「実家の親が、何度教えてもテレビやエアコンのリモコンをうまく使えない」「暑い日なのにエアコンをつけず、熱中症が心配」…。高齢の親を持つご家庭で、リモコンの操作は共通の悩みではないでしょうか。
しかし「歳のせいだから」と諦めるのはまだ早いかもしれません。実は、ほんの少しの工夫や便利な製品の活用で、問題は解決できる可能性があります。親御さんに合った方法を見つけ、家族みんなのストレスを減らしましょう。
この記事では、高齢者がリモコン操作でつまずく原因から、今日から試せる簡単な工夫、そして便利な製品の活用法まで網羅的にご紹介します。ご家族に最適な解決策がきっと見つかるはずです。
なぜ？高齢者がリモコンを使えなくなる3つの原因
対策を考える前に、まずは親御さんがなぜリモコンを使えなくなってしまうのか、その原因を理解することが大切です。原因が分かれば、より的確な対策を立てられるようになります。根本的な問題を探っていきましょう。
主な原因は、加齢による「身体機能」と「認知機能」の低下、そして「リモコン自体の複雑さ」の3つに分けられます。それぞれがどのように操作を難しくしているのか、具体的に見ていきましょう。
原因1：身体機能の低下で見えにくい・押しにくい
加齢とともに、誰にでも身体的な変化は訪れます。例えば、視力の低下（老眼）によって、リモコンに密集した小さなボタンや文字が見えづらくなるのです。「どのボタンが電源で、どれが音量なのか」を判別するのが難しくなります。
また、指先の筋力が衰えたり関節が動かしにくくなったりすると、硬くて小さいボタンをしっかり押し込むことが困難になります。本人は操作したつもりでも反応しないため、「リモコンが壊れた」と思い込むことも少なくありません。
原因2：認知機能の低下で操作を覚えられない
記憶力や判断力といった認知機能の低下も、リモコン操作を難しくする大きな要因です。特に、新しい機器のリモコンなど、これまでと違う操作方法を覚えるのが難しくなります。何度も同じことを聞いてしまうのはそのためかもしれません。
昨日教えた操作を忘れてしまったり、複数の手順が必要な操作ができなかったりするのは、認知機能の低下が影響している可能性があります。本人が一番もどかしく、不安を感じていることを理解し、根気強く支えることが大切です。
原因3：多機能すぎるリモコンで混乱する
近年のテレビやエアコンのリモコンは、非常に多機能です。しかし、高齢者が日常的に使う機能は「電源」「チャンネル」「音量」などごく一部に限られます。ボタンが多すぎるために、必要なボタンがどこにあるのか分からず混乱してしまうのです。
間違えて普段使わないボタンを押し、設定が変わってしまうと「もう触りたくない」と操作自体を諦めてしまうことにも繋がります。シンプルさが失われたリモコンそのものが、バリアになっていると言えるでしょう。
【悩み別】今すぐできる！リモコンの紛失・誤操作を防ぐ簡単アイデア
高価な機器を導入する前に、まずは身の回りにある物や100円ショップなどで手軽に購入できる物で試せる工夫から始めてみませんか。少しのアイデアで、日々のストレスを大きく減らせる可能性があります。
ここでは、高齢者のリモコンに関する二大トラブルである「紛失」と「誤操作」を防ぐための、簡単で効果的なアイデアを具体的にご紹介します。ご家庭の状況に合わせて、取り入れやすいものから試してみてください。
「リモコンはどこ？」紛失・置き忘れを防ぐ工夫
「テレビを見ようと思ったらリモコンがない」というのはよくあることですが、高齢者の場合は探すこと自体が一苦労です。どこに置いたか忘れてしまうことが、家電を使うハードルを上げてしまいます。
特に認知機能の低下が見られる場合、無意識にしまい込んでしまうこともあります。そのため、まずは「なくさない」ための環境づくりが非常に重要です。リモコンの置き場所を工夫することから始めましょう。
工夫1：定位置を決める（壁掛け・指定席BOX）
最も基本的で効果的なのが、リモコンの「定位置」を決めることです。「使い終わったら必ずここに戻す」という習慣をつけるだけで、紛失は大幅に減らせます。
