
はじめに:高齢者の肌着選び、こんなお悩みありませんか?
「最近、親の腕が上がりにくそうで、着替えに時間がかかる…」
「肌が乾燥して、今までの肌着がかゆいと言っている」
「介護施設に入るにあたり、どんな肌着を用意すればいいかわからない」
高齢になるご家族やご自身の肌着について、このようなお悩みはありませんか?年齢を重ねるとともに身体の状態や肌質は変化し、これまでと同じ肌着では快適に過ごすのが難しくなることがあります。特に介護が必要になると、着替えは本人にとっても介助する方にとっても大きな負担になりがちです。
この記事では、高齢者の肌着選びに関するお悩みをすべて解決する「完全ガイド」として、着心地や機能性を重視した選び方のポイントを徹底解説します。最適な一枚を見つけることで、ご本人もご家族も、もっと快適な毎日を送りましょう。
なぜ高齢者の肌着選びは重要?毎日を快適に過ごすための3つの理由
肌着は単に衣服の下に着るものではなく、高齢者の健康や生活の質を支える重要な役割を担っています。なぜ高齢者の肌着選びが大切なのか、その理由を3つの側面から見ていきましょう。
理由1:体を清潔に保ち皮膚トラブルを予防する
高齢者の皮膚は乾燥しやすく、非常にデリケートです。肌着は、汗や皮脂を直接吸収し、肌を清潔に保つ役割を担っています。吸湿性の悪い素材や、肌に合わない素材の肌着を着ていると、あせもやかぶれ、かゆみといった皮膚トラブルの原因になりかねません。肌に優しい素材の清潔な肌着を着用することは、デリケートな肌を守るための第一歩です。
理由2:着替えによる心身への負担を軽減する
腕が上がりにくい、指先に力が入りにくいなど、身体機能の変化によって着替えは大変な作業になります。着脱しやすい肌着を選ぶことは、ご本人の自立を助け、自信に繋がります。また、介護が必要な場合でも、介助者の負担を大きく減らすことができます。毎日の着替えがスムーズになることで、心身のストレスが和らぎ、穏やかな時間を増やすことができるのです。
理由3:着心地の良い肌着で生活の質(QOL)を高める
肌触りが良く、締め付けのない快適な肌着は、心と体をリラックスさせてくれます。「寒い」「暑い」「かゆい」といった不快感は、知らず知らずのうちに大きなストレスになるものです。着心地の良い肌着で一日を快適に過ごすことは、気分の向上にも繋がり、生活全体の質を高める上で非常に重要です。季節や体調に合った肌着を選ぶ心遣いが、豊かな生活を支えます。
【基本】高齢者の肌着選びで押さえるべき3つのポイント
では、具体的にどのような基準で肌着を選べば良いのでしょうか。ここでは、絶対に押さえておきたい基本的な3つのポイント「形状」「素材」「機能」について解説します。
ポイント1:着脱のしやすさで選ぶ(形状)
最も重要なのが、ご本人の身体状況に合った「着脱のしやすさ」です。肌着の形状には、大きく分けて「前開きタイプ」と「かぶりタイプ」があります。
前開きタイプ(ワンタッチテープ・ホック式)
腕を上げたり、上半身を大きく動かしたりするのが難しい方におすすめなのが前開きタイプです。ボタンの代わりにワンタッチテープ(マジックテープ®)や大きめのホック(スナップボタン)を使用したものは、指先の力が弱い方でも簡単に留め外しができます。寝たきりの方の着替えも、体を大きく動かす必要がなくスムーズに行えるため、介護の負担軽減に繋がります。
かぶりタイプ(首元がゆったりしたデザイン)
ご自身で着替えができる方であれば、従来のかぶりタイプでも問題ありません。ただし、選ぶ際には首周りや袖ぐりがゆったりと作られていて、伸縮性の高い生地のものを選びましょう。無理なく頭や腕を通せるデザインを選ぶことで、着替えの際の転倒リスクなどを減らすことができます。
ポイント2:着心地の良さで選ぶ(素材)
直接肌に触れる肌着は、素材選びが快適さを大きく左右します。肌への優しさを最優先に考えましょう。
肌に優しい「綿(コットン)」素材
高齢者の肌着の定番素材といえば、やはり綿(コットン)です。吸湿性・通気性に優れており、汗をしっかり吸い取ってくれるため、一年を通して快適に着用できます。肌触りが柔らかく、化学繊維に比べて刺激が少ないため、敏感肌の方でも安心して使えます。「グンゼ」の快適工房シリーズなど、高品質な綿100%の肌着が人気です。
快適性を高める「機能性」素材
最近では、快適な生活をサポートする様々な機能性素材が登場しています。例えば、冬場には保温性・保湿性に優れたキルト素材やシルクプロテイン加工が施された肌着がおすすめです。反対に夏場は、接触冷感や吸汗速乾機能のある素材が重宝します。季節や体調に合わせて最適な素材を選びましょう。
ポイント3:手入れのしやすさで選ぶ(機能)
