遺言書を作成したものの、「どこに保管すれば一番安全なの?」と悩んでいませんか。せっかく書いた大切な想いも、保管場所を間違えると紛失や改ざんのリスクがあり、ご家族に届かないかもしれません。最悪の場合、相続トラブルの原因になることもあります。
この記事では、法務局から自宅まで、遺言書の保管場所として考えられる7つの選択肢を徹底比較します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、あなたに最適な保管場所を見つけることで、大切な想いを確実に未来へ繋げましょう。
遺言書の保管場所選びが重要な3つの理由

遺言書の保管場所を慎重に選ぶことは、あなたの最後の意思を確実に実現するために不可欠です。適切な場所を選ばないと、遺言書そのものが無意味になってしまう危険性すらあります。まずは、なぜ保管場所選びがそれほど重要なのか、その理由を3つの視点から解説します。
紛失や改ざんのリスクを回避するため
遺言書は、あなたの死後に効力を発揮する非常に重要な書類です。そのため、第三者による改ざんや、火災・盗難などによる紛失から守らなくてはなりません。自宅の引き出しなどに無造作に保管していると、これらのリスクに常に晒されることになります。
特に自筆証書遺言の場合、封がされていないと内容を書き換えられる危険性があります。公的な機関など、セキュリティが確保された場所に保管することで、あなたの意思が不正に歪められることを防ぎ、確実に保護することができます。
相続トラブルを未然に防ぐため
遺言書の保管場所が不明確だと、相続が始まった際に「遺言書はどこにあるのか」と家族が探し回ることになります。最悪の場合、遺言書の存在を知らなかったり、発見が大幅に遅れたりして、相続手続きが滞ってしまう可能性があります。
また、相続人の一人が先に見つけて自分に不利な内容だった場合、隠匿してしまうというケースも考えられます。誰もが公平にその存在を確認できる場所に保管することで、残された家族間の無用な争いを未然に防ぐことができます。
遺言の種類で最適な保管方法は異なる
遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があり、それぞれに適した保管方法が異なります。例えば、自筆証書遺言は自由度が高い反面、形式の不備や紛失のリスクがあるため、法務局の保管制度の利用が推奨されます。
一方で、公正証書遺言は作成と同時に原本が公証役場で保管されるため、安全性と確実性が非常に高いです。自分の遺言書がどの種類にあたるのかを理解し、その特性に合った最適な保管場所を選ぶことが、円滑な相続への第一歩となります。
遺言書の保管場所おすすめ7選を徹底比較

