通販サイト
Amazonや楽天市場といった大手通販サイトや、杖メーカーの直販サイトも有力な選択肢です。実店舗では見つからないような、おしゃれなデザインや特定の機能を持つ杖を探している方に向いています。
メリット:種類やデザインが圧倒的に豊富で、価格比較がしやすい
場所や時間を選ばずに、膨大な種類の杖の中から探せるのが最大の魅力です。利用者のレビューを参考にしたり、複数の商品を簡単に比較したりできるため、納得のいく一本を見つけやすいでしょう。特に、おしゃれなデザインの杖や軽量なカーボン素材の杖などは、オンラインストアの方が見つかりやすい傾向があります。
デメリット:実物を試せず、送料がかかる場合がある
画面で見るのと、実際に手に持ったときの印象が異なる可能性があるのが一番の懸念点です。長さの微調整やグリップの感触を試せないため、慎重な商品選びが求められます。購入前には、返品や交換の条件を必ず確認しておきましょう。
4. 【緊急で必要な場合】ドラッグストア
急な怪我や、退院後すぐに杖が必要になった場合など、緊急性が高いときにはドラッグストアも選択肢となります。24時間営業や深夜まで営業している店舗も多く、いざという時に頼りになります。
メリット:現在営業中の店舗が多く、急な必要性に対応できる
「今すぐ杖が欲しい」というニーズに応えられるのが最大のメリットです。比較的シンプルな一本杖(T字杖)が置かれていることが多く、急な必要性には十分対応できるでしょう。
デメリット:取り扱いがない店舗や、種類が限定的な場合が多い
全てのドラッグストアで杖を取り扱っているわけではありません。また、在庫があったとしても種類は1〜2種類程度と非常に限られていることがほとんどです。あくまで緊急時の選択肢として考えておくのが良いでしょう。
購入前に必見!失敗しない杖の選び方5つのポイント
購入場所が決まったら、次は「どの杖を選ぶか」です。デザインや価格だけで選んでしまうと、身体に合わずに逆に歩きにくくなったり、転倒の原因になったりすることも。ここでは、安全で快適な杖を選ぶために、必ずチェックしたい5つのポイントを解説します。
ポイント1:最も重要!身体に合った「杖の長さ」の決め方
杖選びで最も重要なのが「長さ」です。長さが合っていないと、姿勢が悪くなったり、余計な部分に力が入って肩や腕を痛めたりする原因になります。
- 計算式での目安: (身長 ÷ 2) + 2~3cm
- 最適な長さの合わせ方:普段履いている靴を履いて、背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます。腕を自然に下ろし、肘が軽く曲がる(約30度)位置に杖のグリップがくる高さが最適な長さです。
多くの杖は長さを調節できる伸縮タイプですが、購入前に対応身長の範囲を確認しておきましょう。
ポイント2:歩行の安定性を左右する「杖先の種類」
杖が地面と接する「杖先」は、安全性を支える重要な部品です。ほとんどの杖には滑り止めのゴムがついています。このゴムは使っているうちに摩耗するため、すり減ってきたら交換が必要な「消耗品」だと覚えておきましょう。また、より安定性を求めるなら、接地面積が広い多点杖も選択肢になります。
ポイント3:握りやすさが重要「グリップ(持ち手)の形状」
杖の「グリップ(持ち手)」は、体重を支え、バランスを取るための重要な部分です。長時間使用しても疲れにくく、しっかりと握れるものを選びましょう。
- 形状:T字型が最も一般的ですが、手のひらで体重を支えやすいオフセット型などもあります。
- 素材:温かみのある木製、滑りにくい樹脂製、衝撃を吸収してくれるクッション付きなど様々です。実際に握ってみて、ご自身の手の形にフィットするものを選びましょう。
ポイント4:使用シーンに合わせる「素材と重さ」
杖のシャフト(支柱)部分の素材によって、重さや使い勝手が変わります。
- アルミ製:軽くて丈夫、価格も手頃で最も一般的な素材です。
- カーボン製:アルミよりもさらに軽量で強度も高いですが、価格は高めになります。
- 木製:手に馴染む温かみが魅力ですが、長さ調節ができないものが多く、水濡れに注意が必要です。
軽い杖は扱いやすいですが、軽すぎると逆に不安定に感じる方もいます。使う方の筋力や体重とのバランスを考えて選ぶことが大切です。
ポイント5:外出が楽しくなる「デザインや付加機能」
杖は身体を支えるだけでなく、気持ちを前向きにしてくれるアイテムでもあります。花柄やシックな色合いなど、お気に入りのデザインの杖を選べば、外出がもっと楽しくなるはずです。また、バスや電車に乗る際に便利な「折りたたみ機能」や、夜道でも安心な「LEDライト付き」、杖が倒れるのを防ぐ「ストラップ付き」など、便利な付加機能にも注目してみましょう。ご両親へのプレゼントとしても喜ばれます。
どんな種類がある?目的別に知る杖のタイプと特徴
杖には様々な種類があり、それぞれ特徴や適した人が異なります。ここでは代表的な杖のタイプをご紹介します。ご自身の身体状況や利用目的に合ったものを選びましょう。
【基本の一本】T字杖(一本杖)
街で最もよく見かける、グリップがT字型の杖です。「ステッキ」とも呼ばれ、デザインや色の種類が非常に豊富なのが特徴です。杖がなくても自力で歩けるものの、歩行のバランスを補助したり、膝への負担を軽くしたりしたい方におすすめです。一本足で支えるため、体重をしっかりかけたい方には不向きな場合があります。
【安定感重視なら】多点杖(3点杖・4点杖)
杖先が3つまたは4つに分かれており、接地面積が広く安定感が抜群のタイプです。T字杖では少し不安な方や、脳卒中後のリハビリなどで体重をしっかり支える必要がある方に向いています。手を離しても自立するため、置き場所に困らないというメリットもあります。ただし、一本杖に比べて重く、階段や凹凸のある道では使いにくいというデメリットもあります。