- 壁掛けホルダー：100円ショップなどでも購入できる壁掛け式の収納ホルダーを使えば、場所を取らずに定位置にできます。座る場所の近くや、目線の高さの壁に設置するのがおすすめです。
- 指定席BOX：綺麗な箱や小物入れを「リモコンの指定席」としてテーブルの上に置くのも良い方法です。テレビとエアコンなど、複数のリモコンをまとめて管理できます。
工夫2：目立つようにする（マスキングテープ・ストラップ）
リモコン自体を目立たせることも有効です。黒や白といった地味な色のリモコンは、雑然とした部屋の中では見つけにくいもの。派手な色のマスキングテープを巻いたり、大きなストラップを付けたりするだけで、視覚的に発見しやすくなります。
手芸店などで売っているカラフルな紐を使えば、首から下げたり、ベッドの柵に結びつけたりすることもでき、寝たきりの方にも応用できます。
工夫3：音で探せるようにする（紛失防止タグ）
少し費用はかかりますが、便利な機器として「紛失防止タグ（スマートタグ）」の活用もおすすめです。これは、スマートフォンのアプリから音を鳴らして場所を知らせてくれるキーホルダーのような機器です。
このタグをリモコンに付けておけば、見当たらない時にスマホ操作で音を鳴らし、場所を特定できます。家族が遠隔で探してあげられるので、物忘れが増えてきた親御さんには特に効果的な方法です。
「また設定が変わった！」誤操作を防ぐ工夫
不要なボタンを押してしまい設定が変わるトラブルは、本人だけでなく家族にとっても大きなストレスです。この問題は、「使わないボタンは、物理的に押せなくする」という発想で工夫してみましょう。
工夫1：使わないボタンを隠す（リモコンカバー・厚紙）
最も確実なのは、使わないボタンを覆って隠してしまうことです。シンプルな方法ですが、効果は絶大です。
- リモコンカバーの活用：エアコンのスライド式の蓋は、テープで固定してしまいましょう。100円ショップのシリコン製カバーの内側に厚紙を仕込み、不要なボタンを隠す方法もあります。
- 手作りカバー：厚紙をリモコンの形に切り抜き、「電源」や「チャンネル」など必要なボタンの部分だけをくり抜いて、オリジナルのカバーを作るのもおすすめです。誤操作を物理的に防げます。
工夫2：必要なボタンを分かりやすくする（シール・大きな文字）
ボタンを隠すだけでなく、必要なボタンを「より分かりやすく」してあげる工夫も大切です。「電源は赤」「暖房はオレンジ」のように、機能ごとに色分けしたシールを貼ると直感的に操作しやすくなります。
また、ボタンの上に「でんげん」「ちゃんねる」のように、ひらがなで大きく書いたシールを貼ってあげるのも親切です。視力が低下した方でも、何のボタンかが一目で分かるようになります。
リモコンの買い替えも有効！高齢者向け「簡単リモコン」の選び方
手作りの工夫だけでは限界を感じる場合や、リモコン自体が古く反応が悪い場合には、思い切って「簡単リモコン」に買い替えるのも非常に有効な選択肢です。高齢者向けに、操作を限りなくシンプルに設計された製品があります。
これらの製品は、複雑な機能をすべて省き、日常的に使う最低限のボタンだけを大きく配置しているのが特徴です。誰でも直感的に使えるため、教える側の負担も減り、本人の自信にも繋がります。
テレビ用「簡単リモコン」の利点と選び方のポイント
高齢者向けのテレビ用簡単リモコンは、家電量販店やネット通販で数多く販売されています。最大の利点は、ボタンの数が少なく、一つ一つが大きいこと。「電源」「チャンネル上下」「音量上下」など、本当に必要な機能だけに絞られています。
選ぶ際のポイントは、自宅のテレビメーカーに対応しているかを確認することです。多くの製品は国内主要メーカーに対応した「汎用リモコン」ですが、念のため対応機種一覧を確認しましょう。軽さや握りやすさも重要です。
エアコン用「簡単リモコン」で熱中症対策を
特に重要なのがエアコンのリモコンです。複雑な操作が原因でエアコンを使わなくなり、夏場に熱中症になってしまう事例は後を絶ちません。命を守るためにも、誰でも確実に操作できる環境は必須です。
エアコン用の簡単リモコンも、テレビ用と同様に「運転／停止」「冷房／暖房」「温度設定」といった基本操作に特化しています。複雑な機能を省くことで誤操作を防ぐため、高齢の親が一人で過ごす時間が長いご家庭には導入を強くおすすめします。