ここでは、遺言書の保管場所として考えられる7つの選択肢を、メリット・デメリットと合わせてランキング形式でご紹介します。それぞれの特徴を比較し、ご自身の状況や遺言書の種類に最も合った方法を見つけるための参考にしてください。
| 保管場所 | 安全性 | 費用 | 確実性 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ①公証役場 | ◎ | △ | ◎ | 公正証書遺言の原本を保管。信頼性が最も高い。 |
| ②法務局 | ◎ | 〇 | ◎ | 自筆証書遺言を保管。検認不要になるメリット大。 |
| ③専門家 | 〇 | △ | 〇 | 弁護士等に依頼。管理から執行まで相談可能。 |
| ④信託銀行 | ◎ | × | ◎ | 遺言信託サービス。費用は高額だが包括的に任せられる。 |
| ⑤自宅 | × | ◎ | × | 費用はかからないが、紛失・改ざんリスクが高い。 |
| ⑥貸金庫 | △ | △ | × | 死後、開ける手続きが煩雑で発見が遅れる可能性。 |
| ⑦第三者 | △ | 〇 | △ | 信頼できる人に預けるが、管理責任や紛失リスクあり。 |
第1位:公証役場での公正証書遺言保管
最も安全で確実な方法が、公正証書遺言を作成し、その原本を公証役場で保管してもらう方法です。公証人が内容の有効性を確認し、証人2名が立ち会うため、遺言の信頼性が非常に高く、後のトラブルを限りなく防ぐことができます。
原本は厳重に管理された公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配は一切ありません。費用はかかりますが、あなたの最後の意思を最も確実に実現したいと考えるなら、この方法が最善の選択肢と言えるでしょう。
第2位:法務局の自筆証書遺言保管制度
自筆証書遺言を作成した場合におすすめなのが、2020年から始まった「法務局遺言保管制度」です。この制度を利用すると、作成した遺言書を法務局が安全に保管してくれます。最大のメリットは、家庭裁判所での「検認」という手続きが不要になる点です。
検認が不要になることで、相続人の負担が大幅に軽減され、手続きがスムーズに進みます。遺言書保管申請は本人が行う必要がありますが、比較的安価な手数料で公的な保護を受けられるため、非常に利用価値の高い制度です。
第3位:弁護士や司法書士など専門家への依頼
遺言書の作成を依頼した弁護士や司法書士などの専門家に、そのまま保管を依頼する方法もあります。専門家は法律のプロであるため、遺言内容の法的な有効性を担保しつつ、厳重に保管してくれるという安心感があります。
また、遺言執行者に指定しておくことで、あなたの死後、相続手続き全般をスムーズに進めてもらうことも可能です。ただし、保管料や事務所の継続性などを事前に確認し、信頼できる士業を選ぶことが重要になります。
第4位:信託銀行の遺言信託サービス
信託銀行が提供する「遺言信託」は、遺言書の作成相談から保管、そして死後の遺産整理や執行までをトータルで任せられるサービスです。一連の手続きをすべて一つの窓口で完結できるため、相続人に手間をかけさせたくない場合に適しています。
安全性や確実性は非常に高いですが、その分、手数料や管理報酬などの費用が高額になる傾向があります。資産額が大きい方や、相続手続きが複雑になることが予想される方にとって、有力な選択肢となるでしょう。
第5位:自宅で保管する場合の注意点
費用がかからないため手軽に思える自宅保管ですが、最もリスクの高い方法です。火災や盗難による紛失、相続人による隠匿や改ざんの危険性が常に伴います。原則として、遺言書の自宅保管は避けるべきだと考えてください。
やむを得ず自宅で保管する場合は、耐火金庫に入れるなどの対策が必要です。そして何より、信頼できる複数の相続人に遺言書の存在と保管場所を明確に伝えておくことが、トラブルを避けるための最低条件となります。
第6位:金融機関の貸金庫は避けるべき理由
金融機関の貸金庫は頑丈で安全に思えますが、遺言書の保管場所としては推奨できません。なぜなら、契約者が亡くなった後、相続人全員の同意と戸籍謄本などの書類がなければ、金融機関は貸金庫を開けることを許可しない場合が多いからです。
遺言書に「誰が相続人か」が書かれているのに、その遺言書を見るために相続人全員の同意が必要という矛盾が生じます。結果的に遺言書の発見が大幅に遅れ、相続手続きを停滞させる原因になるため、貸金庫の利用は避けましょう。
第7位:信頼できる第三者へ預ける方法
遺言執行者に指定した人や、特に信頼している親族・友人に遺言書を預けるという方法もあります。この場合、費用がかからず、いざという時にスムーズに遺言内容を開示してもらえる可能性があります。
しかし、預かった人が紛失してしまったり、亡くなってしまったりするリスクも考慮しなければなりません。一人の人だけに託すのではなく、複数の人に遺言書の存在と預け先を伝えておくなど、リスク分散の工夫が不可欠です。
自分に合った保管場所を見つける3つの視点

ここまで7つの保管場所を紹介しましたが、「結局どれを選べばいいの?」と迷われる方もいるでしょう。ここでは、あなたに最適な保管場所を絞り込むための3つの視点をご紹介します。ご自身の優先順位に合わせて検討してみてください。
安全性と確実性を最優先する場合の選び方
「何よりも確実に、安全に想いを届けたい」と考えるなら、公的な機関を利用するのが最善です。具体的には、公正証書遺言を作成して「公証役場」で保管してもらうか、自筆証書遺言を「法務局」に預けるかの二択となります。
これらの方法は、国が関与するため紛失や改ざんのリスクが限りなくゼロに近く、遺言書の存在証明も容易です。多少の費用や手間がかかったとしても、残された家族の安心を最優先するならば、公的機関遺言保管が最も優れた選択です。
費用をできるだけ抑えたい場合の選択肢
遺言書の作成や保管にかかる費用をできるだけ抑えたい、というニーズもあるでしょう。その場合の第一候補は、法務局の自筆証書遺言保管制度です。申請手数料は数千円程度で、公的な安全性を確保できるコストパフォーマンスの高い方法です。
最も費用がかからないのは自宅保管ですが、前述の通り紛失やトラブルのリスクが非常に高いため推奨できません。費用と安全性のバランスを考えた場合、法務局の制度が現実的な選択肢として浮かび上がってきます。
遺言書の存在を家族へ確実に伝える方法
どんなに安全な場所に保管しても、その存在を家族が知らなければ意味がありません。「遺言書はどこにあるか」、この情報を確実に伝えることが重要です。法務局や公証役場に預けた場合は、保管証や遺言書の謄本を信頼できる家族に渡しておきましょう。
また、エンディングノートを作成し、そこに遺言書の種類と保管場所を明記しておくのも有効な手段です。複数の方法で情報を残し、相続人の誰もが遺言書のありかを知ることができる状態にしておくことが、あなたの最後の責任です。
まとめ:最適な保管場所で想いを確実に遺す