【持ち運び・収納に便利】折りたたみ杖
シャフト部分を折りたたんでコンパクトに収納できるタイプの杖です。電車やバスに乗るとき、飲食店に入ったときなど、使わないときにバッグにしまっておけるので非常に便利です。旅行が好きな方にも人気があります。使用するたびに組み立てる手間がかかる点や、一本杖に比べて強度がわずかに劣る場合がある点は考慮しておきましょう。
【リハビリ中の方に】ロフストランドクラッチ
前腕をカフ(輪)に通し、グリップと腕の2点で体重を支えるタイプの杖です。松葉杖よりも腕への負担が少なく、長期間の使用に向いています。骨折後のリハビリや、麻痺により下半身に体重をかけられない方などが主な使用者です。医師や理学療法士など、専門家の指示のもとで使用されることが多い杖です。
杖の購入に介護保険は使える?レンタルとの違いも解説
杖の購入を検討する際、「介護保険は使えるの?」と疑問に思う方は多いでしょう。費用に関わる大切な点ですので、ここで詳しく解説します。
原則として杖の購入は介護保険の対象外
結論から言うと、原則として、杖を「購入」する際に介護保険を利用することはできません。介護保険における福祉用具支援は、「福祉用具貸与(レンタル)」と「特定福祉用具販売(購入)」の2種類がありますが、T字杖や多点杖などは「レンタル」の対象品目と定められているためです。
介護保険で杖を「レンタル」する条件とは
要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けている方は、介護保険を利用して杖をレンタルできます。自己負担は所得に応じて1割〜3割となり、月々数百円程度で利用することが可能です。身体状況の変化に合わせて、他の種類の杖に交換しやすいのがレンタルの大きなメリットです。
購入とレンタルのメリット・デメリット
購入とレンタルのどちらが良いかは、その方の状況によります。以下の比較表を参考に、ご自身に合った方法を選択してください。
購入 | レンタル | |
---|---|---|
メリット | ・好きなデザインや機能を選べる ・新品を使える ・自分の所有物になる | ・費用負担が少ない ・身体状況の変化に合わせて交換可能 ・メンテナンスや修理の相談がしやすい |
デメリット | ・全額自己負担 ・身体状況に合わなくなる可能性がある ・不要になった際の処分に困る | ・デザインや種類を選べない ・他人が使用したものである可能性がある ・介護認定が必要 |
まとめ:ご自身に合う購入場所で、最適な一本を見つけましょう

高齢者の杖をどこで買うか、という疑問から、失敗しない選び方、種類や介護保険のことまで解説してきました。
大切なのは、使う方の身体状況やライフスタイルをよく考え、最適な購入場所で、ぴったりの一本を選ぶことです。手軽なホームセンター、専門知識が豊富な専門店、品揃え日本一の通販サイトなど、それぞれのメリットを理解し、時には組み合わせて利用するのも良いでしょう。この記事で紹介した選び方の5つのポイントを参考にすれば、きっと後悔のない杖選びができます。
杖は、安全な歩行を支え、行動範囲を広げてくれる心強いパートナーです。あなたにぴったりの杖を見つけて、これからも安心して外出を楽しんでください。
高齢者の杖購入に関するよくある質問
最後に、高齢者の杖購入に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 杖の値段はいくらくらい?平均的な相場は?
A. 杖の価格は様々ですが、一般的な相場は3,000円~15,000円程度です。ホームセンターなどでは2,000円前後の手頃な商品から、専門店や百貨店ではデザイン性の高い数万円のものまであります。ドンキホーテなどでは、さらに安価な杖が見つかることもありますが、安全性や耐久性は価格だけでなく製品仕様をよく確認しましょう。
Q. ダイソーやニトリ、スギ薬局でも杖は買えますか?
A. 2025年7月現在、ダイソーでの杖の取り扱いは基本的にありません。ニトリでは介護用品シリーズとして一部店舗やオンラインストアで杖を販売しています。スギ薬局などのドラッグストアも店舗によりますが、簡易的な杖を取り扱っている場合があります。訪問前に電話などで確認すると確実です。
Q. 3点杖と4点杖の違いは何ですか?
A. 地面に接する支点の数が違います。3点杖は3つ、4点杖は4つの脚で支えるため、一般的に4点杖の方が安定性は高くなります。その分、4点杖の方が少し重く、大きくなります。歩行状態やリハビリの段階に合わせて理学療法士などの専門家と相談して選ぶのがおすすめです。
Q. 折りたたみ杖のデメリットはありますか?
A. 持ち運びに便利な一方、いくつかのデメリットも存在します。一本杖に比べてシャフトの継ぎ目があるため、製品によっては若干のぐらつきを感じたり、耐久性がわずかに劣ったりする可能性があります。また、使用するたびに組み立てる手間がかかる点をデメリットと感じる方もいます。
Q. 杖を買う時の注意点は何ですか?
A. 最も重要な注意点は、この記事でも解説した「長さ」「杖先の状態」「グリップの握りやすさ」の3点です。必ず使う方の身体に合わせて選びましょう。また、購入後も杖先ゴムのすり減りを定期的にチェックするなど、安全に使い続けるためのメンテナンスも大切です。
Q. 介護保険を使って杖を購入できますか?
A. 原則として、介護保険を使って杖を「購入」することはできません。介護保険の対象となるのは「レンタル(福祉用具貸与)」です。要介護認定を受けている方は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、レンタルを検討するのが一般的です。