特に介護が必要な場合、肌着は頻繁に洗濯することになります。ご家族の負担を減らすためにも、手入れのしやすさは重要な選択基準です。
洗濯・乾燥機に対応できるか
毎日のように洗濯することを考えると、丈夫さは欠かせません。縫製がしっかりしていて、洗濯を繰り返しても型崩れしにくい製品を選びましょう。さらに、乾燥機に対応している製品であれば、洗濯の手間を大幅に削減できます。特に梅雨の時期や冬場には、乾燥機が使えると非常に助かります。商品の洗濯表示を必ず確認しましょう。
気になる臭いを防ぐ抗菌・防臭加工
汗や尿の臭いは、ご本人にとってもご家族にとっても気になる問題です。抗菌・防臭加工が施された肌着は、雑菌の繁殖を抑え、不快な臭いの発生を防いでくれます。清潔感を保ちやすくなるため、快適性が向上し、精神的な安心感にも繋がります。
【状況別】身体の状態に合わせた肌着の選び方
最適な肌着は、ご本人の身体の状態によって異なります。ここでは「自分で着替えができる方」「一部介助が必要な方」「介護度が高い方」の3つの状況に分けて、選び方のポイントを解説します。
自分で着替えができる方
ご自身で問題なく着替えができる方は、選択肢が最も豊富です。基本的には、これまで着慣れたかぶりタイプで問題ないでしょう。ただし、加齢による体型変化を考慮し、締め付け感のない少しゆとりのあるサイズを選ぶのがおすすめです。また、腕が動かしやすいよう、伸縮性に優れた素材を選ぶとより快適に過ごせます。
一部介助があれば着替えができる方
「少し支えがあれば立てる」「座った状態で着替えができる」など、一部の介助を必要とする方には、前開きの肌着がおすすめです。特に、ワンタッチテープ式のものは、ご自身で留め外しする練習がリハビリに繋がることもあります。本人の「できること」を尊重し、身体の状態に合ったタイプの肌着を選びましょう。
寝たきりなど介護度が高い方
寝たきりの方や、ほとんどご自身で体を動かすことが難しい方には、完全に開くことができる前開きタイプの肌着が必須です。体を大きく動かすことなく、寝たままの姿勢で楽に着替えさせることができます。また、縫い目が肌に当たらないように工夫されている製品や、床ずれ(褥瘡)予防に配慮した介護用の肌着を選ぶと、より安心です。
【性別】男女で異なる肌着選びのポイント
基本的な選び方は男女共通ですが、性別による特有の悩みやニーズもあります。ここでは男女それぞれのポイントを見ていきましょう。
【男性向け】肌着選びの選び方とおすすめ
男性用の肌着は、上半身用のシャツと下半身用のパンツ(ズボン下)に分かれます。シャツはランニング、半袖、長袖があり、季節や好みに合わせて選びます。パンツは、軽い尿漏れが気になる方には、失禁パッドがズレにくいボクサーブリーフやブリーフタイプがおすすめです。ウエストのゴムが緩すぎず、きつすぎないものを選びましょう。しまむらやグンゼでは、シニア男性向けの機能的な肌着が豊富に揃っています。
【女性向け】ブラジャーの悩みと選び方
多くの高齢女性が悩むのがブラジャーです。「締め付けが苦しい」「ホックに手が届かない」といった理由から、ブラジャーを着けなくなったという方も少なくありません。しかし、バストの下垂を防ぎ、服をきれいに着こなすためにも、自分に合ったものを選びたいものです。
締め付けないブラジャーの選び方
高齢者向けのブラジャーは、ワイヤーの入っていないノンワイヤータイプが基本です。肩への負担が少ない幅広のストラップや、着脱が簡単な前開きホックの製品がおすすめです。肌に直接触れるカップ裏は、綿100%など優しい素材のものを選びましょう。ワコールやグンゼから、シニア向けの快適なブラジャーが販売されています。
カップ付きインナーもおすすめ
ブラジャーの締め付け感がどうしても苦手な方には、ブラジャーと肌着が一体になったカップ付きインナーが大変おすすめです。シャツやタンクトップにカップが付いているため、これ一枚でバストを優しく支え、着替えも非常に楽になります。ユニクロやしまむらでも、様々な種類のカップ付きインナーが手に入ります。
【季節別】一年中快適に過ごすための肌着選び
体温調節機能が低下してくる高齢者にとって、季節に合わせた肌着選びは健康維持のためにも重要です。
夏場(汗・冷房対策)の肌着選び
夏の肌着は、汗を素早く吸って乾かす「吸湿速乾性」が重要です。素材は綿や、ユニクロの「エアリズム」のような高機能素材がおすすめです。また、汗を吸わないまま冷房の効いた部屋にいると体が冷えすぎてしまうため、肌着を一枚着ることは「冷え対策」にも繋がります。タンクトップだけでなく、半袖タイプも活用しましょう。
冬場(寒さ・乾燥対策)の肌着選び