【次世代の工夫】スマートリモコンで高齢の親を見守る選択肢
「遠方の親がちゃんとエアコンを使っているか心配」「リモコンをなくした時に、遠隔で操作してあげたい」。そんな悩みには、IoT技術を活用した「スマートリモコン」が新たな解決策となります。
これは単なるリモコンの代わりではなく、離れて暮らす家族の「見守り」にも繋がる次世代の工夫です。スマートフォンを使って、実家の家電をいつでもどこでも操作できるようになります。
スマートリモコンとは？できることと導入に必要なもの
スマートリモコンとは、ご家庭のテレビやエアコンといった赤外線リモコンで操作する家電を、インターネットに接続する機器です。これにより、スマートフォンのアプリから家電を一括で操作できるようになります。
導入すると、主に以下のようなことが可能になります。今ある家電を買い替えることなく、手軽にスマートホーム化できるのが大きな魅力です。
- 外出先からの遠隔操作：離れた場所からでも、スマホで実家の家電を操作できます。
- 声による操作：スマートスピーカーと連携すれば、「アレクサ、テレビをつけて」のように声で操作が完了します。
- タイマーや条件による自動操作：「室温が28℃になったら冷房を入れる」といった自動化が可能です。
導入には、スマートリモコン本体の他に、ご家庭にWi-Fi（無線LAN）環境と、操作するためのスマートフォンが必要になります。
高齢者の見守りにおけるスマートリモコンの活用事例
スマートリモコンを高齢の親の家に設置することで、具体的にどのような利点があるのでしょうか。介護や見守りの現場で特に役立つ活用事例を3つご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
事例1：スマホで遠隔操作！実家のエアコンをオンオフ
最大の利点は、やはり遠隔操作です。例えば、真夏の日中に実家の室温が気になった時、自分のスマホから現在の室温を確認し、必要であれば冷房をONにしてあげることができます。
また、親がエアコンを消し忘れて外出してしまった際に、遠隔でOFFにすることも可能です。これにより、熱中症のリスクを減らしつつ、無駄な電気代も抑えられます。
事例2：声で家電を操作！「アレクサ、テレビつけて」
スマートスピーカーと連携させれば、もはやリモコンを探したり、ボタンを押したりする必要がなくなります。「テレビをつけて」と話しかけるだけで、家電がその通りに動きます。
手が不自由な方や、ベッドから起き上がるのが難しい方にとっても、声だけで身の回りの環境を操作できることは、生活の質を大きく向上させます。高齢者本人も楽しみながら使ってくれる可能性があります。
事例3：温度センサーで自動運転し熱中症を予防
多くのスマートリモコンには、温度や湿度を計測するセンサーが内蔵されています。この機能を活用すれば、「室温が28℃を超えたら、自動で冷房をONにする」といったルールを設定できます。
高齢になると、暑さや寒さを感じにくくなることがあります。本人が気づかないうちに室内環境が悪化し、熱中症などを引き起こすのを防ぐ、非常に有効な予防策となります。
【状況別】うちの親にはどれが最適？おすすめの工夫と製品の選び方
ここまで様々な工夫や製品を紹介してきましたが、「結局、うちの親にはどれが一番合っているの？」と迷われる方も多いでしょう。最適な方法は、親御さんの性格や心身の状態によって異なります。
ここでは、代表的な3つのケース別に、おすすめの対策の組み合わせをご紹介します。どの方法がご家族にとって最もストレスなく導入できるかを考える際の参考にしてください。
ケース1：物忘れは多いが、新しいものに抵抗がない親の場合
このタイプの方には、「紛失防止タグ」や「スマートリモコンとスマートスピーカー」の導入がおすすめです。物忘れを技術で補いつつ、声で操作できるといった新しい体験が、生活に良い刺激を与える可能性があります。「面白いね」と前向きに捉えてくれるなら、最も便利な方法と言えるでしょう。
ケース2：手先が不器用で、シンプルな操作を求める親の場合