遺言書の保管場所選びは、あなたの最後のメッセージを家族へ届けるための、いわば「最後の仕上げ」です。この記事で紹介した内容を参考に、ご自身の状況や想いに最も合った方法を選び、安心してその日を迎えられる準備を整えましょう。
後悔しない遺言書保管場所の最終チェック
最終的な判断を下す前に、以下の点をチェックリストとして確認してみましょう。一つでも不安な点があれば、もう一度立ち止まって考えることが大切です。あなたの想いを込めた遺言書が、その役割を全うできるかどうかは、この最終チェックにかかっています。
- 紛失や改ざんのリスクは十分に低いですか?
- あなたの死後、家族がすぐに見つけられますか?
- 相続手続きがスムーズに進む方法ですか?
- 保管していることを、信頼できる人に伝えていますか?
遺言書の保管場所に関するよくある質問

最後に、遺言書の保管場所に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。ご自身の状況と照らし合わせながら、不安や疑問の解消にお役立てください。正しい知識を持つことが、後悔のない選択へと繋がります。
自筆証書遺言はどこに保管するのが最適ですか?
自筆証書遺言の場合、最もおすすめなのは「法務局の遺言書保管制度」を利用することです。公的な機関が安全に保管してくれるため、紛失や改ざんのリスクがありません。また、相続開始後の家庭裁判所による検認手続きが不要になるため、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
費用も比較的安価で、安全性と手続きの簡便さを両立できる最適な方法と言えます。まずは最寄りの法務局(遺言書保管所)に相談してみることをお勧めします。
法務局の遺言書保管制度の費用はいくらですか?
法務局の遺言書保管制度を利用する際の基本的な費用は、遺言書1通につき3,900円の申請手数料です。これは保管を申請する際に支払うもので、一度預ければその後の保管料はかかりません。非常にリーズナブルな価格設定と言えるでしょう。
その他、遺言書の閲覧や証明書の交付を申請する際には別途手数料が必要になります。公的な安心感をこの費用で得られるのは、大きなメリットです。
法務局に遺言書を預けるデメリットはありますか?
法務局の保管制度には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も存在します。まず、申請手続きは代理人が行えず、必ず遺言者本人が法務局に出向く必要があります。また、法務局はあくまで形式的なチェックのみで、遺言内容の法的な有効性までを保証するものではありません。
内容に不安がある場合は、事前に弁護士などの専門家に相談しておくことが賢明です。これらの点を理解した上で利用すれば、非常に有効な制度です。
遺言書の相談は司法書士と行政書士どちらが良い?
遺言書の相談先として司法書士と行政書士が挙げられますが、それぞれ得意分野が異なります。行政書士は、遺言書の文案作成や作成支援といった書類作成業務が中心です。一方で司法書士は、不動産の名義変更(相続登記)など、相続発生後の手続きまで見据えた相談が可能です。
もし相続財産に不動産が含まれるのであれば、司法書士に相談する方がワンストップで話を進めやすいでしょう。ご自身の相談したい内容に合わせて専門家を選ぶことが大切です。
遺言書に有効期限はあるのでしょうか?
作成した遺言書に、法律上の有効期限というものはありません。一度作成すれば、遺言者が亡くなるまで、あるいは新しい遺言書を作成するまで効力は継続します。そのため、何十年も前に書いた遺言書であっても法的には有効です。
ただし、家族構成や財産状況は時間とともに変化します。定期的に内容を見直し、現状にそぐわない部分があれば新しい遺言書に書き換えることをお勧めします。その場合、日付が最も新しい遺言書が有効とされます。