冬はとにかく保温性が第一です。体温で暖められた空気を逃がさない、キルティング素材や厚手の綿素材、ユニクロの「ヒートテック」のような発熱保温素材が適しています。また、冬は空気が乾燥して肌もカサカサになりがちです。椿オイルやスクワランなどを配合した「保湿加工」が施された肌着を選ぶと、肌の乾燥対策にもなり一石二鳥です。
どこで買う?高齢者向け肌着が購入できる店と人気ブランド
いざ肌着を買おうと思っても、どこで探せば良いか迷うかもしれません。ここでは、高齢者向けの肌着が手に入りやすい代表的な店舗とブランドをご紹介します。
ユニクロ|デザイン性と機能性を両立
機能性の高さで知られるユニクロは、シニア層にも人気です。特に前あきタイプのインナーは、入院や介護用に開発された商品で、オンラインストアや一部店舗で購入できます。その他、夏は「エアリズム」、冬は「ヒートテック」、そしてカップ付きインナーなど、季節や用途に応じた高機能な肌着が揃っているのが魅力です。
しまむら|手頃な価格と豊富な品揃え
全国に店舗を展開するしまむらは、シニア向けの衣料品コーナーが充実しています。手頃な価格で様々なデザインやサイズの肌着が見つかるのが最大のメリットです。前開き肌着やゆったりとした設計のショーツ、ブラジャーなども豊富に取り扱っています。実店舗で商品を直接見て、触って選びたいという方におすすめです。
グンゼ|「快適工房」など信頼の品質
肌着メーカーの老舗であるグンゼは、品質への信頼性が抜群です。特に「快適工房」シリーズは、"気持ちいいが、いちばん"をコンセプトにしたロングセラー商品で、素材(綿100%)、設計、品質(日本製)にこだわり抜いています。着心地と安心感を最も重視するなら、まずチェックしたいブランドです。
購入前にチェック!高齢者の肌着選びの注意点
最後に、肌着を購入する際に失敗しないための注意点を3つお伝えします。
本人の身体に合ったサイズを選ぶ
着心地を良くするためには、正しいサイズ選びが不可欠です。小さすぎると体を締め付け、血行不良の原因にもなります。逆に大きすぎると、保温性が損なわれたり、シワが寄って床ずれの原因になったりすることも。可能であれば試着するか、事前に採寸してサイズ表をしっかり確認しましょう。
介護施設で使う場合はルールを確認する
介護施設や病院に入居・入院する場合は、肌着の種類に指定がないか事前に確認しましょう。「前開きタイプのみ」「ボタンではなくワンタッチテープのもの」など、施設によってルールが定められていることがあります。購入してから「使えなかった」ということがないように注意が必要です。
名前は大きく分かりやすい場所に書く
施設では、他の入居者の洗濯物と一緒に洗濯・管理されることがほとんどです。取り違えを防ぐため、肌着には必ず名前を書きましょう。タグや襟元、裾など、目立ちやすく消えにくい場所に、油性のネームペンで大きくはっきりと記名するのがポイントです。
まとめ:最適な肌着選びで、本人も介護者も快適な毎日を

高齢者の肌着選びは、単なる衣類選びではありません。着脱のしやすさ、快適な素材、清潔を保つ機能性などを考慮して最適な一枚を選ぶことは、ご本人の尊厳を守り、心身の健康を支えることに繋がります。
また、着替えがスムーズになることで、介護するご家族の負担も軽減されます。この記事でご紹介した「形状」「素材」「機能」といったポイントを参考に、ぜひご本人にぴったりの肌着を見つけてあげてください。快適な肌着は、きっと毎日をより明るく、穏やかなものにしてくれるはずです。
高齢者の肌着選びに関するよくある質問
高齢者にブラジャーは必要ですか?締め付けが心配です。
A. 必ずしも必要ではありません。ご本人が苦痛に感じる場合は無理に着ける必要はなく、意思を尊重することが最も大切です。ただし、バストが垂れるのを気にされたり、着けないと落ち着かなかったりする方もいます。その場合は、この記事でご紹介したようなノンワイヤータイプや前開きタイプ、あるいは締め付け感のないカップ付きインナーといった選択肢を提案してみるのがおすすめです。
インナーと肌着に違いはありますか?
A. 一般的に、インナーと肌着はほぼ同じ意味で使われます。厳密には、肌着が「直接肌に触れる下着全般(シャツ、パンツ、ブラジャーなど)」を指すのに対し、インナーは「衣服の下に着るもの」という広い意味合いで使われることがあります。しかし、日常会話や店舗での表示では明確な区別はなく、同じものと考えて問題ありません。
男性の肌着にはどのような種類がありますか?
A. 男性の肌着は、上半身用と下半身用に分かれます。上半身用には、袖のない「ランニング(タンクトップ)」、定番の「半袖シャツ(クルーネック、Vネックなど)」、冬場に活躍する「長袖シャツ」があります。下半身用には、「トランクス」「ブリーフ」「ボクサーパンツ」、そして冬場のズボン下に履く「ズボン下(パッチ、ステテコ)」などがあります。季節や好み、身体の状態に合わせて選びます。