新しい機器を覚えることに強い抵抗感があったり、手先が不器用だったりする方には、無理に便利な機器を勧めるのは逆効果です。この場合は、「使わないボタンを隠す物理的な工夫」や「ボタンの大きい簡単リモコンへの買い替え」が最適です。慣れ親しんだ操作方法を変えずに、いかにシンプルにするかを重視しましょう。
ケース3：認知症の症状があり、手厚い見守りが必要な親の場合
認知症の進行具合にもよりますが、遠隔での見守りや安全確保が重要になるこのケースでは、「物理的な工夫」と「スマートリモコン」の組み合わせが最も効果的です。手元のリモコンは誤操作しないように工夫しつつ、万が一に備えて家族がスマホから室温管理や操作をしてあげられる体制を整えておくと安心です。
まとめ：親に合った工夫で、家族みんなの快適な暮らしを実現しよう
高齢の親がリモコンを使えない問題は、決して「仕方ないこと」ではありません。ご紹介したように、解決するための方法は一つではありません。まずは100円ショップのグッズでできる簡単な工夫から試してみてはいかがでしょうか。
それでうまくいかなければ、簡単リモコンやスマートリモコンを検討するのも良いでしょう。大切なのは、親御さんの状態をよく観察し、本人に合った方法を選ぶことです。適切な工夫で、家族みんなの快適な暮らしを実現しましょう。
高齢者のリモコンに関するよくある質問
ここでは、高齢者のリモコン操作に関して、ご家族から多く寄せられる質問とその回答をまとめました。具体的な疑問を解消することで、より安心して対策を進められるはずです。ぜひ参考にしてください。
スマホをリモコン代わりにする方法は？
スマートフォンをリモコン代わりにするには、「スマートリモコン」という機器を導入するのが最も一般的です。スマートリモコンを介してご家庭のWi-Fiと家電を接続し、専用アプリでスマホから操作します。一部のAndroid端末には赤外線機能がありますが、現在は稀なためスマートリモコンの利用が現実的です。
リモコンをなくした場合、本体で操作できますか？
はい、多くの場合、エアコンやテレビの本体にも応急用の操作ボタンが付いています。電源のオン・オフやチャンネル変更など、基本的な操作が可能です。ただし、ボタンは小さく分かりにくい場所にあることがほとんどなので、あくまで緊急時のためのものと考えましょう。
リモコンの反応が悪い・効かないときの対処法は？
リモコンの反応が悪い場合、まずは電池を新しいものに交換してみてください。それでも改善しない場合は、以下の点を確認しましょう。
- リモコンの赤外線送信部や、家電本体の受信部が汚れていないか確認し、汚れていれば柔らかい布で拭く。
- リモコンと本体の間に障害物がないか確認する。
- スマートフォンのカメラでリモコンの送信部を写しながらボタンを押し、画面に光が映ればリモコンは正常です（映らない場合は故障の可能性があります）。
スマートリモコンのメリット・デメリットは何ですか？
スマートリモコンの主な利点と欠点は以下の通りです。遠隔操作や自動化といった便利な機能がある一方、導入にはWi-Fi環境が必須になるなど、いくつかの注意点があります。
メリット：
- スマホ一つで複数の家電を操作できる
- 外出先からでも遠隔操作ができる
- 声で家電を操作できる（スマートスピーカー連携時）
- 温度などに応じて自動で家電を動かせる
デメリット：
- 導入に初期設定が必要
- Wi-Fi（無線LAN）環境が必須
- すべての家電に対応しているわけではない
- インターネット回線の不調時には使えなくなる
高齢者が快適に過ごせるエアコンの設定温度は？
高齢者が快適に過ごせる室温は、夏の冷房時で28℃、冬の暖房時で20℃前後が目安です。ただし、体温調節機能が低下しているため、本人が「快適だ」と感じる温度に設定することが最も重要です。また、除湿機能で湿度を50～60%に保つと、熱中症予防に効果的です。
高齢者向けのエアコンに関する補助金はありますか？
2025年現在、国が直接行う高齢者個人向けのエアコン購入補助金はありません。しかし、お住まいの市区町村によっては、独自の支援制度を設けている場合があります。自治体のホームページで「高齢者 エアコン 補助金」と検索するか、担当窓口に問い合わせてみてください。
